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第二十三章:全ての始まり

513.精霊竜アヴィオル

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「アックさま。ルティのことばかりではなく、上空に待機させてる彼女のこともお忘れですか?」
「へ? 上空に……?」

 ルティが召喚か何かする話かと思ったが違うのか。
 上空に待機――上空?

「ほぇ? ミルシェさん、さっきから何のお話をされてるんですか~?」
「だから……、赤錆の扉を開けるにはあなたの力が必要って話ですわ! もう!」
「ほえぇぇぇ~」

 あぁそうか、あの娘のことか。そういや同行させてたような……。
 近くにいないから気にしてなかったが、あの娘も戦力になるんだった。

 ミルシェの言うように、確かに魔法以外の炎を使うには彼女が適任だ。

「よし、ルティ! アヴィオルをここに呼んでくれ!」

 ミルシェが呆れたように頷いてるってことは、正解だったようだな。

「アヴィちゃんをですか? え、どうやって……」
「どうって、精霊竜と契約したのはルティだろ? 呼べばすぐにでも来てくれると思うが……」

 いまいち抜けてるな。
 召喚と違って、ルティの場合は直に契約してるから何とでもなりそうなのに。

「ウニャ? ドワーフが何を呼ぶのだ?」
「シーニャはあまり面識が無かったと思うが、精霊竜アヴィオルのことだぞ」
「ふんふん? 真っ赤な竜のことで合ってるのだ?」
「ああ。その竜のことだぞ」

 図体的にここに呼ぶのは厳しそうだが、その辺は彼女が考えて来るはずだ。

「じゃあ熱くなってしまうのだ?」
「そうなるな。熱いのはやっぱり苦手か?」
「苦手なのだ。でもアックに抱きしめられていれば大丈夫なのだ!」

 やはり覚醒してからのシーニャはかなり近くなった気がする。
 
「……で、ミルシェ。ルティは精霊竜を呼べそうなのか?」
「それはこの子次第ですわ」

 叫んで呼べるかもしれないが、そういえばどうやって呼べるんだろうか。

「むーむむむむむむ……」

 まさか呼べないのか?
 おれでも呼べるなら無理やりにでも……。

「あっ!? 思い出しましたっ! 今すぐに呼びますですっ! では――始めさせて頂きます」

 おっ?
 そうかと思えば、急にルティの雰囲気が真面目に変わったか?

「――むーむむむ……契約者ルティシア・テクスの求めに応じ、赤い髪の下に~……この続きって何でしたっけ?」
「いや、おれに聞かれてもな……」

 雰囲気を変えたと思ったら全然だった。
 呼べないなら呼べないと言ってくれよ……。それならそれでおれが久しぶりに召喚するのに。

「はいは~い! ルティちゃん、呼んだ~?」

 そうかと思えば、いつの間にかルティの傍らに竜人娘アヴィオルが立っていた。
 彼女も人化出来ることだし、さすがに竜の姿じゃなかったか。

「あっ、アヴィちゃんっ!? あれれ? えぇ?」
「どうしたの?」
「どうして呼んでることが分かったの~?」
「赤い髪! ルティちゃんの深紅の髪が結びとなってるんだよ~! 忘れちゃったの?」
「ああぁぁ~! そうでしたぁ~」

 随分と手間がかかった気がするが……アヴィオルが来たならすぐに赤錆の扉は開くはず。
 炎竜だしドラゴンブレスでも吐いてもらえれば……。

「アック様が私に何かして欲しいことがあるんだ~? そっか、分かった~!」

 ルティとのやり取りですぐに理解したのか、アヴィオルがおれの前にやって来た。
 問題はこの狭い通路で竜になるかどうかだ。

「ルティちゃんに聞きました~っ! 私に出来ることって何です~?」
「……赤錆の扉がそこに見えるだろ? その扉は魔法属性だと開かないんだ。だから、精霊竜の君なら開けられるはずだ。ブレスか何かで――」
「ブレス? ごめんね~こんな狭いところで竜化出来ないよ~」
「ええ? その姿でブレスは?」

 人化の状態で口から炎を吐けとか、おれも大概無茶なことを言ってるな。

「ん~とね、そこの扉は私なら開けられると思うよ。ブレスなんか吐かなくてもね!」
「それは精霊竜だからか?」
「うんうんっ! それじゃあ、開けま~す!」

 難しく考えすぎたか……。
 そう考えると、そもそもこの先にいるアクセリナはどうやって先に進んでいるんだろうな。

「あら? あっさりでしたわね……」
「さすがアヴィちゃんですっ!」

 そうこうしていたら、赤錆の扉はいとも簡単に開いていた。
 ザヴィ遺跡に似たギミックが続くとすれば、アヴィオルにはこのままいてもらう必要があるか。

「難しそうな顔をしてどうしたのだ?」
「いや、熱くならなくて良かったな、シーニャ」
「……ウニャ、熱くならなくてもアックにくっついてもいいのだ?」
「もちろんいいぞ」

 フィーサが眠ったままなせいか、シーニャが甘えたがりになってるな。
 もしくは、そうすることで力が湧き出るということにも繋がるのか……。
 
「シーニャ、アックの役に立つ! ウニャッ」
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