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第二十四章:影の終焉

543.イビル・アンデッド

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「シーニャ、奴の目は見ちゃ駄目だ!」
「ウニャ?」

 アンデッドトードを始末した後、おれたちは次の部屋に進む。
 だが進んだところですでに敵の視界上、それも厄介なイビルアイの範囲内に入っていた。

「アックさま。目玉だけの魔物をまともに見てはいけませんわ!」

 などと、ミルシェが真っ先に注意喚起してくれたおかげもあって視線は回避出来た。
 しかしシーニャはどんな敵でも視線を逸らさず全力で攻めるタイプ。
 ミルシェの言うことも聞かずに魔物に向かおうとしたが……。 

「ウニャニャ!? ちょっとだけ足が重くなりかけたのだ。何なのだ何なのだ?」
「だから、あの目玉を見ちゃ駄目だ」

 シーニャにはいまいち理解出来ていなかったようで、ちらちらと敵を見ながら爪を振るっている。
 素早い動きの出来るシーニャといえども、部分的に石化してしまえば途端に劣勢になりかねない。

「シーニャ! イスティさまの言うことは素直に聞いて大人しくして欲しいなの!」
「よく分からないけど分かったのだ!」

 どう伝えれば言うことを聞いてくれるのかと危惧していたが、フィーサの言うことには素直だった。

「ミルシェ。イビルアイにはどういう攻撃が有効になる?」

 この部屋にはイビルアイ、イビルバット、イビルスコーピオンといった、基本的に聴覚感知のアンデッドしかいない。イビルアイは目玉こそデカいが、奴らはおれたちと違い正確な動きを見ることが出来ないでいる。
 
 しかしアンデッドなだけあって、生命反応や体温で近づいてくるのは容易のようだ。
 それだけでも厄介な特性を持つ魔物ばかりといえる。

「……そうですわね、神剣の小娘で十分なのでは?」
「あぁ、そうか。フィーサなら視線は関係無いな」
「人化の時は分かりませんけれど、剣に戻れば問題無いかと」
「よし……」

 アンデッドである以上、光か炎でと思ったが……。

 イビルアイは石化効果のある視線を当てる為にやたらと体当たりをして来る。それが意外にも厄介で、突っ込んで攻撃することが出来ていないが、フィーサなら問題無く倒せるはずだ。

「フィーサ! イビルアイは任せる。シーニャにはイビルバットをやってくれと伝えてくれ!」

 イビルバットはアンデッドコウモリ。ちょこまかと動き回っていて、こっちの命中率がやや落ちる。
 だがシーニャなら、細かい動きをされても関係無く切り刻むことが可能だ。

「分かったなの!」
「シーニャに――」
「イスティさま。それならすでに攻撃してるなの。でもでも、イビルバットの近くにイビルアイがいるなの。だから、わらわが先にやるしかないなの」

 翼を持つ魔物はセットで同じ場所に留まっているらしい。
 そうなるとシーニャにはしばらく目を閉じてもらいつつ、フィーサの撃破を待つしかないな。

「では、アックさま。こちらのサソリはあたしたちだけで?」
「数は多いけど問題無いだろ?」
「余裕ですわね」

 イビルスコーピオンは、アンデッドと化したサソリだ。
 全身真っ黒で、当たっただけで体が裂かれそうな刺がいくつも見えている……。
 うじゃうじゃと数を揃えただけあって、見た目だけなら圧倒的に不利な気分になりそう。
 
「……では全てかき集めて、アックさまの視界上に流しますわ! その後のことはお任せいたします」

 そういうと、ミルシェは魔物の群れに向かって挑発行動を取る。
 聴覚感知な魔物だけあって音に敏感だ。それを利用して、ミルシェはわざと水泡を作り間近で弾いた。

 弾いた水泡は勢いよく水流となり、数百にも重なるサソリを俺の元へと押し流し始めた。
 こうなると後は簡単だ。

「……不死に呑まれし邪悪の存在。凍てつきと化し、無と還れ……《フリーズ》!」

 水で流されてきたイビルスコーピオンに対し、凍結効果の属性魔法を発動。
 ミルシェが得意な水属性に氷属性をかけ合わせるだけで、まとめて始末出来る便利な連携攻撃だ。
 イビルスコーピオンは凍結により、まとまった氷塊となってほぼ瀕死となった。

「相変わらず嫌な氷属性を使いますのね」
「ミルシェに当たってはいないだろ?」
「それはそうですけれど、いやらしい攻撃であることに変わりはありませんわ」

 ミルシェは水棲怪物。
 氷属性による攻撃も使うが、自分がやられるのはやはり好きじゃないらしい。

「それはともかく、小娘と虎娘の方に行きません?」

 シーニャとフィーサがいるのは部屋の奥だ。
 イビルバットとイビルアイは、最初こそ部屋に入ってすぐの所にいた。
 だが、イビルスコーピオンと入れ替わるようにして、部屋の奥へ戻っていった。

「そうだな、行こうか」

 フィーサの攻撃がまともに当たれば、すぐに片付いていそうだけど。

「アック、アック!! 大変なのだ大変なのだ!」
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