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第二十二章:果ての王

469.最愛の約束

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 大所帯パーティーで魔王の城に行く。
 その前に、おれの部屋を占領して寝ているルティをどうにかしなければならない。

 それなのに、

「お~い、ルティ! 起きろ、起きてくれ~」
「スースースー……食べられませぇん……スースー」
「起きてるのか? それとも夢の中……ルティ! ルティシア~!!」

 おれのベッドで気持ちよさそうに寝ていて、全く起きる気配が無い。
 どんなに全身を揺さぶっても起きそうな感じがしないわけだが。

 シーツを燃やさない程度に炎属性で室温を上げるか、あるいは――

「おい、ルティ――うっ!?」

 ぎりぎりまで近付き、頬でもつねってやろう。
 そう思っていたら、

「うぐぐぐぐ……な、何て力だ……」
「アック様~ご主人様~わたしの、わたしのぉぉぉ~グーグー……」
「ほ、本当に起きてなくて寝惚けての不意打ちか? は、離せ、離してくれ~!!」
「うーんうーん……わたしのアック様なんですから、離しませんよぉぉ」

 完全なる油断だ。
 ここまで密着状態となっていると、半端な力ではルティの腕から脱することは不可能に近い。

 たとえ誰かに助けを求めたとしても羽交い締めのルティをどうすれば……。

「くっ、ぬぅぅっ……ルティシア! ルティ~!!」

 これは――久しぶりに落とされる感覚だ。
 敵からの攻撃は効かないのに、まさかルティでこうなるとは。

 ◇◇

 辛うじて意識は落ちなかったがおれは魂が半分ほど抜けそうになった。精一杯首を動かしてルティの正面に位置を変えたが、目覚めたてのルティと目が合っていた。

「……気付いてくれたか。早くおれを解放してくれ……」
「アック様……」
「…………」

 何となく抵抗しないままルティの顔が間近に迫り――
 次の瞬間には、彼女の柔らかい唇の感触が重なっていた。

 ルティの力強い両腕は力を失わせ、そのままおれを包み込むように抱きしめてくる。
 薄着で寝ていたということもあって、流されるままに自由になった手を彼女の腰になぞっていく。

 燃えるような赤い髪、意外にほっそりとした曲線美から来る上半身を軽く揺すると、気持ちのいい二つの重さを感じてしまう。

 おれのベッドで眠りおれに起こされるのを待っていた……とは考えにくいがそういうことにしておく。
 
「アック様、わたしをお願いします……です。アック様、好きです大好きなのです」
「……おれもルティのことが――」

 ◇◇

「え、えへへ……とうとうです! アック様との約束がとうとうですよぉぉ」
「……だな」
「えーと、えと、わ、わたし、顔を洗って来ますです」

 そうだろうなという予感はあった。

 イデアベルクに戻ったら約束でもあったし、ルティとは約束した出会いでもあったから流れのままに。

 羽交い締めにされてからのことだっただけにどうなるか心配だったけど。
 だからといって、すぐにどうこうなるわけじゃない。

 何となく体の力が抜けたような、今はそんな感じだ。
 魔王の城に行く前に何か声をかけようと思っていたし、そういう意味でも良かったのかもしれない。

「ウニャ!? アック! アックは裸で寝てたのだ?」

 少し気が抜けていたところにまさかのシーニャが。
 そういえば普段はシーニャと一緒に寝ていたな。裸じゃないけど。

「体が熱いっていうか、そんな感じだったからな」
「ふんふん? シーニャ、アックの体を冷やせないのだ。でもしばらくくっついておくのだ。そうすれば冷えて来るはずなのだ!」
「あ、ありがとうな」

 装備を外して身軽になっているシーニャにくっつかれると、さすがにむずがゆい。
 それでもモフっとした感触には違いないが。

「……シーニャ、アックのシーニャ。ずっと一緒にいるのだ! ウニャ」

 もしやルティとのことに気付いてるのか?
 そうだとしても、虎娘のシーニャはもうおれの家族みたいなものだよな。

「シーニャはおれの家族だ。だからずっと一緒だぞ」
「フニャウゥ……ムニャ」

 ルティとは家族というより、最愛のパートナーって感じだろうか。この先どうなるか分からないけど、多分そんな風になっていくはず。

「あれぇ? シーニャがどうしてここに寝てるんですかぁぁ!」

 しばらくしてルティが部屋に戻って来た。
 少し顔を赤らめて恥ずかしそうにしていたが、シーニャがいることでいつものルティになった。

「シーニャとはいつもここで一緒に寝てるからな。寝てるだけだぞ?」

 ルティはここじゃない所で寝てるせいか、知らなかったって顔だな。
 それでもすぐに落ち着いて、

「アック様! 今後ともぜひぜひ、わたしをよろしくお願いしますですっ!」
「もちろんだ」
「ではではっ、気合いを入れて特製料理を作って来ますですっ!」
「魔王の城に行く前だからほどほどに頼む……」
「お話はすでに聞いてますです! お任せ下さいっ」

 豪快過ぎる料理は不安すぎるが、ある意味覚悟を持って向かうことが出来そうだ。
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