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第二章 当たり前の二人
第30話 草壁先輩の恋愛指南
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昨日のバイトの報告も兼ねて、俺は新葉の部屋に来ている。というのも、今日は久しぶりに七石先輩に会える日でもあるからだ。
幼馴染の新葉は普段はあまり役に立たないことが多いが、俺が嬉しくなりそうなことを事前に教えてくれたりするので、こういう時はありがたい存在だったりする。
「お久しぶりです、七先輩!」
「うん、久しぶり」
「あのー実は七先輩に聞きたいことがありましてー……」
「何かな?」
直接的には関係が無いことかもしれないが、全く知らないわけでもないと思われるので、俺はあの聖菜について聞いてみることにした。
「――ということなんですけど、七先輩は何か知ってます?」
「十日市聖菜でしょ? もちろん知ってるよ」
まぁ知らないわけがないよな。自分関係のイベントバイトに関わってるわけだし。
「えっ、マジですか?」
「だってあの子、養成所が一緒だし」
「……養成所?」
「うん。タレントのね」
それは初耳だ。院瀬見の推し女ということしか知らなかっただけに、まさかのタレント関係だとは。
「え、でも聖菜は院瀬見の――」
「推し女って強制じゃないし、本人の意思を尊重する活動だから問題無いんじゃない?」
そういえばそう聞いていた。推し女はあくまで自主的な活動であって、学校がどうとかいうことでも無く、いつも一緒に行動するでもない存在だとも。
そうなると、放課後とかにタレント養成所に通っていたとしても問題は無いことになる。
「そうでした」
「でしょ? でもあの子、あんまり来てないし本気じゃないと思うなー」
「え? じゃあ何で……」
「養成所にいるとさ、所属タレント関連の仕事に参加出来るんだよね。だからそういうので利用してるんじゃない?」
そういう手もあるのか。
「関連に参加といってもイベントバイトだし、本人に会うでもないですよね?」
「そこは本人的には割り切った活動ってことじゃないのかな」
そうなるといくら聖菜が俺に好意を抱いていたとしても、さすがに俺が七石先輩関係のバイトに来るとかいうことまでは知らなかったはず。
事前に調べて知っていたらそれはそれで恐怖モノだが。
「なになに? さっきから何をこそこそと密談してるのかな?」
「密談に見えるんなら眼科に行って来ることを勧めるぞ」
「何をー!!」
さっきまで無関心を装って美脚写真集に夢中だったくせに、何で話の邪魔をしてくるんだこいつは。
「新葉、もう行くね」
「仕事?」
「そう。南くんと仲良くね」
「任されたー!」
いいタイミングだったのか、新葉と交代するかのように七石先輩はあっさりと部屋からいなくなった。忙しい人だからその辺は無理強い出来ないけど。
「…………あん?」
七石先輩を見送った後、振り向くと俺の目の前には何故か『おいで』ポーズを取る新葉がいた。
「あたしのたわわなおっぱいに向かって飛び込んでこーい! そして七ちゃんとしていた楽しそうな話の続きをカモーン!」
しかも何で新葉の胸に飛び込まなきゃいけないんだ?
「俺の話は終わったから何も話すことは無いぞ」
「何だとー! そういう態度に出るんだ? いいんだね?」
「何が? いいも何も無いだろ」
何かを企んでいるかのような顔を見せているが、新葉のことだからどうせ大したことでもない――そう思っていた俺だったが。
「お待たせー! 入って来てもいいよー!」
「……ん?」
七石先輩がいなくなって少し経つが、誰か遊びに来る予定でもあったのか?
「お、お邪魔します」
関係者以外滅多に入って来ることもない新葉の部屋に、まさかの訪問者だった。
「何で!?」
「こんにちは、草壁先輩。それと……翔輝さん」
「うんうん。こんにちはだよー」
「はぁ!?」
俺の驚きに対する反応は返ってこないが、院瀬見は俺がこの部屋にいても全く動じていない。
「こらこら、翔輝。さっきからうるさいよ? つららちゃんが困ってるじゃんか」
こいつめ。院瀬見がいる前だとさらに態度をデカくする奴だな。
「いいえ、わたしは全然」
「ほほぅ? つまりそういうことを聞きに来たのかな?」
「そ、そうですね」
さっきから俺だけ分からない謎会話を始めているが、新葉に聞くことなんてあるのか?
「翔輝に告ぐ! 今からあたしはつららちゃんに伝授する話がある! だからこの部屋から出ておいき!」
「は? 何の寝言だそりゃ」
「いえ、わたしはどっちでも平気です」
「おや? そうなの? じゃあいいか。翔輝は隅っこで大人しくしているように!」
何て態度だこいつは。一体何の話を伝授するつもりだお前は。
――で、俺を無視して勝手に始まった話がこれなわけか。
「そうそうそう。息がかかる距離まで近付いて囁けば、男はみんなイチコロなのだー!」
「え? こ、こんなに近づくんですか?」
「ただーし! 本当に信用してる男子じゃないと近づいちゃ駄目だよ。全然興味も関心も無い男子に近づいたら、それだけで恋人扱いされちゃうんだからね?」
「なるほど……勉強になります」
俺の調べでは、新葉に彼氏がいた時代は無い。そんな彼氏無し恋愛経験皆無な奴が、どうして院瀬見に対して偉そうに恋愛指南を出来るのか。
「よーし、それじゃあつららちゃん」
「はい」
「隅っこでいじけてる男子が暇そうだから、今から実践だよー!」
「はい……――えっ?」
新葉の俺を見る目つきが怪しいうえ、俺を見る院瀬見の様子から戸惑いが見て取れる。
まさかと思うが院瀬見にくだらないことをやらせるつもりじゃないよな?
