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第二十二章:果ての王
483.砂地の記憶 ルティ編2
しおりを挟む「ルティシアさん。この頃のドワーフは他のドワーフを知らない。魔王の城にいたダークドワーフを思い出してもらいたい。彼らがまさにそうなのだよ」
――なんてことを、ウルティモさんに聞かされて地下に来ました。まさかあのダークドワーフさんたちがまだ生き生きとしている時だなんて何とも言えません。
彼らはわたしが姿を見せると、何も言わずに近寄って来ました。
あわわわ……この感覚はダークドワーフさんたちの時と同じです……。でも特に言葉を発しなくてもいいということみたいなので、イルジナという女性を探すことにします。
この頃の地下都市はまだ家といった立派な作りでも無く、岩を削って穴を掘り、そこに住んでいるようです。ドワーフさんたちは基本的に男の人ばかりで、ドワーフ以外の人間は見当たらないように見えます。
でもウルティモさん曰く、
「薬師イルジナなる女……いや、われにも確固たる自信は無いのだが、ドワーフに紛れて遺跡発掘をしていたのは確かなのだよ。少なくともわれが見た記憶では……」
「ええ? じゃあ、いないかもしれないんですか?」
「うむ……もしいなければ早急にわれの名を念じてもらいたい。そうすればすぐに戻すことが出来よう。しかしイルジナを見た場合は、どういう姿だったのかを記憶して欲しい」
ウルティモさんも自信が無いことがあるんだなぁと、何だか安心しました。
場所が変わって、ここはアック様たちと来たことがある狭くて細長い通路です。
どこもかしこも作業をするドワーフさんたちでいっぱいで、わたしのことなんか気にもしていないみたい。そんなドワーフだらけの作業路に、一際目立つ発光体のような存在を見つけました。
あれは人? むむむ、人のようでそうでないような?
全身から光を発しているにしても不安定のような気もするし、もしかして人のように見えて……。
こ、これは戻った方が良さそう。
「……クククッ。干渉など無駄なこと。すでに欲しいものは手に入った。ここに残っている石ごとき、好きなだけ持って行くがいい。死せるドワーフには無用の石……」
「イルジナ・ブフート様。ドワーフの始末はどこでされますか……?」
イルジナ! じゃああの発光体があの薬師の人? それにもう1人というか影のような人が……。
「遺跡を掘らせた後、バラルディアに転移させ、囚われの存在にする。こことバラルディアは遠くも無い……彷徨い、やがて絶え、闇化するだろう……」
「生きたドワーフの始末は……?」
「放っておけ。アレはここのドワーフでは無い。いずれ遭遇する存在だ。ネルヴァ、ドワーフのことを済ませてから戻れ……」
ええ? ま、まさかわたしが見えてるとかじゃないよね?
岩陰に隠れて見ているのに、うむむ……。
あれ? 2人ともいなくなった?
これはチャンスです。レアな魔石を手に入れて、わたしの力を高めるチャンスです。
◆
「ルティシアさん、ご無事で何よりである! して、首尾はいかがか?」
「魔石はばっちりでした! "テクス"と刻まれた石で合ってますか?」
「……ふむ。魔石は問題無い。これを持ってあの場所へ向かえば、ルティシアさんは力を得られるはずである」
「そ、それとですね、あのぅ……イルジナという女性というか発光体というか~いたことはいましたけど、他にもいまして~」
人のようなそうでないような、何とも言えない感じでした。わたしの話を聞いただけで、ウルティモさんは小刻みに頷き、確信を得たみたいです。
「ではルティシアさん。過去より脱し、次に向かう先は魔石に刻まれた名の主に会いに行くとしよう!」
「ええと、それってもしかして~」
「うむ。現ドワーフの町ロキュンテということであるな」
あぁ、やっぱり。
「で、ですよねぇ~ところで、アック様にはいつ会えますですか?」
「帰還した時であろうな」
魔王城に残して来たアック様たちが心配なのに、しばらく再会出来そうに無いなんて。
でもでもわたしが強くなれるなら、耐えるしか無さそうです。
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