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第4話 高ランク冒険者と行こう!
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「おぉ……無事に貫通出来たようじゃな」
土壁を外から崩した女性に対し、レンケン司祭はまるで来ることが分かっていたかのような表情を見せている。
「あなたがレンケン司祭……ですか?」
「いかにも。ランバート村によくぞ参られた。わずかな穴しか開かなかったと思われるが、よく気づいてくれましたな」
「いやぁ、まさか書簡に書かれていたことが本当に起きていたなんて驚きですよ!」
レンケン司祭はエドナが何らかの問題を村全体に及ぼす恐れがあることを、事前に予期していた。そしてそのことを訪れる者に知らせていたようだ。
「おじいちゃん、この人たちは~?」
「それはじゃな……」
土壁の向こう側から現れた者に対しエドナが不安がっていると、女戦士に続いて別の女性たちが姿を見せる。
「きみが賢者? 神官のリズ・アドーラ。よろしく」
「わたくしは魔術師をしておりますセリア・アドーラですわ。そこの神官の妹なのですわ」
「私はライラ・サランジェ! よろしくな! 見ての通り戦士だよ」
戸惑うエドナを見ながら三人の女性たちは、自分のことを次々と紹介してくれた。しかもエドナが賢者であるということを分かっているようだ。
おじいちゃんがかなり前からわたしのことを教えていたってことなのかな。それにしても女戦士に神官、それに魔術師なんてファンタジーだね、本当に。
「わたしはエドナだよ。お姉ちゃんたちは外から来た冒険者なの?」
エドナは自分よりも背丈の大きい人間たちに対し、物怖じせずにあいさつをしてみせた。その様子に、ライラたちは満面の笑みで頷いている。
「さて、エドナ。勘付いているやもしれぬが、お前をこの者たちに預けることにした」
「ゴーレムで迷惑かけちゃったからだよね?」
ランバート村を覆い尽くすゴーレムを生み出したことに、エドナは自分に責任があるのだと思っていた。
レンケン司祭はもちろん、サラとシフル、ノオムが冒険者たちが現れても驚いていないのが何よりだからだ。
「いいや、ゴーレムはたまたまじゃよ。エドナがこの村に生まれてから早九年。賢者の生まれ変わりとしてサラたちと共に成長を見守って来たんじゃが、お前の力をこの先も見守れるかどうか分からなくなったんじゃよ……」
エドナを赤子の頃より育ててきたレンケン司祭は落ち込んだ表情を見せている。
「ううん、おじいちゃんがあやまることじゃないんじゃないかなぁ?」
きっとみんな手に負えなくなっちゃったんだろうけど。
「む、むぅ……それだけ聞いていればいい子じゃな、エドナは」
「……だな。エドナは賢くていい子だぜ。あたしが認める」
「ええ、おりこうさんですわ。少しだけいたずらっ子が顔を覗かせましたけれどね」
「オレもエドナちゃんと遊ぶのは楽しかった」
星の束と生まれてきたと言われていたエドナは、向こうの世界から流れてきたのが単なる星のラメと分かっていたうえ屋敷の子供にいたずらされたことが影響して、その要素が全て自分のものとなったのではないかと密かに思っていた。
そのことを分かっていただけに、村の人が申し訳なさそうにしている姿に複雑な感情を抱いていた。ランバート村の面々がエドナに頭を下げていると、女戦士のライラがエドナに近づき声をかける。
「まぁ、何というか……私らは冒険者なんだけど、私らと一緒に来るってことでいいかな?」
「いいんだよね、おじいちゃん」
エドナからの問いにレンケン司祭は静かに頷いてみせた。
「えっと、じゃあ行って来るね! おじいちゃん、サラさん、シフルおばちゃん、ノオムおじちゃん。わたし、頑張るね~」
ライラに手を引かれエドナが外に向かって歩き出すと、サラが慌てて声をかけてくる。
「エドナ。せんべつに……って言っても分からないだろうが、お前にこれをやるよ。もっとも、まだ使い道は無いかもしれない。でも使う時がきたら使ってやってくれないか?」
「あれ、この剣……」
サラが手渡してきた剣は錆びよりも状態が悪く、武器としては成り立たないくらいの見た目をしていた。
「それは朽剣。朽ちている剣さ。今のエドナは力加減が分からなくて剣そのものを駄目にしてしまうからな。でも朽剣ならそれ以上変化しようがないからね。もっと力の使い方を学んだら、その時にはその剣も使えるようになるはずさ」
サラの言葉にエドナは笑顔を見せながら手を振って、村の外に向かって歩き出した。
