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第二十二章:果ての王
487.イデアベルクと永久強化 3
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自分だけで強化することを考えず魔王であるスフィーダに期待した結果、見事に逃げられた。その状況にミルシェとフィーサ、シーニャから怒られ何となく退散。
気分転換を兼ねて、ヒューノストを奪還しようとサンフィアを連れて来てみたが……。
「……おいアック。この光景はどういうことなのか説明しろ!!」
「どうって……」
氷雪都市ヒューノストは、ヒューノストゲートを抜け、トンネルを抜ければすぐの所にある。だが、おれたちは見たことも無い光景に唖然とした。
氷雪都市はその名のとおり、雪に覆われた都市。イデアベルクに暮らすようになった多くの人たちが、今まで暮らしていた町でもある。
しかし目の前に見えているのは、雪はおろか町だった形跡の無い焦土と化した大地。ひと気どころか獣の姿すらも確認出来ない状態だ。
イデアベルクからヒューノストへの最初のトンネルだけが残っているだけで、他には何も残っていない。
「ここは貴様の兄とやらが守っていた氷雪都市と聞いた。しかし全く雪が無いではないか!」
「かつてはそうだったが、しかしこんなひどい光景じゃなかった……」
「ザーム共和国という敵の仕業か?」
「……いや、ここまで出来る強さの奴はいないはずだが」
驚愕としか言いようがない光景だ。雪山が近くにそびえ、常に雪が止まない都市として長く存在していたのに、ここには焼け焦げた大地しか広がっていない。
まさか――
「遅かったじゃないか、アック・イスティ。どうだい、この光景は?」
魔王の仕業としか考えられなかったが、やはりそうだった。
「人間を守る為の強化はお断りだけど、根絶やしにするのは喜んで協力しようじゃないか!」
「ザームの連中がいたはずだが?」
「ああ、ほんの少しだけいたね。生意気にも数百くらいの傭兵と魔術師が抵抗して来たけど、おそろしく弱かったよ! ハハハハハ!」
こいつ……こんな真似が出来る奴がおれに従うわけ無いと思っていたが……。
「イデアベルクが間近にあることを知りながら都市ごと滅ぼしただと? 貴様はあまりに危険すぎる。おいアック! 貴様の力で魔王を今すぐ――っぐぐぐ……」
毎度のことだが、サンフィアには損な役回りをさせてしまってるな。しかし彼女の言うとおりスフィーダは危険すぎる。
「エルフごときが僕に敵意を向けるとは。アック・イスティ。困るね、きちんとしつけをしてもらわないと面倒じゃないか!」
「彼女を痛い目をあわせるのはよせ! スフィーダ。お前がやるつもりなら、ここで滅ぼしてもいいんだぞ?」
味方もしくは、協力という形で同行するかと思っていた。こんな力を持っていながらおれについて来たのも疑問だったうえ、いとも簡単にザームの連中を滅ぼすのは危険過ぎる。こいつの真意を確かめなければ。
「……うん? 何をそんなに怒っている? イデアベルクの脅威となる人間どもを消してあげただけでなく、君の強化の手助けまでしたというのに」
「強化? 都市を滅ぼし環境まで変えて何を言っている?」
すでに全ての住人がイデアベルクに移り住んでいるとはいえ、ザームを壊滅させた後はここに戻すことも出来たはず。それなのに全てを焼いておきながら、この期に及んでおれの強化のことを言うのか。
「雪山のことならすぐに戻そう。戻したら氷属性を使った永久強化の一つを教えてあげるよ。あぁ、その前にエルフをイデアベルクに戻した方がエルフの為になる。……それともアック・イスティ。僕をここで抹殺するかい?」
魔王の力で勇者パーティーを倒せないと言っていたくせに、それ以外はあっさり消せるのか。氷属性の強化を教わるにしても、こいつにはここで示しを付けておく必要があるな。
「サンフィアを解放しろ! 彼女をイデアベルクに戻したら――」
「――そう来ると思っていたよ、アック・イスティ。では思う存分にやり合おうじゃないか! クククッ!」
魔王から強化を聞くのはいい――が、やり方が気に入らない。
