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第23話 気づかされて12歳、そして覚醒?
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エドナはまたしても妙な世界へ導かれ、そして次に気づいた時にはようやく人の優しさに触れて目を覚ますことに。
「起きて、起きて……う~お姉ちゃんが起きないよ?」
誰かがエドナの顔をペチペチと触っている。顔から熱はそれほど帯びていなく、異常の無い体温にまで戻っているようだ。
「もう一度でいいから、今度は体全体を揺らしてみて」
「あい!」
「お姉ちゃん、起きて、起きて……」
気のせいかと思って体を起こさずに様子を見ていたエドナだったが、どうやら今度はちゃんとした人間の温もり。そう確信したエドナはゆっくりと目を開ける。
「……起きたよ。だからもう、大丈夫」
「あっ!! お姉ちゃんが起きたよーー!! ママー、ママァ!」
小さな男の子はエドナが起きたことを知って、逃げるように母親の元へ走っていく。
「う~ん……今度はどこに来たの?」
周りを見回しても、普通の民家といった内装に見えていてとてもどこか見知らぬ世界にたどり着いたようには見えない。
そんな状態で横になったまましばらく呆けていると、奥の方からバタバタと足音をさせながらエドナの寝ているところへ近づいてくるのが聞こえる。
エドナはそのまま黙って待っていると。
「起きましたね」
「は、はい」
「ご気分はいかがですか?」
「よくも悪くも……かなぁと」
「ふふっ。あなた、トレニアの森で倒れていたのよ。あんな危険なところで一人だけで倒れていたものだからびっくりしちゃってどうしようかと思っていたの」
さっきエドナを起こし続けていた男の子が母親である女性の陰に隠れて、エドナのことをじっと見つめてきている。
その視線はまるで物珍しい動物を見るような感じで。
「そ、その、ありがとう」
「いいのよ」
「わたし、エドナ・ランバートです」
「エドナさんね。私はリル・アドーラ。リルって呼んでいいからね」
どことなく気品漂う女性の名前は、どこかで聞いたことのある名前だった。
「リルさん、あの……ここは?」
「ここはトレニア帝国。帝国の町の普通のお家の中ってところね」
「……トレニア帝国!! ここ、トレニア帝国なの!?」
「あら、何かあったりするの?」
「あ、いいえ……あの、わたしはここ……の魔法学園に入学をすることになって……いるんです」
驚いたなぁ。あんなにたどり着くのが難しいと思っていたのに、目を覚ましたらトレニア帝国の中にいるだなんて。しかも親切な女性の家に。
「待っていてね、いまお水を持って来るから」
リルはそう言うと、立ち上がって奥へと戻って行った。リルに変わるようにして、今度は男の子がエドナに話しかける。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんを知ってる?」
「……え? お姉ちゃんのお姉ちゃん? ええと、わたしにはお姉ちゃんは……」
いるようないないような。あやふやになっている記憶をたどって、ひとまず男の子を落ち込ませないように。
「知ってる……かな」
「じゃあじゃあ、今度いつ会えるの?」
「えっ、えーと……そのうちかな?」
「やったぁー! そのうち会えるんだー! たのしみー」
うーん、何か期待を持たせることを言っちゃって悪いことをしたかな。でも悪い方に話を持っていくのも駄目だと思うし……。
「あの子を元気づけてくれたのね、ありがとう」
「あ、でも……お姉ちゃんのお姉ちゃんは……」
「ええ。あの子たちはきっとどこかで立派に冒険者になっているはずだから、心配はしていないの。エドナさんも冒険者かしら?」
あの子たちというと双子とか姉妹とか。そんなことを思い浮かべていると、リルが嬉しそうにそのお姉ちゃんたちのことを話し始めた。
「あの子たちは生まれてすぐに魔法の素質が優れていることを認められたの。そのまま魔法学園に入るはずだったのだけど、冒険者を目指すなんて言って二人で外に飛び出して行ったの。その時はとても悲しかったけど、あの子にまた帰って来るって約束してくれたから心配はしてないの」
思い当たる名前は二人ほど。思いきって言ってみよう。
「アドーラ……セリアとリズ――?」
「あら? あの子たちのことをどうして? もしかして冒険者仲間というのはエドナさんのこと?」
