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第二十四章:影の終焉
540.アンデッドエリア 2
しおりを挟む「触ってみて欲しいのだ! アックならきっと分かるのだ」
「……ん? これは……」
「何なのか分かったのだ?」
「……」
目の前に見えているのは黒い壁のようなもの。
それに触れるも、何なのかさっぱりだ。
唯一分かるのは、斬属性を持つシーニャの爪でもダメージを与えられないことくらい。
シーニャは低ランクのアンデッド軍団を倒しまくった。そのまま勢いに乗って天井がかなり高い部屋に進む。しかし部屋の扉を開けてすぐ目の前に、部屋全体を占領する黒い物体が行く手を阻んだ。
それが何なのか分からず、シーニャは慌てておれたちを呼んだわけだが……。
「部屋全体が黒い物体で埋まっているなんて、一体何なのかしら?」
「フィーサなら何か分かるだろ?」
「イスティさま。聞く前にまずは触れてみろなの! そうすれば分かるはずなの」
触れてみる……そうは言うけど、シーニャがすでに爪で攻撃を試している。
それにもかかわらず、黒い壁のようなものは傷一つついていない。
何か特殊な素材で出来ている?
そうとしか思えないが、闇属性の物質だとすればおれが触れたところで――
とはいえ、とりあえず手で触れてみた。
「……ん? んんん?」
触れると、腕ごと際限なくズブズブと吸い込まれる感じがあった。
だが、
「――ぬわぁっ!?」
ある程度のところまで入れると、何かがおれの手を弾いた。
「アック、大丈夫なのだ?」
「ああ。問題無いよ」
「シーニャも弾かれたのだ! でも痛くは無いからよく分からないのだ」
「……うん」
黒い物体というよりスライムのような感触に近い。
それも手触りが妙にヌメヌメとしていて、感触で思い出せばミルシェの……。
思わずミルシェを見ると、
「アックさま。あたしに何かおっしゃいたいことがあるのなら遠慮なく……」
「ミルシェのその体って、人に似せてはいるけど水棲怪物のスライムに似たあれだったっけ?」
「……半分はそうですわね。この体はあのエドラの肉体の一部でもありますので、感触的なことを言えば半々といったところですわね」
なるほど。
あながちスライムのような感触であることは間違いじゃないわけか。
「それじゃあ、その体に傷がつくとしたら切り刻みのような攻撃ではつかない?」
「ええ。カリブディスとの戦いで傷はつきましたけれど、そういう攻撃ではなく苦手属性でついたものですわね。もしかして、あたしの体と黒い物体が関係しているとでも?」
「感触的に近いなぁと思ってね」
「……それでしたら、もう一度触れれば攻撃手段がつかめるかもしれませんわね」
「そんな気がする」
シーニャの爪攻撃ではダメージは通らなかった。
ダメージ吸収されているし、強攻撃したところでかえって弾かれている。
「アック! 何か分かったのだ? 黒い壁は爪では駄目なのだ?」
自分の爪に何か問題でも起きたのかと、シーニャは何度も爪を気にしている。
低ランクのアンデッド軍団を追って倒して来たのはともかく、まだここはアンデッドエリアのはず。
「そうだね、シーニャの爪では厳しいかな」
「じゃあどうするのだ?」
「もう一度手で触れて確かめれば分かりそうなんだよな……」
しかしある一定の深さで弾かれるだろうし、どういう攻撃が有効になるのか不明だ。
そもそもこれは何なのか。
「アックさま。ではどうぞ」
「えっ?」
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