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第二十一章:途切れぬ戦い

441.第一王女との戦い:1

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「でぇぇぇぇい!!」

 ドンッ、とした重い衝撃音が聞こえて来る。
 魔法や武器での攻撃ではなく、拳で直接攻撃した時に生じる鈍い音だ。

「ルティ~! その調子だわ! 間髪入れずに叩きのめしてもいいわよ」
「お任せ下さいっっ!!」

 激しい音にかき消させながらも、ミルシェの声援がルティに向かって投げられている。
 どうやら戦っているのはルティだけのようだ。

「ウニャ、アック! ドワーフが1人だけで戦っているのだ。シーニャも攻撃したいのだ!」
「ミルシェだけ応援してるってことは、ルティに任せたのか。戦いたいのは分かるが、少し待っててくれ」
「ウニャゥ」

 ルティの連続した重い一撃で、床が所々でひび割れしている。ルティの攻撃音だけが響いているが、第一王女からは反撃を受けていないのか。

 ルティと第一王女がいる辺りには、若干だが空間の歪みのようなものが見えている。
 スフィーダの仕業によるものか、あるいは――

「ミルシェ! 悪い、待たせた!」
「アックさま? それに虎娘も! やはりそちらの方が楽でしたのね」
「ま、まぁな。それより、ルティは大丈夫なのか? 一方的に攻撃してるみたいだけど……」

 体力がある限りルティの連続攻撃は止まりそうにない。
 しかし攻撃による衝撃でほこりは上がっているが、手ごたえを感じているかは微妙だ。

「見ての通りですわ。あの子の拳の痛さは出会った頃に経験済みですけれど、その頃より比べ物にならないくらいの破壊力がありますわね。シーフェル第一王女が勝てる相手ではありませんわ!」

 拳の破壊力は確かにある。それでも敵が全く動いて無いのは不気味だ。

「ウニャ、モクモクモク……ドワーフの姿しか見えないのだ。アック、何とかして欲しいのだ!」
「あぁ、土埃だな。あいつ、ちゃんと相手が見えてるのか?」

 スフィーダの奴は第一王女のことをショーが始まると言っていた。
 そしてその為に何かを施したとも。まさか今の状態は……。

「ルティ!! 今すぐ攻撃をやめて、おれの元に戻れ!」

 嫌な予感がする。ルティの破壊力で連続攻撃と聞けば、確かに調子よくいってるように思ってしまう。
 だが、あまりに静かすぎる。

「ほぇっ!? アック様~! ルティの攻撃がもの凄く通じてますです!! どおぉぉぉぉ!」

 ドゴッ、ドンッ。といった激しい音が続いて鳴り響く。

 あの様子だと興奮状態が続いていておれの言葉が聞こえてないな。そうかといって、連続攻撃してるルティに割って入るのはあまりに危険すぎるし、どうしたものか。

「アックさま、何か気になることでも?」

 ミルシェには分からないのか?
 彼女が応援だけに回って、一切動かないのも変ではあるが。

「……ルティの攻撃が調子いいのは見て分かる。でも、おかしいと思わないか?」
「おかしいのだ!! 敵から何も反撃が来てないのだ。ドワーフだけ攻撃出来てるのは変なのだ!」

 シーニャはとっくに気付いていたか。
 そうなるとここの歪みが何か関係している感じだろうな。

「え? あたしはご覧の通り、あの子に任せるしか無いのですけれど、反撃が出来ないくらいの攻撃なら何もおかしくはないのでは?」

 よくよく見るとミルシェの全身、特に額からは汗が流れている。

 エドラの細胞を持つミルシェからすれば、第一王女を前にしただけで立ちすくんでしまう感じだろうか。それとも別の何かが原因か?

「ウニャニャ? 年増の汗がすごいのだ!!」
「お願いだから名前で呼んで欲しいのだけれど……って、あっ! アックさま、あの子が!」
「体力を使い果たしたか」

 ルティは連続攻撃をやめ、息を激しく切らせながらおれの所に戻って来る。
 手ごたえを感じていたかはともかく、やり切った感じか。

「ゼゼーハハー、ゼェェェ……ハァハァ。はひぃ~」

 膝に手を付いて大きく息を吐いているが、それくらい消耗をしたようだ。
 
 第一王女の辺りは土埃が舞っていて視界が悪いままだが、ルティが離れても第一王女からは何も反応が無いように思える。

「アック、アック! 今度はシーニャがやるのだ!!」
「待てっ、シーニャ! まずは敵の姿がきちんと見えるまで待機だ!」
「分かったのだ」

 ふらふらとルティが戻って来た。
 ミルシェがすぐに近寄り、ルティに水属性による回復魔法をかけている。

 話せない状態でも無いので、ルティに聞いてみることにした。

「ルティ。手ごたえを感じたか?」
「はぇぇ……何とも言えませぇん~すごく柔らかくて、何と言いますか~硬さは感じなくてですね……。しかもわたししか攻撃してなくて」

 硬さは無くてスカスカな感じか。
 しかも相手からの反撃は全く無かったとすると――

「アック!! 見えて来たのだ! ウニャ? アレは何なのだ?」

 真っ先に気付いたシーニャに続いて、第一王女が立っていた辺りに目をやった。
 すると、そこにはまるで虫のさなぎのような塊があった……。
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