真面目に掃除してただけなのに問題ありまくりの賢者に生まれ変わっちゃった~えっと、わたしが最強でいいんでしょうか?~

遥 かずら

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第18話 冒険者登録と魔力測定

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「――よし、その手をもっと近付けてごらん」

 盗賊たちをレセンガ峡谷へ送ったライラたちは、ギルドのあるヤッタム村に到着していた。

 エドナの冒険者登録を済ませ、さっそく魔力測定をさせているのだが。

「力は込めた方がいいの?」
「かざすだけで力はいれなくていいんだよ。もう少しで結果が現れるはずだから、もう少しの辛抱だよ」
「は~い」

 ヤッタム村ギルドでは、レセンガ峡谷で起きた大洪水のことを知った冒険者や、関係者が信じられないといった表情で騒ぎ立てている。

 その光景にライラは真相を言いたくてうずうずしているようだった。

「……言うの?」
「私が言うわけないだろ~。さすがに学んだよ? エドナがしたことを誰かに話したりしたら自分が危ないってね」
「ふーん……。まぁいいけど」

 ライラはお調子者だからそのうち言いそう。そんなことをリズは思っている。

「そういや、セリアは? 村に着いてから別行動してるけど」
「あの子は宿で休んでる。エドナの近くにいることが多いから、その分疲れることが増えたって言ってた」

 リズの妹であるセリアは、魔術師としての実力はかなりのものだ。しかし強力な魔力を有し、精霊の加護を受けるエドナの近くにいるとそれだけで精神力がそがれるのだとか。

「あ~分かる。エドナの面倒は大変だしな~」
 
 魔力測定中のエドナを見ながらライラは笑ってみせた。

「違う。魔力の流れを間近で感じるから精神力が困憊するって」
「そ、そっかぁ~あははは」
「……気をつけた方がいい」

 ライラとリズが話をしていた時。

 魔力測定をしていたエドナのいるところから突然、その場にいる誰もが目を覆い尽くしたくなるような眩い光が部屋中に降り注いだ。

「うわああああっ!? 目が、目がおかしなことになってる! 何も見えん!!」
「な、何だぁぁぁ? 何が起きてる?」
「ギルドに襲撃か!?」

 ……などなど、ギルドにいる冒険者たちが目をかばいながら騒ぎ立てている。

「くっ、こんな突然の光は厳しいな。リズは平気?」
「静かに目を閉じて待っていれば平気」

 ライラと違い、リズはいたって冷静だ。

 しかし時間にして数十分後、部屋中の光が収まったところで、バリバリリ。という音と共にギルドとして建っていた小さな建物がすっかりとその姿を失っていた。

 それにもかかわらず。

「ライラ~! リズ! やったよぉ~!! わたしも転送が使えるよ~」

 という、嬉しそうなエドナの声が響き渡る。

 目くらまし状態からようやく回復したリズが目を開けると、そこには嬉しくて飛び跳ねるエドナの姿があった。

 ……と同時に、いつの間にか自分が外に出てしまっていることに困惑する。

「外? ううん、これはきっと……まぁ、何かしらの問題は起こすと思ってたから気にしない」

 ライラはともかく、リズは小刻みに頷きながらエドナを迎えた。

 建物は屋根ごと無くなっているようで、その場にいた冒険者たちは呆然と立ち尽くしていた。しかし置かれているテーブルやカウンターなどはそのままの状態で残っていることから、関係者たちは慌てふためくことなく平静を装っている。

「……エドナなら心配いらないって思ってた。おめでとう、エドナ」
「うんうんっ! あれ、ライラはどうしたの? 目を閉じてるみたいだけど」

 すでに部屋中の光は収まり、他の冒険者たちも部屋の中を動き始めている中、ライラは目を閉じたままその場に立った状態を保っている。

「これのことなら気にしなくていい。立ったまま寝るのが趣味だから」

 実はライラのおふざけらしいものの、そう言われて動くに動けなくなっているようだ。

「そうなんだ。ライラって面白いもんね! そういえばセリアはまだ宿にいるの?」
「ん。出発するまで休ませてあげて。それより、魔力量はどれくらい?」

 リズの言葉にエドナは首をかしげて。

「なんかね~さっぱり分からないって言われちゃった。測定石では計り知れないだって」
「そう……。でも良かったね、認められて」
「うんっ! これで他の国とかに近づけるね!」
「楽しみ?」
「うん!」