「ううん、わたしは途中で出会っただけなんです。今はあの、どこにいるかまでは……」
「そう……。でも約束しているのなら、またどこかで再会出来ると思うし元気出してね!」
元気づけるはずが、逆に元気づけられてしまった。エドナはアドーラ姉妹の母であるリルに感謝して、この家にしばらくお世話になることをお願いすることに。
それというのも、十二歳になった時に魔法学園に入学することが決まっていること、それからライラたちと再会出来るとしたらトレニア帝国しか無いと思っていたからだ。
エドナがリルの家にお世話になってから数日が経った。
数日とはいえ、エドナは今何をして何をするべきなのか、そのことが未だにはっきりしていないという悩みがあった。帝国内の街を出歩いても特に行くところも無ければ、誰かと話をするでもない。
そんな曖昧な日々を過ごす毎日だった。
「エドナさん、ギルドは行ってみた?」
「ううん、行って無いです」
「帝国のギルドはとっても大きいし、知りたいことがわかるかもしれないから、良ければ行ってみてね」
「……そうします。ありがとう、リルさん」
「いいえ~」
あまり乗り気にはならなかったエドナは、リルに言われた通りギルドに向かった。
「えーと、魔力測定は……」
どうせなら今の魔力を測りたい。そう思って測定石を探していると、ギルドの人らしき人が緊急の討伐指令を出した。
その話によれば、近隣を荒らしまわっているオークが街に近づきつつあり、街に繋がる街道や橋を破壊しているという。そしてそれを討伐して欲しいという内容だった。
エドナもその指令をやってみようという気になって、カウンターで話をしようとすると。
「エドナ・ランバートさん、十二歳ですね。冒険者ランクは……不明? ええと、どういうことなのか調べてまいりますので、ここでお待ちください」
「ええええええええええええええええええええ!? じゅ、十二歳って?」
「え、ですから、エドナさんは十二歳の……」
「ご、ごめんなさい。何でもないです」
えっ? 十二歳って言ったよね?
あれって、わたしっていつの間にそんな成長しちゃってるの?
何か色々と移動しまくっているからその間に成長しちゃってたのかな。
しばらく待っていると。
「お待たせしました! エドナさん、どうぞこちらに」
「は、はい」
どういうことなのか、ギルドの中でもかなり立派な机のある部屋に案内され、エドナはそこでギルドマスターなる男性に声をかけられた。
「エドナ・ランバート……ランバート村出身の賢者。いつからトレニア帝国に?」
「いつからかは覚えてないです。どこかの森でわたし、倒れていたみたいで」
「む、なるほど。であれば、Aランクパーティーたちとはまだ会えていないのだな。出来れば会わせてやりたいが、その前に行ってもらいたい場所がある。聞いてもらえるか?」
Aランクパーティー。それってライラたちのことだろうかとエドナは期待した表情を浮かべる。
「聞きます」
「うむ。実は指令でもあったのだが、活発化しているオークどもがトレニア周辺の橋や街道を荒らしまくっている。そこでキミに独自に頼みたいのは、すぐ近くにある滝つぼを見つけ、そこに魔物封じの剣を沈めてきて欲しいのだ」
滝つぼ……そういえばそこにサラからもらった朽剣を沈めるとか何とか。
「剣を沈めると何が起きるんですか?」
「それは精霊を呼び覚ます……と言われている。精霊であれば、オークごときを一時的に行動不能にすることも可能だからな。そういうわけなので、ぜひキミにお願いする。行ってくれるか?」
元々滝つぼに行こうとしていたエドナは、そのついでではないものの、ギルドの為になればと思って引き受けることにした。
そうすれば自分の身にも何らかの変化が起きると思っていたからだ。そうしてすぐに出発しようとすると、エドナに声をかける男の姿があった。
「おぉ、エドナ! まさかこんなところで会えるとは!」
「えっ? あっ……エラスムス?」
鉱山洞穴で出会い、その後アルボルド王国で別れた行商人エラスムス。彼とまた会えるとは正直に言って思ってもみなかった。
「おうよ! まぁ、行商人てのは世界中を歩き回るから、どこかで会えるんじゃないかと思っていたがな」
「今はトレニアに?」
「まぁな。しっかし、そうか……エドナも随分と成長してるんだな。今は何歳なんだ?」
ここはもう自分で自分の年齢を認めるしかないよね。
「じゅ、十二歳……」
「おぉ! あれから三年か~! しみじみするなぁ。オレはしばらくトレニアで商売するから、何か儲けられる話があったらよろしくな! じゃあな、エドナ!」