すると、
「エドナ、名を聞かれたらランバートと名乗っていいんじゃからの~!」
「エドナちゃん、またね~!」
「また遊ぼう、エドナちゃん。立派になることを願っているよ」
レンケン司祭やシフル、ノオムが送り出しの言葉を投げていた。
「うんっ! 行ってきま~す! おじいちゃんたちも元気でね~!」
エドナが村の外に出ると同時に、村を覆い尽くしていたゴーレムはものの見事に崩れて跡形もなく消失した。
「やれやれ、行ってしまったか……問題児ではあったがいい子じゃったし、何とも寂しいものじゃな」
「預けることを決めたのはあたしらだろ? 村の中だけで何とか出来なかった以上は外の人間に委ねるしかなかったんじゃないのか?」
「そうでもそうじゃが……果たしてあの子は賢者として自覚を持ってくれるじゃろうか。何せ本人はまるで分かっていなかったからのぅ」
ずっとエドナをそばで見守ってきたレンケン司祭は、エドナの姿が見えなくなってもしばらく外に視線を注いでいた。
エドナがランバート村を離れてしばらく経つ。高ランク冒険者と呼ばれる彼女らは、エドナを守りながら村道をゆっくりと歩いていた。
エドナにとって初めての外ということもあって、目に見える景色にただただ驚きっぱなしだった。感動しまくりなせいか本来のはしゃぎっぷりは消え失せて沈黙状態が続いているが、ライラたちも自分たちに預けられた責任を感じてエドナになかなか声をかけられなくなっている。
「あ~……改めてだけど、エドナちゃんは九歳だったっけ?」
パーティー内での盛り上げ役なのか、戦士ライラが重い口を開く。
「うん、そうだよ。えっと……」
「私のことは気軽にライラって呼んでくれて構わないよ」
「わたくしもセリアでいいですわ」
「……リズはリズ。エドナもエドナでいい?」
姉妹である二人もようやく口を開き、エドナに笑顔を見せた。女性だけのパーティーということもあってか、エドナも彼女たちに積極的に話しかけることに。
「エドナ! うんうん、呼びやすい方でいいよ~」
彼女たちの年齢は分からないけど、おじいちゃんたちよりも話しやすそうで良かった。それにしても冒険者と旅をすることが出来るなんて、何だか夢みたい。
「ねえねえライラ。これからどこに行くの? 魔物退治?」
「心配かい?」
「ううん、本当に魔物と戦うのかなぁって思ってたの」
「あははっ、おかしなことを言うもんだね。でもまぁ、ダンジョンとかに潜れば嫌でも戦うことになるからその時は本当かどうか分かるだろうね。でもしばらく魔物は避けながら進むことにするから心配しなくていいよ」
ライラたちに守られているとはいえ、ランバート村を離れてしばらく経っているのに、魔物の影も見えないのはおかしいとエドナは思っていた。
初めて外に出たんだから見てみたいな。村でゴーレムは出してしまったけど、あれは魔物じゃなかったわけだし。
「この辺りはまだランバート村の加護があるから、魔物は出ないと思いますわ」
納得していないエドナに対し、セリアが優しく声をかけた。
「加護? 何の加護なの?」
「何だ、エドナは知らずにランバートにいたのかい?」
「生まれた時から外に出たことないもん。おじいちゃんたちは魔法とか使えていたみたいだけど」
エドナの言葉に神官のリズが反応する。
「ランバート村は四元素の精霊が守る村。レンケン司祭は精霊を祀る人間」
「えっ? やっぱりそうだったんだ~」
「知っていたならそれでいい。エドナは賢者としてきっと期待されている」
「賢者かぁ。その前に魔法学園に入れるんだよね?」
「それはエドナ次第」
転生した村が特別な場所だったことは分かっていたものの、エドナにとっては自分が育ってきた村という認識でしかなくそこまで驚きはしなかった。
流されてきただけだし、そんな反応になるのは仕方がないかも。九歳で冒険者さんに預けられることになるとは思ってもみなかったけど。
「エドナ、ずっと歩いてきてるけど疲れてない?」
「平気だよ」
「それはいいね。そろそろ村道が途切れて森の中を進むことになるから、森の手前で休もうか」
先頭を歩くライラの言うとおり、前方に木々が茂る森が見えてくる。ライラたちは周辺に気を配りながら休む場所を確保しようと、エドナから少しだけ離れた。
「エドナ。私らで休める草地を探すから、そこで待ってて」
「は~い」
ライラに言われた通りエドナは少しの間、その場を動かずに彼女たちの動きを眺めていた。彼女たちももうすぐ休めるという気の緩みがあったのか、エドナから一瞬目を離し、邪魔な草を避けたり手頃な石を見つけて動いているようだ。
