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第二十二章:果ての王
481.薬師イルジナと刻印
しおりを挟む――ザーム共和国・魔法練兵場。
「ちぃっ、下段の命中精度が上がらねえ。おいっ! がらくた魔導兵を追加しろ!!」
「い、今すぐに!」
「グズめ! このオレを待たせんじゃねえ!」
◆
アック・イスティが魔王の城にいた頃。
ザーム共和国では侵略に備えた人間たちが訓練に訓練を重ね、その時が来るまで備えを続けていた。
ザーム共和国はかつて存在したシーフェル王国に並ぶ大国で、偉大な賢者によって統制された新興国であった。
しかし賢者が滅んだことで統率者がいなくなり、国として成り立たなくなると思われていたが――
「イルジナ様。魔軍傭兵団、精鋭魔導師団、義勇兵団、樹人族……それから改造魔導兵が揃いつつあります。いつ頃始められますか?」
賢者テミド・ザームを崇め、どこからともなく現れた薬師イルジナ。彼女によってザーム共和国は、見えない強国として台頭しつつあった。
「改造魔導兵? あぁ、イデアベルクから拾って来たがらくたのことか。それは使えるのか?」
「は。現時点での使い道は、精鋭魔導師団の命中率を高めるのみでございますが……成果が出次第、火力を高められるかと思います」
「いいわ、そのまま自由に使えばいい」
「御意」
薬師イルジナはイデアベルクに侵略しようと決めてから、着々と戦力を整えていた。これまでそこそこの戦力で戦闘に出しつつも全てやられてしまっただけに、念には念を入れていたのである。
「ネルヴァ」
「はい、イルジナ様」
「あの町で捕虜にした雑魚に刻印したら、強くなる見込みは?」
「おそれながら、あの連中はレイウルムの盗賊の中でも最弱であり、刻印を施したところで何の役にも立たないかと……」
――ふん、レイウルムの盗賊ごとき人間は所詮雑魚。連れて来たのが単なる雑魚では、戦力にもなりはしない……か。
「義勇兵団の中にでも入れておけばいいわ。ほとほと甘いイデアベルクの連中なら、盗賊の者だと分かれば戦うことをやめて話を始めるかもしれない。油断を作る存在として使って構わないわ」
「承知しました。では、盗賊以外の兵団に使用する刻印は予定通りの呪力で……」
「あなたの好きなように――」
アック・イスティなるガチャ使いがどんな化け物だろうと、わたくしの方がそれを上回る。それを知らずにここへ来るとしたら、愚か者として認めてあげなければね。
テミド様を甦らせる為にも、アック・イスティ……お前の魂はわたくしが頂いて差し上げるわ。
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