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第二十四章:影の終焉
533.要塞牢獄の挑発者
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サージュ要塞の廃墟の町。
ここには人がいなくなってからも、店や宿屋、教会といったものが崩れずに残っている。
おれたちは最初から戦闘になることを期待していた。
だが、まさか幻影によって出鼻をくじかれるとは、さすがに予想していなかった。
とはいえ、シーニャとルティも落ち着きを取り戻したので、廃墟の町を各自で探索することに。
しかし旧シーフェル王国の時と同様に、敵の気配は未だ感じられない。
おれが数百程度の気配を感じたのも影だったのかは疑問のままだ。
それはそうと、
「ウニャ! ここはシーニャの場所なのだ!! ドワーフは入って来るななのだ!」
「ええぇ!? そこは空っぽの牢獄なだけで、誰が入ってもいい場所なんですよぉぉ?」
「嫌なのだ! シーニャの場所にはアックしか入れないのだ」
「むむむむ……」
何をやってるんだか。
シーニャとルティが争っている場所は牢獄と呼ばれる檻だ。
廃墟の町の奥の方まで探してみると、そこには収容所なる場所があった。
さらに中へ進んだ先にあったもの――それは、
鍵のかかっていない、いくつもの牢獄だった。
「全部もぬけの部屋だな」
「おそらくですけれど、ザームの兵士に懲罰を与える部屋なのでは?」
「自国の兵士に? 何でまた……」
使えない兵士、失敗した兵士に対してだろうか。
「……ザームには王がいませんわ。そうなると厳しさを与える存在が必要だったはず。廃墟の町が崩れてないところを見ると、そういった立場の人間を置いていたのではありませんか?」
廃墟になる前までここで誰かが管理していたのか……。
あり得ない話じゃないな。
それはともかく、どこかにある地下への入口を探さないと。
「イスティさま! 誰かいるなの!!」
「! どこだ、フィーサ?」
「すぐ、すぐ近くにいるなの!」
そうかと思えば、フィーサが早々に反応する。
シーニャとルティはここから離れた牢獄で遊んでいるが……。
フィーサは剣のままだが、ミルシェの表情が一気に硬くなっている。
おれからは特に何の気配も感じないが。
「――うかつでしたわ。牢獄エリアだからと気を張っていなかったとはいえ……」
「ミルシェ? どうした?」
「……いますわ。気配を全く感じさせずに現れましたわ」
おれとミルシェがいる場所は牢獄エリアでも奥の方になる。
シーニャとルティは手前側を出入りしていて、おれからは見えない。
ミルシェの顔が硬直状態となり、その視線の先……おれの背後にいるのは――
「全く気付かれずにいるのも寂しいことね……うふふふふふ。今の気持ちはいかが? アック・イスティ?」
直接関わったことがあるのは多くない。
だがこの声と気配、そしておれを挑発する存在……。
「お前がイルジナだな?」
後ろを振り向くとそこにいたのは、両脇に影を従えたイルジナという女の姿があった。
間近で探る感じではすでに人間では無さそうだが。
「そう、薬師イルジナという女……と言っておきますわ。砂地の冒険者砦以来ですわね……」
「わざわざ姿を見せるなんて、随分余裕じゃないか。今すぐおれを消しに来たのか?」
おれはともかく、ミルシェが動けないのはこいつのせいか。
影で何かしてるな。
「うふふふふふふ……まさか。それはあまりにつまらない。わたくしも魔王と似た遊びをしたくて現れてやったというのに。今すぐ消すなど、あまりにつまらないというもの……」
間近で見ても人間の女そのものだ。
しかし幻影を作り出したのがこいつだとすれば、あの影とは別の存在ということになる。
「魔王の遊びだと?」
「お忘れ? 魔王スフィーダと散々戯れをしていたのに、わたくしとは遊んでもくださらないなんて、アック・イスティもつまらない存在なのかしらね?」
「どうせお前が用意した者と戦うだけだろ?」
「うふふふふふ……幻影廃墟は楽しめたでしょう?」
やはりここはこいつの仕業なわけだ。
挑発の為だけに現れたとしても、ここでやるべきか?
