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第二十二章:果ての王

464.公国の変化 1

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「――……んん~」

 シンザ帝国で移動魔法を使用しイデアベルクに帰って来た。確実に帰って来たと分かったのはエルフの誰かに出迎えられ、それぞれ各自で移動したからだ。

 おれは自分の寝室まで行き、ベッドにダイブしてからの記憶が飛んでいる。
 ずっと戦いの連続で落ち着いて眠ることがなかったし、多分寝不足だったからだな。

「……ウニャウニャ……スースー」
「――られませぇん~……お代わりいただきますよぉぉぉ……」

 そして恐らく同じベッドに一緒に寝ている子は、シーニャとルティだと思われる。
 シーニャはともかく、ルティはこぶし亭で寝泊まりしてるはずなのに何でここにいるのか。

 さらに困ったのが、おれの全身がずぶずぶと下の方に沈んでいる問題だ。

 ふかふかのもふもふベッドというほどでもないベッドのはずなのに、まるでスライムに包み込まれるような妙な感覚が進行中だったりする。

「くっ、駄目か」

 もがけばもがくほど、沈んでいく……そんな状態だ。体は何ともなくどちらかというと、軽くなって来たような感じを受けている。

 両手を動かすと何度も弾みで押し返されている感覚で、柔らかいものに受け入れられているようなそんな感じが。気持ち良くなったことでおれはそのまま身を委ね、深い睡眠状態となった。

「ふふ。あたしの体に包まれることで、治癒効果が高まりますわ。これくらいは許してね、ルティ……」

 ◇

 どれくらい眠っていたか分からないが、ようやく目覚めることが出来た。
 状態を起こし左右を確認すると、シーニャの姿は無くルティだけがぐっすりと熟睡している。

「ル――」
「スースースー……」

 起こそうと思ったが、今すぐどこかへ行くでも無いのでこのまま寝かせておく。
 そのうち目覚めるだろ。

 部屋を出て外に向かうと、覚えていたはずの光景がすっかり様変わりしていた。
 
 居住区は一部崩れた建物が残っていたはず。
 それなのに、今はその面影も無く綺麗な外観に変わっているなんて……。

「貴様! アック!! ようやく起きたか。妻である我に何か言うことは無いのか?」
「言うの忘れてたな。ただいま、サンフィア」
「それだけか?」

 何か別の答えを求めてるようだけどさっぱりだな。
 相変わらずの姿で安心したけど。

「他に何かあった? あ、君の魔石を返さないとだっけ」
「ふん。それは貴様の魔石だ。我だと思ってそのまま持っておけ! 肌身離さず、我を常に感じているだけで我は満足だ。いいな、約束したぞ! ふんっ」
「ええ?」

 サンフィアは振り返ることなく、どこかに歩いて行ってしまった。
 
 素直じゃないよな本当に。
 居住区の変化に驚いてばかりもいられないし、まずはこぶし亭に行ってみるか。

「イスティさま~! どこ行くの?」

 移動しようとすると、どこからか少女姿のフィーサが姿を見せた。
 一時はシーニャの剣になると言い出して機嫌を損ねていたものの、機嫌を回復したみたいだ。

「決めてないけど、とりあえずこぶし亭に行こうかなと」
「小娘のお店に~?」
「まぁ、ルティはいないだろうけどな。フィーサ、調子はどう?」
「悔しいけど、あの女……ミルシェのおかげで調子がいいなの。少しだけ見直したなの」

 フィーサとミルシェは長きにわたって仲が最悪だった。
 それがエドラとの戦いで考えが変わるなんて驚きだ。

「それはいいことじゃないか」
「でもでも嫌いなことに変わりは無いなの! わらわはイスティさまとシーニャにしか扱えないもん。それはこれからだって変わらないに決まっているなの!」

 そこは譲れないのか……。

「ま、まぁ、とにかく元気そうで良かったよ」
「……それはそうとイスティさま」
「うん?」
「こぶし亭にみんな集まることになってるなの。だから、すぐに行かずにイデアベルクを見て回ってからにして欲しいなの!」

 見て回るつもりだったが、こぶし亭に行くと何かが始まるような言い方だな。
 
「みんなって?」
「もちろん、知る者なの! そのことでアルビンという騎士が正式に依頼したいと言ってたなの」

 アルビンの依頼といえば、確か弟であるグルートが放置した魔物退治だったか。
 それを退治するとなると、ザーム共和国の問題をどうするかって話になるけど。

「じゃあこぶし亭は後回しにするとして、どこから見て回ろうか」
「森林区に行くなの~! エルフもかなり変わったなの。ぜひぜひそれをイスティさまにも見て欲しいなの~!」
「エルフたちも? よく分からないけど、そこに行こう」
「なのなの!」
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