一瞬の隙が生じたそんな時、草むらからエドナに向かって何かが飛びかかろうとしていた。
「わわわっ!!」
土壁を外から崩した女性に対し、レンケン司祭はまるで来ることが分かっていたかのような表情を見せている。
「あなたがレンケン司祭……ですか?」
「いかにも。ランバート村によくぞ参られた。わずかな穴しか開かなかったと思われるが、よく気づいてくれましたな」
「いやぁ、まさか書簡に書かれていたことが本当に起きていたなんて驚きですよ!」
レンケン司祭はエドナが何らかの問題を村全体に及ぼす恐れがあることを、事前に予期していた。そしてそのことを訪れる者に知らせていたようだ。
「おじいちゃん、この人たちは~?」
「それはじゃな……」
土壁の向こう側から現れた者に対しエドナが不安がっていると、女戦士に続いて別の女性たちが姿を見せる。
「きみが賢者? 神官のリズ・アドーラ。よろしく」
「わたくしは魔術師をしておりますセリア・アドーラですわ。そこの神官の妹なのですわ」
「私はライラ・サランジェ! よろしくな! 見ての通り戦士だよ」
戸惑うエドナを見ながら三人の女性たちは、自分のことを次々と紹介してくれた。しかもエドナが賢者であるということを分かっているようだ。
おじいちゃんがかなり前からわたしのことを教えていたってことなのかな。それにしても女戦士に神官、それに魔術師なんてファンタジーだね、本当に。
「わたしはエドナだよ。お姉ちゃんたちは外から来た冒険者なの?」
エドナは自分よりも背丈の大きい人間たちに対し、物怖じせずにあいさつをしてみせた。その様子に、ライラたちは満面の笑みで頷いている。
「さて、エドナ。勘付いているやもしれぬが、お前をこの者たちに預けることにした」
「ゴーレムで迷惑かけちゃったからだよね?」
ランバート村を覆い尽くすゴーレムを生み出したことに、エドナは自分に責任があるのだと思っていた。
レンケン司祭はもちろん、サラとシフル、ノオムが冒険者たちが現れても驚いていないのが何よりだからだ。
「いいや、ゴーレムはたまたまじゃよ。エドナがこの村に生まれてから早九年。賢者の生まれ変わりとしてサラたちと共に成長を見守って来たんじゃが、お前の力をこの先も見守れるかどうか分からなくなったんじゃよ……」
エドナを赤子の頃より育ててきたレンケン司祭は落ち込んだ表情を見せている。
「ううん、おじいちゃんがあやまることじゃないんじゃないかなぁ?」
きっとみんな手に負えなくなっちゃったんだろうけど。
「む、むぅ……それだけ聞いていればいい子じゃな、エドナは」
「……だな。エドナは賢くていい子だぜ。あたしが認める」
「ええ、おりこうさんですわ。少しだけいたずらっ子が顔を覗かせましたけれどね」
「オレもエドナちゃんと遊ぶのは楽しかった」
星の束と生まれてきたと言われていたエドナは、向こうの世界から流れてきたのが単なる星のラメと分かっていたうえ屋敷の子供にいたずらされたことが影響して、その要素が全て自分のものとなったのではないかと密かに思っていた。
そのことを分かっていただけに、村の人が申し訳なさそうにしている姿に複雑な感情を抱いていた。ランバート村の面々がエドナに頭を下げていると、女戦士のライラがエドナに近づき声をかける。
「まぁ、何というか……私らは冒険者なんだけど、私らと一緒に来るってことでいいかな?」
「いいんだよね、おじいちゃん」
エドナからの問いにレンケン司祭は静かに頷いてみせた。
「えっと、じゃあ行って来るね! おじいちゃん、サラさん、シフルおばちゃん、ノオムおじちゃん。わたし、頑張るね~」
ライラに手を引かれエドナが外に向かって歩き出すと、サラが慌てて声をかけてくる。
「エドナ。せんべつに……って言っても分からないだろうが、お前にこれをやるよ。もっとも、まだ使い道は無いかもしれない。でも使う時がきたら使ってやってくれないか?」
「あれ、この剣……」
サラが手渡してきた剣は錆びよりも状態が悪く、武器としては成り立たないくらいの見た目をしていた。
「それは朽剣。朽ちている剣さ。今のエドナは力加減が分からなくて剣そのものを駄目にしてしまうからな。でも朽剣ならそれ以上変化しようがないからね。もっと力の使い方を学んだら、その時にはその剣も使えるようになるはずさ」
サラの言葉にエドナは笑顔を見せながら手を振って、村の外に向かって歩き出した。
すると、
「エドナ、名を聞かれたらランバートと名乗っていいんじゃからの~!」
「エドナちゃん、またね~!」
「また遊ぼう、エドナちゃん。立派になることを願っているよ」
