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第二十二章:果ての王

491.ルティシアの強化特訓 2

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「……これをどこで拾って来た?」

 母様かあさまに言われたとおり、父様とうさまは火口付近で仕事をしていました。母様が呼んでることを伝えると、何も言わずにお家へ直行です。

 そのまま母様が待つお部屋で魔石のようなものを見せたら、いつもは表情を変えない父様がちょっと焦っているように見えました。何て言ったらいいか分からないけど、ここは正直に伝えます。

「ええとですね~大昔のレイウルムという地下の~」
「ふん、お前のお気に入りのアックが連れて行ったのか? ルティシア」
「アック様じゃなくてですね、ええとええと……」

 アック様は父様に認められているはずなのですが、何だかあまり機嫌が良くないようです。
 そんなわたしの代わりに、

「アックさんじゃないですよ、あなた。この子をここまで連れて来た異人の方でしたよ。それで、それは何なの?」
「これはドワーフの印章だ。今は誰も使ってないもんだ」

 むむむ、魔石だと思って拾って来たのに印章だったなんて……印章って何でしょうか?

「ほえ?」
「ルティシア。昔のドワーフは違う所に暮らすドワーフの町との行き気が出来なかった。でも印章があれば自由に通行が出来るようになった。だから結構貴重な物だった」
「へぇぇ~そうだったのね」
「ほえぇ……貴重な物を拾って来ちゃったんだ」

 貴重な物なのは良かったけど、魔石だとばかり思っていたからこれは困ったことになりました。魔石じゃないならわたしの強化訓練はどうなるんでしょう……。

「……この印章はあの村が必要としている。そこに行け。きっとお前が望むものを手に入れられるはずだ。後のことはルシナに聞くがいい……」

 そう言うと、父様は火口の作業場へと戻って行きました。どういうことか分からないけど、ロキュンテでは特訓出来ないみたいです。

「お母様。あの村ってどの村ですかっ?」
「村といったらネーヴェル村しかないけど、私はここを離れられないし……アックさんとは行けないの?」
「あぅぅ~アック様がどこにいるのかも分からなくて~……」

 それが分かればすぐにでも連れて行ってくれそうなのに、本当にどこにいるんだろ。

「あら、そうなの? アックさんじゃなくても同等の力を持つ者なら許してくれると思うんだけど……あなたのお友達は?」
「お友達? ええと~ミルシェさんです!」

 友達とは違う気がするけど、すごく優しくて頼りになるお姉さん的存在だからきっとお友達です。

「……それならそのミルシェさんをここに呼んで、2人でネーヴェル村に向かいなさい。あの村は2人以上じゃないと入れないから」
「ええ!? ど、どうやって?」

 アック様どころかミルシェさんもどこにいるのか分からないのに。

「樽の中に入って、お友達の名前を唱えてみなさい。そうすればきっと伝わるわ」

 樽の中って、そんな変な効果があったの?
 それならアック様を今すぐ呼びたい。

「伝わったら来てくれるの?」
「そうしたら、さっきの人が連れて来てくれるかもしれないわね」
「ウルティモさんが~? アック様を呼んでみるのは駄目?」
「大変な時かもしれないし、アックさんは呼ばない方がいいわ。それに……ルティシアを見つけて、きっと迎えに来てくれるわ! あなたの旦那様ですもの」

 母様はそんなことを言ってるけど……。
 アック様とわたしは、そんな関係ということでいいのでしょうか。

「ほえぇぇ……じゃ、じゃあ早速呼んでみるです!」

 お家に大きな樽があることは知っていました。それでも一度も使うことなく、大事そうにしているだけで何に使うのかさえも分からなかったけど、呼び出しが出来る樽だなんて驚きです。

「ミルシェさーん、ミルシェさ~ん……わたしはロキュンテにいますよぉぉぉ!」

 ◆

 アックと魔王スフィーダが戦いをしていた頃、イデアベルクに残ったミルシェは見回りを続けながらアックのいない部屋で休んでいた。

 アックの部屋には他に、シーニャ、フィーサの姿が。

「はぁぁ~暇なの。魔王と散歩に行くだなんて、イスティさまは本当にお人好し過ぎるなの」
「ウニャ? 散歩なのだ? 戦いじゃないのだ?」
「どうなるかは分からないけれど、激しい散歩になるのは決まりきっているなの」
「ふんふんふん? シーニャも行けばよかったのだ」

 アックの部屋に集まっているとはいえ、やはりシーニャとフィーサとは距離を置き、ミルシェだけが部屋の片隅にいる状況にあった。

 そんな状況の中、ミルシェは遠くの方で妙に人懐こい声が聞こえて来たような感じを受けた。それがどこなのか分からないものの、声に神経を研ぎ澄ましていた。

 声が聞こえる方に向かって部屋の外に出るとそこにいたのは、

「おぉ、ミルシェ殿。ご無事だったか! アックくんも無事かね?」
「――! あなた、あの子の行方を?」
「ルティシアさんならば今しがた――」
「あたしをそこに連れて行きなさい! 今すぐに!」

 戻って来たばかりのウルティモに詰め寄り、ミルシェはそのまますぐに転移することに。

「ウニャッ!? ミルシェが消えたのだ!! ど、どこに消えたのだ?」
「わ、分からないなの……いつの間に消える技を覚えたなの!?」
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