「うん。またね」
相変わらず調子のいい行商人エラスムスに再会して、気持ちが上向いたエドナは一人で外へと向かう。
「起きて、起きて……う~お姉ちゃんが起きないよ?」
誰かがエドナの顔をペチペチと触っている。顔から熱はそれほど帯びていなく、異常の無い体温にまで戻っているようだ。
「もう一度でいいから、今度は体全体を揺らしてみて」
「あい!」
「お姉ちゃん、起きて、起きて……」
気のせいかと思って体を起こさずに様子を見ていたエドナだったが、どうやら今度はちゃんとした人間の温もり。そう確信したエドナはゆっくりと目を開ける。
「……起きたよ。だからもう、大丈夫」
「あっ!! お姉ちゃんが起きたよーー!! ママー、ママァ!」
小さな男の子はエドナが起きたことを知って、逃げるように母親の元へ走っていく。
「う~ん……今度はどこに来たの?」
周りを見回しても、普通の民家といった内装に見えていてとてもどこか見知らぬ世界にたどり着いたようには見えない。
そんな状態で横になったまましばらく呆けていると、奥の方からバタバタと足音をさせながらエドナの寝ているところへ近づいてくるのが聞こえる。
エドナはそのまま黙って待っていると。
「起きましたね」
「は、はい」
「ご気分はいかがですか?」
「よくも悪くも……かなぁと」
「ふふっ。あなた、トレニアの森で倒れていたのよ。あんな危険なところで一人だけで倒れていたものだからびっくりしちゃってどうしようかと思っていたの」
さっきエドナを起こし続けていた男の子が母親である女性の陰に隠れて、エドナのことをじっと見つめてきている。
その視線はまるで物珍しい動物を見るような感じで。
「そ、その、ありがとう」
「いいのよ」
「わたし、エドナ・ランバートです」
「エドナさんね。私はリル・アドーラ。リルって呼んでいいからね」
どことなく気品漂う女性の名前は、どこかで聞いたことのある名前だった。
「リルさん、あの……ここは?」
「ここはトレニア帝国。帝国の町の普通のお家の中ってところね」
「……トレニア帝国!! ここ、トレニア帝国なの!?」
「あら、何かあったりするの?」
「あ、いいえ……あの、わたしはここ……の魔法学園に入学をすることになって……いるんです」
驚いたなぁ。あんなにたどり着くのが難しいと思っていたのに、目を覚ましたらトレニア帝国の中にいるだなんて。しかも親切な女性の家に。
「待っていてね、いまお水を持って来るから」
リルはそう言うと、立ち上がって奥へと戻って行った。リルに変わるようにして、今度は男の子がエドナに話しかける。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんを知ってる?」
「……え? お姉ちゃんのお姉ちゃん? ええと、わたしにはお姉ちゃんは……」
いるようないないような。あやふやになっている記憶をたどって、ひとまず男の子を落ち込ませないように。
「知ってる……かな」
「じゃあじゃあ、今度いつ会えるの?」
「えっ、えーと……そのうちかな?」
「やったぁー! そのうち会えるんだー! たのしみー」
うーん、何か期待を持たせることを言っちゃって悪いことをしたかな。でも悪い方に話を持っていくのも駄目だと思うし……。
「あの子を元気づけてくれたのね、ありがとう」
「あ、でも……お姉ちゃんのお姉ちゃんは……」
「ええ。あの子たちはきっとどこかで立派に冒険者になっているはずだから、心配はしていないの。エドナさんも冒険者かしら?」
あの子たちというと双子とか姉妹とか。そんなことを思い浮かべていると、リルが嬉しそうにそのお姉ちゃんたちのことを話し始めた。
「あの子たちは生まれてすぐに魔法の素質が優れていることを認められたの。そのまま魔法学園に入るはずだったのだけど、冒険者を目指すなんて言って二人で外に飛び出して行ったの。その時はとても悲しかったけど、あの子にまた帰って来るって約束してくれたから心配はしてないの」
思い当たる名前は二人ほど。思いきって言ってみよう。
「アドーラ……セリアとリズ――?」
「あら? あの子たちのことをどうして? もしかして冒険者仲間というのはエドナさんのこと?」
「ううん、わたしは途中で出会っただけなんです。今はあの、どこにいるかまでは……」
「そう……。でも約束しているのなら、またどこかで再会出来ると思うし元気出してね!」
元気づけるはずが、逆に元気づけられてしまった。エドナはアドーラ姉妹の母であるリルに感謝して、この家にしばらくお世話になることをお願いすることに。