「や、やってみますね」
何をやるつもりだ?
幼馴染の新葉は普段はあまり役に立たないことが多いが、俺が嬉しくなりそうなことを事前に教えてくれたりするので、こういう時はありがたい存在だったりする。
「お久しぶりです、七先輩!」
「うん、久しぶり」
「あのー実は七先輩に聞きたいことがありましてー……」
「何かな?」
直接的には関係が無いことかもしれないが、全く知らないわけでもないと思われるので、俺はあの聖菜について聞いてみることにした。
「――ということなんですけど、七先輩は何か知ってます?」
「十日市聖菜でしょ? もちろん知ってるよ」
まぁ知らないわけがないよな。自分関係のイベントバイトに関わってるわけだし。
「えっ、マジですか?」
「だってあの子、養成所が一緒だし」
「……養成所?」
「うん。タレントのね」
それは初耳だ。院瀬見の推し女ということしか知らなかっただけに、まさかのタレント関係だとは。
「え、でも聖菜は院瀬見の――」
「推し女って強制じゃないし、本人の意思を尊重する活動だから問題無いんじゃない?」
そういえばそう聞いていた。推し女はあくまで自主的な活動であって、学校がどうとかいうことでも無く、いつも一緒に行動するでもない存在だとも。
そうなると、放課後とかにタレント養成所に通っていたとしても問題は無いことになる。
「そうでした」
「でしょ? でもあの子、あんまり来てないし本気じゃないと思うなー」
「え? じゃあ何で……」
「養成所にいるとさ、所属タレント関連の仕事に参加出来るんだよね。だからそういうので利用してるんじゃない?」
そういう手もあるのか。
「関連に参加といってもイベントバイトだし、本人に会うでもないですよね?」
「そこは本人的には割り切った活動ってことじゃないのかな」
そうなるといくら聖菜が俺に好意を抱いていたとしても、さすがに俺が七石先輩関係のバイトに来るとかいうことまでは知らなかったはず。
事前に調べて知っていたらそれはそれで恐怖モノだが。
「なになに? さっきから何をこそこそと密談してるのかな?」
「密談に見えるんなら眼科に行って来ることを勧めるぞ」
「何をー!!」
さっきまで無関心を装って美脚写真集に夢中だったくせに、何で話の邪魔をしてくるんだこいつは。
「新葉、もう行くね」
「仕事?」
「そう。南くんと仲良くね」
「任されたー!」
いいタイミングだったのか、新葉と交代するかのように七石先輩はあっさりと部屋からいなくなった。忙しい人だからその辺は無理強い出来ないけど。
「…………あん?」
七石先輩を見送った後、振り向くと俺の目の前には何故か『おいで』ポーズを取る新葉がいた。
「あたしのたわわなおっぱいに向かって飛び込んでこーい! そして七ちゃんとしていた楽しそうな話の続きをカモーン!」
しかも何で新葉の胸に飛び込まなきゃいけないんだ?
「俺の話は終わったから何も話すことは無いぞ」
「何だとー! そういう態度に出るんだ? いいんだね?」
「何が? いいも何も無いだろ」
何かを企んでいるかのような顔を見せているが、新葉のことだからどうせ大したことでもない――そう思っていた俺だったが。
「お待たせー! 入って来てもいいよー!」
「……ん?」
七石先輩がいなくなって少し経つが、誰か遊びに来る予定でもあったのか?
「お、お邪魔します」
関係者以外滅多に入って来ることもない新葉の部屋に、まさかの訪問者だった。
「何で!?」
「こんにちは、草壁先輩。それと……翔輝さん」
「うんうん。こんにちはだよー」
「はぁ!?」
俺の驚きに対する反応は返ってこないが、院瀬見は俺がこの部屋にいても全く動じていない。
「こらこら、翔輝。さっきからうるさいよ? つららちゃんが困ってるじゃんか」
こいつめ。院瀬見がいる前だとさらに態度をデカくする奴だな。
「いいえ、わたしは全然」
「ほほぅ? つまりそういうことを聞きに来たのかな?」
「そ、そうですね」
さっきから俺だけ分からない謎会話を始めているが、新葉に聞くことなんてあるのか?
「翔輝に告ぐ! 今からあたしはつららちゃんに伝授する話がある! だからこの部屋から出ておいき!」
「は? 何の寝言だそりゃ」
「いえ、わたしはどっちでも平気です」
「おや? そうなの? じゃあいいか。翔輝は隅っこで大人しくしているように!」
何て態度だこいつは。一体何の話を伝授するつもりだお前は。
――で、俺を無視して勝手に始まった話がこれなわけか。
「そうそうそう。息がかかる距離まで近付いて囁けば、男はみんなイチコロなのだー!」
「え? こ、こんなに近づくんですか?」
「ただーし! 本当に信用してる男子じゃないと近づいちゃ駄目だよ。全然興味も関心も無い男子に近づいたら、それだけで恋人扱いされちゃうんだからね?」
「なるほど……勉強になります」
俺の調べでは、新葉に彼氏がいた時代は無い。そんな彼氏無し恋愛経験皆無な奴が、どうして院瀬見に対して偉そうに恋愛指南を出来るのか。
「よーし、それじゃあつららちゃん」
「はい」
「隅っこでいじけてる男子が暇そうだから、今から実践だよー!」
「はい……――えっ?」
新葉の俺を見る目つきが怪しいうえ、俺を見る院瀬見の様子から戸惑いが見て取れる。
まさかと思うが院瀬見にくだらないことをやらせるつもりじゃないよな?
「や、やってみますね」
何をやるつもりだ?
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