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第二十一章:途切れぬ戦い
444.亡霊の呪縛:スフィーダパート
しおりを挟む「ところでグルートさま。あの男は始末なさらないのです?」
「ああ、心配いらないよ。あの縄はもがけばもがくほど、縛りつける呪術がかかっている。エドラが心配することはないさ」
「あぁぁ、グルートさまっ……!」
「…………ふっ」
勇者グルートに化けてエドラの前に姿を見せただけで、こうも簡単に自分を保とうとするとは驚きだ。
◇
――かつての聖女エドラは、とある海底遺跡の壁に埋まっていた。
アック・イスティの呪い返しは見事なもので、壁に封印されたエドラはもはや生気も無く壁と化していた。
魔法で助けようとするも、中々手強く諦めかけた。
だが、微かに残っていた心の奥を覗き僕は想いが強いとされていたグルートなる男に化けた。
たったそれだけで精神を取り戻し、言葉を話せるようになったのは執念深さが功を奏したといったところだろう。
「そう思わないかい? リエンス王子?」
「……うっ、うぅぅ……エドラ様をどうするつもりなんだ? 近くにアックさんが来ているのに、どうしてこんなことが出来るんだ?」
「アック・イスティの敵となる者は使う。使える者は何度でもね。君こそ、廃村から出てエドラを追いかけて来るなんて、随分とご執心じゃないのかい?」
「くぅっ、こ、こんな……こんな目に遭うなら彼について行くべきだった……」
リエンス王子に脅威など無かったが、エドラを助けようと遺跡の近くに来ていたのは幸運だった。使えそうな者は使う。勇気を出して外に出て来たのは失敗だったな。
廃村に身を潜めていればよかったものを――
「お、お前が、グルート家を荒らしていた魔物だったんだな……?」
「魔物だなんて、失礼だなぁ。僕は道化師だよ?」
「道化師!? ……そ、そんなバカな。道化師の国はすでに滅んだはずなのに……」
「あの騎士、アルビン・ベッツもいい所まで近付いて来てたけど、アック・イスティに頼り続けていたのが仇となったな。なぁに、帝国は君のような最弱な王子をどうこうしようと思わないから、安心していいよ」
「…………うぅ」
◇◇
ザーム共和国によって、シーフェル王国はすでに滅亡していた。生き残っていたシーフェル王国の第一王女、フェニクス・シーフェルはかろうじて生き長らえていたが……。
エドラと合わず、対立ばかりしていたのを見逃せるはずもない。
それなら王国を作り、そこに置けばいいだけのこと。
エドラに対抗出来る強さの無かった第一王女をけしかけ、合成獣として生きることを決めてくれたのは丁度良かったな。
「グルートさま? どうかなさいまして?」
「いや、何でも無いよ。ふふ、アック・イスティが来るのが楽しみでしかないね」
「ええ、そうでなければ果たせませんもの。こんながらくたな両手剣を奪ったのも本意ではありませんけれど、あの男を追いかけさせる為なら何でもよかったですわ」
「がらくた……か。持ち主の潜在スキルでこうも違うとはね。面白い男だな」
果たして彼はフェニックスとなった第一王女を滅することが出来るか、期待して待つことにしよう。
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