43 / 50
第二章 クラン
第43話 力強い味方とともに
しおりを挟む俺とウルシュラ、そしてキーリジアの戦士たちでソニド洞門を再び開通させた。
すると、ラトアーニ大陸側で待っていたナビナたちが嬉しそうに駆け寄る。
「ルカス!」
「戻ったよ、ナビナ」
「ナビナ~ただいまです!」
俺離れをしたと思っていたが、ナビナが嬉しそうに抱きついて来た。
ウルシュラも嬉しそうにしている。
「ふふっ。マスターの表情を見るに、どうやら問題は解決したみたいですわね」
「ますたぁ~おかえりなさいみゃ~!」
イーシャとミルも嬉しそうだ。
騎士バシレオスも頭を深く下げている。
そして、
「すまない、ルカス・アルムグレーン。この恩はいずれ必ず。時機が到来したら、ルナファシアスまで来てくれ!」
と、お礼を述べると、バシレオスは俺たちを見回して頭を下げた。
そのままソニド洞門に入り、駆け足で先を急いで行く。
アルシノエたちは知らないのか、黙って通したようだ。
「よほど困っていたんですね~」
「そうみたいだね」
騎士バシレオスの強さははっきりしてない。
だがキーリジア周辺は、しばらく魔物がうろつく心配はないし大丈夫だろう。
「……ところで、ルカス。あの人たち、誰?」
「あぁ、うん。実はね――」
キーリジアを襲う魔物に対し、俺は冴眼の力を解放。
アルシノエ率いる戦士たちが驚愕していたが、一瞬の閃きと同時に目に見える魔物を全て殲滅させた。
一匹残らず見えなくなったことで、アルシノエたちの俺を見る目が一変。
戦士ギルドの男たちも羨望の眼差しを向けるようになり……。
俺たちのクランについて来た――というのが今までの流れ。
「では、戦士たち数人が大陸違いのレグリースに所属するのです?」
「そういうことになるかな。イーシャとファルハンたちにとっても、刺激になるだろうしね」
「わたくしはともかく、あのバカにはいいかもしれませんわね」
ネコたちがどうしたいかによるけど、レグリースもかなり賑やかになりそうだ。
「ふ~ん……その大剣女がウルシュラの姉?」
「何だい、口の利き方がなってないね。そういうあんたはエルフ……いや、少し違うか? まぁ、ウルシュラが世話をしたって聞くし、あたしも是非世話してもらおうか!」
戦士の男たちはいいとして、ギルドマスターがギルドを離れていいのだろうか。
しかもギルドに残ったのが俺とウルシュラに絡んで来た男たちなんて。
「ええ? クランについて来る? で、でも、アルシノエはギルドマスターなんじゃ?」
魔物殲滅直後、アルシノエはクランに入りたいと言い出した。それ自体断ることはなかったが、まさかラトアーニ大陸にまでついて来ると言い出すなんて予想出来るはずも無く。
「あたしはあんたの強さに惚れ込んじまった! 別に永遠について行くわけじゃないし、少しくらいここを離れても滅びはしないさ! なぁ、ウルシュラ」
「そうなんですよ、ルカスさん。アルシノエ姉さまは昔から放浪癖がありまして、ギルドの中に居続けることが無くてですね……」
――ということがあり、俺について来てしまった。
アルシノエの他について来たのは、素行のいい戦士たちが数人ほど。
彼らの場合はクランが目的というより、観光目的らしい。
戦士たちはアルシノエ以外の女性を見るせいか、かなり大人しく、イーシャとミルもそれほど警戒していないようだ。
ともかく、このままロッホに戻るにしても夜になりそうだが……。
そう思っていると、ナビナが近くに寄って来る。
「ルカス。冴眼転移の力は使った?」
「まだ特には。ここに戻って来る前に、力を解放したからね」
「魔物?」
「うん。殲滅の力をね……」
「見せて」
そう言うとナビナが俺の目を覗き込む。
じっくりと観察するように見つめるも、小刻みに頷くだけで何も言わない。
問題は無かった――ということだろうか?
「え、えーと……?」
「……大丈夫。呪いとは別の力を解放しただけだから」
「そ、そうなんだ?」
「だから、次は転移の力を解放して」
イーシャがいるから呪符でも良さそうだけど。
「呪符じゃ駄目なの?」
「駄目。呪符使いの呪符は消耗品。甘えては駄目!」
なるほど、呪符も限りがあるのか。それなら無理にお願いは出来ないな。
そうなるとやっぱり冴眼を使うしかないのか。
「ルカスさ~ん! そろそろレグリースに戻りませんか~?」
「ミル、お腹減ったみゃ。ミューたちもきっと同じくらい空かせているみゃ」
やはりそうだよな。
このまま旧都にとどまっても意味は無いし、戻るしかないか。
「あん? 何だい? このまま野宿しながら向かうんじゃないのかい?」
「アルシノエ姉さま。それはさすがに無理ですよ~」
「魔物がいてもルカスがいれば平気だろ?」
ここから徒歩で戻るのはさすがに遠すぎる。
しかし一度も試したことが無いのに、成功するだろうか? それもそこそこの人数を連れて。
「やってみれば慣れる。だから使う。使ってみればいい」
「そ、それなら、うん……」
どうなるか分からないけど。
ナビナの言葉に従って、俺は冴眼による"転移"を解放することにした。
0
お気に入りに追加
858
あなたにおすすめの小説
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる