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第二十四章:影の終焉
547.闇領域の空間で
しおりを挟む「フィーサ。結界が出来るまでどれくらいかかる?」
「何とも言えないけど、数分はかかるなの。だからイスティさまは先に進んでて欲しいなの!」
「そうさせてもらう。フィーサならおれがどこにいるか分かるんだよな?」
「それは間違いないなの」
ザームの大統領と衰弱中のアクセリナは、フィーサが展開する結界に残ってもらうことになった。
日の光が注がれているからといって、安全な部屋だと言いきれない。
大統領のおっさん自体に脅威が無いとはいえ、アクセリナにちょっかいを出されるのはごめんだ。
その意味も込めて、フィーサに防御魔法をかけてもらうことにした。
そうすればアクセリナも少しは不安が解消されるはずだからだ。
部屋から離れたおれたちは再び階段を下りる。
「大丈夫なのだ? アック」
「……心配いらないぞ」
「ウニャ、アック。ずっと怖い顔をしてるのだ……ドワーフはきっと大丈夫に決まってるのだ」
苛立ちを見せてたわけじゃないのに、シーニャに心配させてしまったな。
もっともおれ以上に、ミルシェの方が深刻な状態だと思われるが。
「ミルシェ――」
「――落ち着いていますわ。アックさまこそ、顔に出ていますわよ?」
「分かってる……」
「おそらく、この地下エリアはもうすぐ領域が変わりますわ。そこからすぐに始まるはず」
大統領のおっさんの隠し部屋があった場所はアンデッドエリア。
階段を下りてそこから道なりに進んでいるが、魔物の気配は一切感じられない。
この地下要塞の構造だけで判断すれば、領域ごとに魔物を配置しているように思える。それらを全滅させた時点で追加の魔物は出現させず、別の領域に進ませるようだ。
イルジナの言葉を信じれば、もはや大した敵は残っていない。
何事も無くひたすら進んでいると、ただでさえ薄暗い地下空間がさらに暗くなってきた。
その直後、シーニャとミルシェが異変を訴え始める。
「ウニャッ!? 何か体が変なのだ!! 痺れて思う様に動かせないのだ」
「うっ? この感覚……全身が重い、重いですわ。まさか、デバフ?」
おれは特に何の違和感を感じないが。
周りが暗くなったのと彼女たちの異変は何か関係があるのか。
「シーニャ、ミルシェ。どうした? 何か異常が?」
まともじゃない戦闘を仕掛けて来るのは魔王と変わりないが、地下空間を利用しての戦闘という時点で、何かやってくると踏んでいた。
おそらく彼女たちが感じている違和感の正体は、戦闘するうえで不利な状態になるものに違いない。
そしてそれを仕掛けてきたのは――
「……闇に乗じて弱体化をしてきたわけか? 違うか? イルジナ」
おれたちは狭い通路を抜け、吹き抜けのある広くて何も無い空間にいる。
シーニャとミルシェは、状態異常を感じた直後から周りの気配にまで神経をとがらせることは出来ていなかったが、おれだけはすぐにその存在に気づいた。
「フフフフフ……さすがはアック・イスティ、といったところかしら?」
「別に大したことじゃない。おれはあらゆる耐性が備わっているだけだからな! そういうお前は、光が苦手だったか?」
すぐに姿を見せて来るのは意外だったが、痺れを切らしたのはイルジナの方だったようだ。
「光? フフ、大したことなど無い」
「――ルティシアはどこにいる? 彼女を返してもらう」
イルジナとの戦いの前にルティがどこにいるのか、それをはっきりさせねば。
だが、
「ルティシア? 知らないわ。悪いけれど、わたくしはドワーフに興味が無い。あるのはことごとく邪魔をし続け、テミド様を消し去ったアック・イスティをこの手で滅することだけ……」
ルティを知らない?
ということは、イルジナじゃないもう一つの影の方か。
どっちが本体で仮なのかはどうでもいいが、それならまずはこいつを消してからだ。
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