シーニャはともかく、ルティとミルシェ、フィーサのことに対し謝罪させてやる……。
そういう意味では、焼けた大地だけになったのは好都合か。
気分転換を兼ねて、ヒューノストを奪還しようとサンフィアを連れて来てみたが……。
「……おいアック。この光景はどういうことなのか説明しろ!!」
「どうって……」
氷雪都市ヒューノストは、ヒューノストゲートを抜け、トンネルを抜ければすぐの所にある。だが、おれたちは見たことも無い光景に唖然とした。
氷雪都市はその名のとおり、雪に覆われた都市。イデアベルクに暮らすようになった多くの人たちが、今まで暮らしていた町でもある。
しかし目の前に見えているのは、雪はおろか町だった形跡の無い焦土と化した大地。ひと気どころか獣の姿すらも確認出来ない状態だ。
イデアベルクからヒューノストへの最初のトンネルだけが残っているだけで、他には何も残っていない。
「ここは貴様の兄とやらが守っていた氷雪都市と聞いた。しかし全く雪が無いではないか!」
「かつてはそうだったが、しかしこんなひどい光景じゃなかった……」
「ザーム共和国という敵の仕業か?」
「……いや、ここまで出来る強さの奴はいないはずだが」
驚愕としか言いようがない光景だ。雪山が近くにそびえ、常に雪が止まない都市として長く存在していたのに、ここには焼け焦げた大地しか広がっていない。
まさか――
「遅かったじゃないか、アック・イスティ。どうだい、この光景は?」
魔王の仕業としか考えられなかったが、やはりそうだった。
「人間を守る為の強化はお断りだけど、根絶やしにするのは喜んで協力しようじゃないか!」
「ザームの連中がいたはずだが?」
「ああ、ほんの少しだけいたね。生意気にも数百くらいの傭兵と魔術師が抵抗して来たけど、おそろしく弱かったよ! ハハハハハ!」
こいつ……こんな真似が出来る奴がおれに従うわけ無いと思っていたが……。
「イデアベルクが間近にあることを知りながら都市ごと滅ぼしただと? 貴様はあまりに危険すぎる。おいアック! 貴様の力で魔王を今すぐ――っぐぐぐ……」
毎度のことだが、サンフィアには損な役回りをさせてしまってるな。しかし彼女の言うとおりスフィーダは危険すぎる。
「エルフごときが僕に敵意を向けるとは。アック・イスティ。困るね、きちんとしつけをしてもらわないと面倒じゃないか!」
「彼女を痛い目をあわせるのはよせ! スフィーダ。お前がやるつもりなら、ここで滅ぼしてもいいんだぞ?」
味方もしくは、協力という形で同行するかと思っていた。こんな力を持っていながらおれについて来たのも疑問だったうえ、いとも簡単にザームの連中を滅ぼすのは危険過ぎる。こいつの真意を確かめなければ。
「……うん? 何をそんなに怒っている? イデアベルクの脅威となる人間どもを消してあげただけでなく、君の強化の手助けまでしたというのに」
「強化? 都市を滅ぼし環境まで変えて何を言っている?」
すでに全ての住人がイデアベルクに移り住んでいるとはいえ、ザームを壊滅させた後はここに戻すことも出来たはず。それなのに全てを焼いておきながら、この期に及んでおれの強化のことを言うのか。
「雪山のことならすぐに戻そう。戻したら氷属性を使った永久強化の一つを教えてあげるよ。あぁ、その前にエルフをイデアベルクに戻した方がエルフの為になる。……それともアック・イスティ。僕をここで抹殺するかい?」
魔王の力で勇者パーティーを倒せないと言っていたくせに、それ以外はあっさり消せるのか。氷属性の強化を教わるにしても、こいつにはここで示しを付けておく必要があるな。
「サンフィアを解放しろ! 彼女をイデアベルクに戻したら――」
「――そう来ると思っていたよ、アック・イスティ。では思う存分にやり合おうじゃないか! クククッ!」
魔王から強化を聞くのはいい――が、やり方が気に入らない。
シーニャはともかく、ルティとミルシェ、フィーサのことに対し謝罪させてやる……。
そういう意味では、焼けた大地だけになったのは好都合か。
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