レンケン司祭やシフル、ノオムが送り出しの言葉を投げていた。
「うんっ! 行ってきま~す! おじいちゃんたちも元気でね~!」
エドナが村の外に出ると同時に、村を覆い尽くしていたゴーレムはものの見事に崩れて跡形もなく消失した。
「やれやれ、行ってしまったか……問題児ではあったがいい子じゃったし、何とも寂しいものじゃな」
「預けることを決めたのはあたしらだろ? 村の中だけで何とか出来なかった以上は外の人間に委ねるしかなかったんじゃないのか?」
「そうでもそうじゃが……果たしてあの子は賢者として自覚を持ってくれるじゃろうか。何せ本人はまるで分かっていなかったからのぅ」
ずっとエドナをそばで見守ってきたレンケン司祭は、エドナの姿が見えなくなってもしばらく外に視線を注いでいた。
エドナがランバート村を離れてしばらく経つ。高ランク冒険者と呼ばれる彼女らは、エドナを守りながら村道をゆっくりと歩いていた。
エドナにとって初めての外ということもあって、目に見える景色にただただ驚きっぱなしだった。感動しまくりなせいか本来のはしゃぎっぷりは消え失せて沈黙状態が続いているが、ライラたちも自分たちに預けられた責任を感じてエドナになかなか声をかけられなくなっている。
「あ~……改めてだけど、エドナちゃんは九歳だったっけ?」
パーティー内での盛り上げ役なのか、戦士ライラが重い口を開く。
「うん、そうだよ。えっと……」
「私のことは気軽にライラって呼んでくれて構わないよ」
「わたくしもセリアでいいですわ」
「……リズはリズ。エドナもエドナでいい?」
姉妹である二人もようやく口を開き、エドナに笑顔を見せた。女性だけのパーティーということもあってか、エドナも彼女たちに積極的に話しかけることに。
「エドナ! うんうん、呼びやすい方でいいよ~」
彼女たちの年齢は分からないけど、おじいちゃんたちよりも話しやすそうで良かった。それにしても冒険者と旅をすることが出来るなんて、何だか夢みたい。
「ねえねえライラ。これからどこに行くの? 魔物退治?」
「心配かい?」
「ううん、本当に魔物と戦うのかなぁって思ってたの」
「あははっ、おかしなことを言うもんだね。でもまぁ、ダンジョンとかに潜れば嫌でも戦うことになるからその時は本当かどうか分かるだろうね。でもしばらく魔物は避けながら進むことにするから心配しなくていいよ」
ライラたちに守られているとはいえ、ランバート村を離れてしばらく経っているのに、魔物の影も見えないのはおかしいとエドナは思っていた。
初めて外に出たんだから見てみたいな。村でゴーレムは出してしまったけど、あれは魔物じゃなかったわけだし。
「この辺りはまだランバート村の加護があるから、魔物は出ないと思いますわ」
納得していないエドナに対し、セリアが優しく声をかけた。
「加護? 何の加護なの?」
「何だ、エドナは知らずにランバートにいたのかい?」
「生まれた時から外に出たことないもん。おじいちゃんたちは魔法とか使えていたみたいだけど」
エドナの言葉に神官のリズが反応する。
「ランバート村は四元素の精霊が守る村。レンケン司祭は精霊を祀る人間」
「えっ? やっぱりそうだったんだ~」
「知っていたならそれでいい。エドナは賢者としてきっと期待されている」
「賢者かぁ。その前に魔法学園に入れるんだよね?」
「それはエドナ次第」
転生した村が特別な場所だったことは分かっていたものの、エドナにとっては自分が育ってきた村という認識でしかなくそこまで驚きはしなかった。
流されてきただけだし、そんな反応になるのは仕方がないかも。九歳で冒険者さんに預けられることになるとは思ってもみなかったけど。
「エドナ、ずっと歩いてきてるけど疲れてない?」
「平気だよ」
「それはいいね。そろそろ村道が途切れて森の中を進むことになるから、森の手前で休もうか」
先頭を歩くライラの言うとおり、前方に木々が茂る森が見えてくる。ライラたちは周辺に気を配りながら休む場所を確保しようと、エドナから少しだけ離れた。
「エドナ。私らで休める草地を探すから、そこで待ってて」
「は~い」
ライラに言われた通りエドナは少しの間、その場を動かずに彼女たちの動きを眺めていた。彼女たちももうすぐ休めるという気の緩みがあったのか、エドナから一瞬目を離し、邪魔な草を避けたり手頃な石を見つけて動いているようだ。
一瞬の隙が生じたそんな時、草むらからエドナに向かって何かが飛びかかろうとしていた。
「わわわっ!!」
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