18 / 78
第一章 塩対応な二人
第18話 院瀬見つららは満たされたい
しおりを挟む
「全国美少女選抜優勝者は――院瀬見つららさんです!」
「皆さまのおかげで選ばれました! 本当に嬉しいです。ありがとうございます!」
《万感の拍手、歓声、スカウティングのお誘いが絶え間なく続く――才色兼備の最強美少女、院瀬見つららさんの今後の活躍にご期待を!》
「うん、このプロモーション映像ならいいと思う。これなら古根の男子なら誰でも一目惚れするし、みんな院瀬見つららをちやほやする」
聖菜が満足気に頷いている。でも余計な一言が多すぎ。この子ってどうしてわたしに意地悪いのかな。
「別にちやほやされたいから流すわけじゃないですよ。サプライズで登場するにしても、舞台の上で姿を見せるだけだと間が持たないだろうからそうするだけで……」
「つらら、怒った?」
「別に怒ってないです」
十日市聖菜は中学が一緒の子。クラスは違ったけど、あの頃は聖菜とわたしで人気を二分してるって友達から聞かされたことがある。でもそんな彼女がわたしの推し女をやるなんて想像していなかった。
聖菜は出会った時から大人しくて愚痴も言わない子だったのに、最近になって文句のようなことを言うようになった気がする。
「院瀬見さーん! プロモの出来栄えはどーでしたか?」
聖菜はこんな感じなのに対して、選抜で落ちて落ち込んでいたはずの二見めぐや、同じクラスになっただけで推し女になってくれた九賀みずきの二人は、何も変わらずにわたしを応援してくれている。
「いいと思います。あれならわたしを知らない男子がいても、気づいてくれるかなって思います」
「えー? いませんって! 知らなかったのはあの南っていう失礼男だけですよー。院瀬見さんを汚すし、何考えてるのか分かんない感じ。みずきもそう思いませーん?」
「フツメン会長は特殊じゃん? 副会長さんはいい人だし、優しいのに……何であんな個性的な奴が生徒会長なのか意味不明すぎ! 院瀬見さんにあんな態度だしムカつくー!」
プロモ映像を流した後は、きっと今みたいなゆったりとした時間なんて取れなくなる。古根の男子と同じ授業を受けるようになったら、生徒会活動なんて時間は取れなくなるんじゃないかな。
でも、サプライズがあろうと無かろうとあの南翔輝はそれでもわたしにひどい態度をしてくるはず。周りの男子が強く言えない権力があるし、言葉も強い。わたしよりは力は無いけど。
だからサプライズを終えて、正式に共学化される前にあいつともっと――。
「南は可愛い男子。異論は認めない」
そんなことを思っていたら、聖菜が急に変なことを言い出した。この子、まさか、ね?
そもそもほとんど話したことなんて無かっただろうし、南も多分覚えてない。
それなのに、
「……聖菜はどうしてそう思うんですか?」
「あの七石麻と草壁新葉が南に甘えてるから。性格は一見きつそうに見える。でも、多分態度を変えたらきっと違う」
――あいつのことをよく見てるんだ。
確かに、あの他を寄せ付けない厳しい草壁先輩が可愛いって言うくらいだから性格はそこまで悪くないって思えるけど、大して話もしてない聖菜が見抜けるものなのだろうか。
少ししか関わってないけど、あの生徒会長のことはまだよく分からない。
「聖菜さんってー、もしかしてああいうのが好みな感じー?」
「……さぁ」
わたしたちの前でははっきり答えないんだ?
それを聞いてもって話だけど、何だかモヤモヤする。
「フツメン会長とかあり得なくない? だって普通じゃん? 副会長さんの方がどっちかっていうとー……」
九賀の好みは副会長ってことで間違いないかな。そういうことなら応援してあげないと。
それにしても聖菜が南翔輝を――ね。
わたしとしてはどっちかというと年上の先輩たちが気になる。可愛い後輩とかってあの時紹介してたけど、どういう関係なのかは教えてもくれなかったし。
もちろんどうでもいいことだけど、もしかしたらどっちかと付き合っているかもしれないし、実は血が繋がっているかもしれないし真相は分からないままになりそう。
もし草壁先輩の方だとしたら、いくら優勝したからって勝ち目は無い気がする。わたしよりもスタイルがいいし、胸も――
「――んー……」
「院瀬見さん、どうしましたー?」
「何か、何かね……上手く言えないんですけどー……」
何かが足りてない。言葉に出来ない何かがあるような無いような。
◇◇◇◇◇◇◇
「えっ? 抱きしめてる……? しかもよりにもよって草壁先輩!?」
何で女子寮に来た時にこんな場面に遭遇するの?