ここには人がいなくなってからも、店や宿屋、教会といったものが崩れずに残っている。
おれたちは最初から戦闘になることを期待していた。
だが、まさか幻影によって出鼻をくじかれるとは、さすがに予想していなかった。
とはいえ、シーニャとルティも落ち着きを取り戻したので、廃墟の町を各自で探索することに。
しかし旧シーフェル王国の時と同様に、敵の気配は未だ感じられない。
おれが数百程度の気配を感じたのも影だったのかは疑問のままだ。
それはそうと、
「ウニャ! ここはシーニャの場所なのだ!! ドワーフは入って来るななのだ!」
「ええぇ!? そこは空っぽの牢獄なだけで、誰が入ってもいい場所なんですよぉぉ?」
「嫌なのだ! シーニャの場所にはアックしか入れないのだ」
「むむむむ……」
何をやってるんだか。
シーニャとルティが争っている場所は牢獄と呼ばれる檻だ。
廃墟の町の奥の方まで探してみると、そこには収容所なる場所があった。
さらに中へ進んだ先にあったもの――それは、
鍵のかかっていない、いくつもの牢獄だった。
「全部もぬけの部屋だな」
「おそらくですけれど、ザームの兵士に懲罰を与える部屋なのでは?」
「自国の兵士に? 何でまた……」
使えない兵士、失敗した兵士に対してだろうか。
「……ザームには王がいませんわ。そうなると厳しさを与える存在が必要だったはず。廃墟の町が崩れてないところを見ると、そういった立場の人間を置いていたのではありませんか?」
廃墟になる前までここで誰かが管理していたのか……。
あり得ない話じゃないな。
それはともかく、どこかにある地下への入口を探さないと。
「イスティさま! 誰かいるなの!!」
「! どこだ、フィーサ?」
「すぐ、すぐ近くにいるなの!」
そうかと思えば、フィーサが早々に反応する。
シーニャとルティはここから離れた牢獄で遊んでいるが……。
フィーサは剣のままだが、ミルシェの表情が一気に硬くなっている。
おれからは特に何の気配も感じないが。
「――うかつでしたわ。牢獄エリアだからと気を張っていなかったとはいえ……」
「ミルシェ? どうした?」
「……いますわ。気配を全く感じさせずに現れましたわ」
おれとミルシェがいる場所は牢獄エリアでも奥の方になる。
シーニャとルティは手前側を出入りしていて、おれからは見えない。
ミルシェの顔が硬直状態となり、その視線の先……おれの背後にいるのは――
「全く気付かれずにいるのも寂しいことね……うふふふふふ。今の気持ちはいかが? アック・イスティ?」
直接関わったことがあるのは多くない。
だがこの声と気配、そしておれを挑発する存在……。
「お前がイルジナだな?」
後ろを振り向くとそこにいたのは、両脇に影を従えたイルジナという女の姿があった。
間近で探る感じではすでに人間では無さそうだが。
「そう、薬師イルジナという女……と言っておきますわ。砂地の冒険者砦以来ですわね……」
「わざわざ姿を見せるなんて、随分余裕じゃないか。今すぐおれを消しに来たのか?」
おれはともかく、ミルシェが動けないのはこいつのせいか。
影で何かしてるな。
「うふふふふふふ……まさか。それはあまりにつまらない。わたくしも魔王と似た遊びをしたくて現れてやったというのに。今すぐ消すなど、あまりにつまらないというもの……」
間近で見ても人間の女そのものだ。
しかし幻影を作り出したのがこいつだとすれば、あの影とは別の存在ということになる。
「魔王の遊びだと?」
「お忘れ? 魔王スフィーダと散々戯れをしていたのに、わたくしとは遊んでもくださらないなんて、アック・イスティもつまらない存在なのかしらね?」
「どうせお前が用意した者と戦うだけだろ?」
「うふふふふふ……幻影廃墟は楽しめたでしょう?」
やはりここはこいつの仕業なわけだ。
挑発の為だけに現れたとしても、ここでやるべきか?
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