 エドナの喜ぶ顔を見て、リズも心なしか嬉しそうにしている。

「はぁぁ~あ。よく寝た。あれ? そこにいるのはエドナだね~! どう? 認められた? って、いないし!!」

 ライラを残してギルドを後にしたエドナとリズは、ヤッタム村の食堂に来た。ここでは食堂の中に流れる小川で小魚が釣れるのだとか。

 食堂の客を見ると人間以外の種族は見えない。それでも料理をする者の中には耳の長い種族の人がいるようで、忙しそうに動き回っているのが確認出来る。

「あの料理をしてる人って、もしかして……」
「兎人族。ヤッタム村は兎人族が作った村だから」
「そうなんだ~」

 こうして見ても前世同様に世界は広い。そんなことを思うエドナだった。

 魚料理を待っていると、都合よくライラが姿を見せる。

「ふぅ~……私を置いて行かないで欲しいよ、全く」
「勝手に寝てた。だからいいかなって」
「そんなわけ――あ~寝てたよ、うん。やぁ、エドナ」

 エドナが見つめていることに気づいて、ライラはすぐにリズの話に合わせることにした。

「よく眠れた?」
「そりゃあもう、ばっちり! エドナもおめでとう!」
「え、何で分かるの? 教えてないよね?」
「嬉しそうにしてるから分かるよ! これでエドナも一緒に国境転送が出来るね」

 そんなに顔に出てたのかなと思いながら、エドナは素直に喜んだ。

「お待たせしました。メジナの塩焼きです。ごゆっくりどうぞ」

 注文していた小魚料理が出来たようで、エドナはもちろんリズとライラもがっつくように食べ始めた。

「……ところで、セリアは大丈夫なのか? リズ」
「よく眠れば回復するって言ってたから心配いらない」
「それならいいけど、あいつ無理しすぎる所があるから心配なんだよなぁ」
「ライラのパーティーって、みんな同じ国?」

 ライラとリズの会話を聞いてエドナは何となく気になった。リズとセリアは姉妹だからそれはいいとしても、戦士であるライラとはどこでつながったのか気になるところ。

「そういえば話してなかったね。私らは私だけが違うかな。リズとセリアは魔法の……」

 ライラが言いかけたところでリズが割って入る。

「ライラは戦士が多くいるレジェンダロアっていう西方の国から来た。その時から無神経で大雑把で、うるさくてって感じ」
「そこまで言わなくてもいいってのに。ま、とにかくリズたちとは道中で出会ってそれ以来だね。エドナももっと大きくなったらパーティーを組める人と出会えばいいね」

 リズとセリアの国は明かしたくないってことなのかな?
 初めはあんまり話をしてくれなかったけど、今はリズの方が話しやすくなったし、魔法とかで意識を変えたとしたらそれが関係しているのかも。
 
「ふー……食べたぁ。お肉もいいけど魚もいいよなぁ」
「食べ方も以前みたくなってるけど?」
「分かってるってば。私も少しは変わる努力はしてるよ! そうじゃないとあの国には立ち入り出来そうにないし……」

 二人のかけ合いを見ながら、エドナはマイペースで魚を食べていた。

「よぉし、そろそろ宿に行って休もう!」
「そうする」
「国境は眠ってから行くの?」
「その方がいい。転送は魔力もだけど、体力も使うんだよ。歩く距離分稼げる代わりに、疲労感がどうしても出てしまうんだ。だから休める時に休んだ方がいいんだよ」
「そうなんだ。じゃあそうする~」

 早く国境移動をしたい気持ちがあるものの、ライラの言葉を信じてエドナは宿へ行って休むことにするのだった。
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