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第二十四章:影の終焉
536.地下水塞の視線
しおりを挟む「アック、アック~!! ここなのだ! ここから行けるのだ!!」
ルティが不明の中、おれたちは手分けして地下への入口を探し続けた。
時間だけが過ぎていくも、曇天の空は全く変化が無く焦りを感じなかったのは幸いだった。
どれくらい経ったか分からない中、幻影住人がいた店先付近でシーニャが妙な穴を見つける。
探るスキルを持つフィーサもようやく確信が持てたようで、
「間違いないなの!! 早く行くなのっ!」
フィーサに急かされ、おれたちは穴に侵入。
そこから地下へと落ちるように下りて行くことに。
「どこまで落ちれば地面にたどり着くのか、見当もつきませんわね」
「……確かに分からないな。だけど、何かがおれたちを見ているのは確かだな」
「ええ。不気味な視線がずっと暗闇から続いている感じですわね」
穴は脱出した風穴よりも狭く、ドラゴンが通れるほど大きくはない。
だが、闇に紛れて急襲する程度の広さはある。
「何が出て来てもいっぱいやっつけるのだ!!」
暗闇から感じる視線が今すぐ襲って来る気配は無さそうだが、何が出て来てもおかしくはない。
フィーサを除く彼女たちには、すぐに戦えるように構えだけはしてもらう。
「ウニャ? アック、下に水が見えるのだ!」
「水? まさか水の中にザームが沈んでいるのか?」
レイウルムから続いた地下通路は海底に位置していた。
しかし水門こそ守る魔物はいたものの、海に関係する敵はほとんど出て来なかった。
仮に水の中にザームごと沈んでいる――
――とすれば、地下水塞で厄介な水中戦になることが予想されるが……。
水中戦となるとミルシェはともかく、シーニャには不利な戦い。
水を通らなければ入れないというだけなら何とかなりそうだが。
「! ……ふぅっ。アックさま、真下に現れましたわ」
「え、何が?」
「カリブディスですわ。かつてあたしと対していた大食いの女……ここで飼われていたなんて、驚きしかありませんけれど」
「大食いの女? かつてのミルシェ……」
水棲怪物スキュラ・ミルシェの時は自在に触手を出して、足の部分がイカのような姿をしていたな。
そんな彼女と対していたということは、タコの怪物だろうか。
「ウニャニャ!? 足が足がたくさんうねうね動いているのだ!! アック、シーニャ、あれは嫌なのだ、無理なのだ!!」
「分かってる。おれも得意じゃない」
最初に水を見せて来たから何か出るとは思っていた。
だがそうか、ミルシェの天敵か。
アレを始末しないと先へ進めそうに無いな。
「アックさまたちはカリブディスを無視して、水中へお進みくださいませ! あいつはあたしがやりますわ」
「大丈夫なのか?」
「ご心配には及びませんわ。水に関する敵なら、むしろあたしに任せるべきかと」
「――分かった。そいつの隙を突いて水中に潜る」
とはいうものの、触手が真下から伸びて来て今にも捕まりそうだ。
短時間ながら彼女たちに浮遊魔法をかけてはいるが、いつまでもつか。
「ちっ、面倒だな」
「ウニャァァ!! 嫌なのだ、あっち行けなのだ!」
シーニャの爪ですぐに離れるが、一時的なものでダメージにはなっていない。
おれもフィーサを振ってはいるが……。
「隙を作る為にで申し訳ありませんけれど、アックさま」
「ん?」
「虎娘を抱きかかえてお潜り頂けます?」
何の属性でも耐性があるが、一体何をするつもりだ?
もしかして、シーニャが耐えられない属性でも出す気だろうか。
「シーニャを抱えればいいのか? ミルシェ、何をするつもりだ?」
「軽く毒を注いでかき混ぜるだけですわ。そうしたら、一時的にでも動きが止まるはずですので、その隙に水中へ!」
「――! わ、分かった」
麻痺でも無く毒か。
あれはあれで厄介な蝕み攻撃だな。
「シーニャ! おれに抱きついて来い!!」
「フニャウゥ!! 分かったのだ!」
おれの言葉にシーニャが勢いよく抱きついて来る。
そのままシーニャを力強く抱きしめながら、おれは真っ逆さまに水に向かって突っ込んだ。
「……すぐに向かいますわ。アックさま、後はお任せを!」
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