それというのも、十二歳になった時に魔法学園に入学することが決まっていること、それからライラたちと再会出来るとしたらトレニア帝国しか無いと思っていたからだ。
エドナがリルの家にお世話になってから数日が経った。
数日とはいえ、エドナは今何をして何をするべきなのか、そのことが未だにはっきりしていないという悩みがあった。帝国内の街を出歩いても特に行くところも無ければ、誰かと話をするでもない。
そんな曖昧な日々を過ごす毎日だった。
「エドナさん、ギルドは行ってみた?」
「ううん、行って無いです」
「帝国のギルドはとっても大きいし、知りたいことがわかるかもしれないから、良ければ行ってみてね」
「……そうします。ありがとう、リルさん」
「いいえ~」
あまり乗り気にはならなかったエドナは、リルに言われた通りギルドに向かった。
「えーと、魔力測定は……」
どうせなら今の魔力を測りたい。そう思って測定石を探していると、ギルドの人らしき人が緊急の討伐指令を出した。
その話によれば、近隣を荒らしまわっているオークが街に近づきつつあり、街に繋がる街道や橋を破壊しているという。そしてそれを討伐して欲しいという内容だった。
エドナもその指令をやってみようという気になって、カウンターで話をしようとすると。
「エドナ・ランバートさん、十二歳ですね。冒険者ランクは……不明? ええと、どういうことなのか調べてまいりますので、ここでお待ちください」
「ええええええええええええええええええええ!? じゅ、十二歳って?」
「え、ですから、エドナさんは十二歳の……」
「ご、ごめんなさい。何でもないです」
えっ? 十二歳って言ったよね?
あれって、わたしっていつの間にそんな成長しちゃってるの?
何か色々と移動しまくっているからその間に成長しちゃってたのかな。
しばらく待っていると。
「お待たせしました! エドナさん、どうぞこちらに」
「は、はい」
どういうことなのか、ギルドの中でもかなり立派な机のある部屋に案内され、エドナはそこでギルドマスターなる男性に声をかけられた。
「エドナ・ランバート……ランバート村出身の賢者。いつからトレニア帝国に?」
「いつからかは覚えてないです。どこかの森でわたし、倒れていたみたいで」
「む、なるほど。であれば、Aランクパーティーたちとはまだ会えていないのだな。出来れば会わせてやりたいが、その前に行ってもらいたい場所がある。聞いてもらえるか?」
Aランクパーティー。それってライラたちのことだろうかとエドナは期待した表情を浮かべる。
「聞きます」
「うむ。実は指令でもあったのだが、活発化しているオークどもがトレニア周辺の橋や街道を荒らしまくっている。そこでキミに独自に頼みたいのは、すぐ近くにある滝つぼを見つけ、そこに魔物封じの剣を沈めてきて欲しいのだ」
滝つぼ……そういえばそこにサラからもらった朽剣を沈めるとか何とか。
「剣を沈めると何が起きるんですか?」
「それは精霊を呼び覚ます……と言われている。精霊であれば、オークごときを一時的に行動不能にすることも可能だからな。そういうわけなので、ぜひキミにお願いする。行ってくれるか?」
元々滝つぼに行こうとしていたエドナは、そのついでではないものの、ギルドの為になればと思って引き受けることにした。
そうすれば自分の身にも何らかの変化が起きると思っていたからだ。そうしてすぐに出発しようとすると、エドナに声をかける男の姿があった。
「おぉ、エドナ! まさかこんなところで会えるとは!」
「えっ? あっ……エラスムス?」
鉱山洞穴で出会い、その後アルボルド王国で別れた行商人エラスムス。彼とまた会えるとは正直に言って思ってもみなかった。
「おうよ! まぁ、行商人てのは世界中を歩き回るから、どこかで会えるんじゃないかと思っていたがな」
「今はトレニアに?」
「まぁな。しっかし、そうか……エドナも随分と成長してるんだな。今は何歳なんだ?」
ここはもう自分で自分の年齢を認めるしかないよね。
「じゅ、十二歳……」
「おぉ! あれから三年か~! しみじみするなぁ。オレはしばらくトレニアで商売するから、何か儲けられる話があったらよろしくな! じゃあな、エドナ!」
「うん。またね」
相変わらず調子のいい行商人エラスムスに再会して、気持ちが上向いたエドナは一人で外へと向かう。
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