「皆さまのおかげで選ばれました! 本当に嬉しいです。ありがとうございます!」
《万感の拍手、歓声、スカウティングのお誘いが絶え間なく続く――才色兼備の最強美少女、院瀬見つららさんの今後の活躍にご期待を!》
「うん、このプロモーション映像ならいいと思う。これなら古根の男子なら誰でも一目惚れするし、みんな院瀬見つららをちやほやする」
聖菜が満足気に頷いている。でも余計な一言が多すぎ。この子ってどうしてわたしに意地悪いのかな。
「別にちやほやされたいから流すわけじゃないですよ。サプライズで登場するにしても、舞台の上で姿を見せるだけだと間が持たないだろうからそうするだけで……」
「つらら、怒った?」
「別に怒ってないです」
十日市聖菜は中学が一緒の子。クラスは違ったけど、あの頃は聖菜とわたしで人気を二分してるって友達から聞かされたことがある。でもそんな彼女がわたしの推し女をやるなんて想像していなかった。
聖菜は出会った時から大人しくて愚痴も言わない子だったのに、最近になって文句のようなことを言うようになった気がする。
「院瀬見さーん! プロモの出来栄えはどーでしたか?」
聖菜はこんな感じなのに対して、選抜で落ちて落ち込んでいたはずの二見めぐや、同じクラスになっただけで推し女になってくれた九賀みずきの二人は、何も変わらずにわたしを応援してくれている。
「いいと思います。あれならわたしを知らない男子がいても、気づいてくれるかなって思います」
「えー? いませんって! 知らなかったのはあの南っていう失礼男だけですよー。院瀬見さんを汚すし、何考えてるのか分かんない感じ。みずきもそう思いませーん?」
「フツメン会長は特殊じゃん? 副会長さんはいい人だし、優しいのに……何であんな個性的な奴が生徒会長なのか意味不明すぎ! 院瀬見さんにあんな態度だしムカつくー!」
プロモ映像を流した後は、きっと今みたいなゆったりとした時間なんて取れなくなる。古根の男子と同じ授業を受けるようになったら、生徒会活動なんて時間は取れなくなるんじゃないかな。
でも、サプライズがあろうと無かろうとあの南翔輝はそれでもわたしにひどい態度をしてくるはず。周りの男子が強く言えない権力があるし、言葉も強い。わたしよりは力は無いけど。
だからサプライズを終えて、正式に共学化される前にあいつともっと――。
「南は可愛い男子。異論は認めない」
そんなことを思っていたら、聖菜が急に変なことを言い出した。この子、まさか、ね?
そもそもほとんど話したことなんて無かっただろうし、南も多分覚えてない。
それなのに、
「……聖菜はどうしてそう思うんですか?」
「あの七石麻と草壁新葉が南に甘えてるから。性格は一見きつそうに見える。でも、多分態度を変えたらきっと違う」
――あいつのことをよく見てるんだ。
確かに、あの他を寄せ付けない厳しい草壁先輩が可愛いって言うくらいだから性格はそこまで悪くないって思えるけど、大して話もしてない聖菜が見抜けるものなのだろうか。
少ししか関わってないけど、あの生徒会長のことはまだよく分からない。
「聖菜さんってー、もしかしてああいうのが好みな感じー?」
「……さぁ」
わたしたちの前でははっきり答えないんだ?
それを聞いてもって話だけど、何だかモヤモヤする。
「フツメン会長とかあり得なくない? だって普通じゃん? 副会長さんの方がどっちかっていうとー……」
九賀の好みは副会長ってことで間違いないかな。そういうことなら応援してあげないと。
それにしても聖菜が南翔輝を――ね。
わたしとしてはどっちかというと年上の先輩たちが気になる。可愛い後輩とかってあの時紹介してたけど、どういう関係なのかは教えてもくれなかったし。
もちろんどうでもいいことだけど、もしかしたらどっちかと付き合っているかもしれないし、実は血が繋がっているかもしれないし真相は分からないままになりそう。
もし草壁先輩の方だとしたら、いくら優勝したからって勝ち目は無い気がする。わたしよりもスタイルがいいし、胸も――
「――んー……」
「院瀬見さん、どうしましたー?」
「何か、何かね……上手く言えないんですけどー……」
何かが足りてない。言葉に出来ない何かがあるような無いような。
◇◇◇◇◇◇◇
「えっ? 抱きしめてる……? しかもよりにもよって草壁先輩!?」
何で女子寮に来た時にこんな場面に遭遇するの?
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる