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第二十二章:果ての王
485.イデアベルクと永久強化 1
しおりを挟む「アック。人間とエルフだけになったら毎回こうなってしまうのだ?」
「ん~……」
「シーニャ、もうすぐここを長く空けることになるの、分かってる。でも、また攻められたらどうにもならないことくらい分かるのだ」
イデアベルク国内に影響が及んでいればさすがにシーニャも分かるよな……。ちょっとした防御魔法はかけていたはずなんだが、やはりヒューノストを取られたままにしたのはまずかった。
サンフィアは力はあるけど攻撃重視だし、魔法と物理の防御を長く保てるような精霊は有してない。そうなると強化が出来そうな者はごく一部に限られるんだよな。
そうなると、
「イデアベルク全体に強化をかけるしかないな。今回の遠隔魔法はザームからでなくヒューノストからだろうから、あそこも含めないと……」
「アックなら簡単に出来るのだ! 早くやれば何も問題なんて起きないのだ。ウニャッ」
「……うーん」
強化はともかく全体防御となると、結構な魔力を必要とする。そもそも防御特化魔法をあまり知らなかったりするけど。
そういえばスフィーダが使っていた水属性のアレは、ミルシェが得意としているやつに似てるな。しかし魔王と協力なんてしそうに無いのが問題だ。
こういう時にウルティモがいればな……。
「イスティさま~!」
フィーサだけ戻って来たか。
「ミルシェは一緒じゃないのか? 居住区はどういう状態なんだ?」
シャトンの言葉通りなら、ルティのこぶし亭を含めた居住区は何とも無さそうだが。
「あの女なら人間たちに振る舞って、落ち着かせているなの。あの女はああいうのだけ得意だから、わらわは一緒になんていたくないなの」
ミルシェは色気があるし、何気に人間を相手にするのが得意だから何の不思議も無い。そう考えるとフィーサは完全に攻撃タイプだし、人見知りも激しいし人間とはあまり関わりたくない感じか。
「他の場所は見てないのか?」
「見るだけなら見て来たなの。でもでも、エルフたちの区に魔王がいたから近付きたくなかったなの」
「あぁ~……」
シーニャはともかく、ミルシェとフィーサは魔王に操られてしまっているから無理も無い。今頃サンフィアもスフィーダに気付いて怒っていそうな気も……。
「アック、アック! どうするのだ? 強化をすればいいだけなら、シーニャもアックと一緒にやるのだ! それとも奪還が先なのだ?」
ヒューノストの奪還か。
ザームの奴らがそこそこいたとしてもおれだけの力で奪還は出来るだろうが、強化を完璧なものにすれば奪還しなくても済むはず。
「……強化を優先にする。だからシーニャ。スフィーダを呼んで来てくれないか?」
「ウニャ? あの男を使うのだ?」
「おれだけの知識では足りないだろうから、魔王の考えも聞いてみようかなとね」
「何だかよく分からないけど分かったのだ! シーニャ、呼んで来るのだ~」
フィーサに頼んでも言うことを聞かなかっただろうし、シーニャなら何も問題無いな。
「ふんっだ! イスティさまはあんな魔王なんかを信じているなの?」
「別に信じてるわけじゃないよ。でも奴の妙なスキルや魔法は使えるからね。それともフィーサ。何か他にいい考えが?」
「イスティさまは意地悪なの!! わらわは神族国くらいしか思い浮かばないなの。だからどうにも出来ないなの!」
……だよな。少し意地悪だったか。
まずは魔王スフィーダに聞いてそれから考える。反対されそうだが、ミルシェとサンフィアにも一緒にいてもらって実行するしかないな。
「悪かったよ。それじゃあフィーサ。君は――」
「あの女を引っ張って来るなの。それでいいんでしょ?」
「うん、頼むよ」
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