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第二十一章:途切れぬ戦い
439.第一王女との対峙 2
しおりを挟む「アックさまっ、上からですわっ!!」
「――数は?」
「4、50人くらいです。アックさまと虎娘は上からの敵を!」
数が出て来るとは思っていたが、50人となると手間だな。シーニャは奴らが降って来た時点で跳んで襲い掛かっていたが。
第一王女はミルシェとルティにやらせておくしかない。
◇◇
初めて出会った第一王女、エンプティ・シーフェルなる女性は普通なようで何かが違う、そんな印象を抱いた。
調子よく挨拶をして来たまでは良かった。
だが、不安定な第一王女は一言も発さず、沈黙の対峙をするだけだった。
その状態に痺れを切らしたのか、王城の壁から次々と兵士が姿を見せ始めた。
第一王女の合図でもなく、自主的な動きのように。
見たところ、影でも魔物でも無い普通の兵士のようだ。
第一王女の状態に関係無く、この場は一気に戦闘状態と化した。
「王国侵略の敵め!! くたばれーー!」
――おおおおー!!
上から剣を構えながら威勢よく降って来る兵士。
奴らの狙いは、侵略者の掃討らしい。
生身の兵士相手に力を出すまでも無いが、おれとシーニャがやることにした。
それに、
「アックさま。第一王女の相手は、あたしに任せてもらえませんか?」
「……分かった。油断はしないだろうが、出方を見て動いてくれ」
「承知しましたわ。それから、ルティもお借りしますわ」
「あぁ、頼む」
必然的に戦いやすいパートナーに分かれてしまったが、ルティは上からの奇襲は得意じゃない。そうなるとやはり、シーニャが適している。
――ということで、
「ウガウゥッ!!! アックは下を頼むのだ! ウニャッ」
シーニャは壁から壁を蹴りながら反動をつけて、次々と上から来る兵士を地面に叩き落としている。おれは下に落ちて来た兵士の動きを封じる役割。
封じついでにまともな兵士を捕まえて、話を聞いてみようと思っているが……。
ドンッ、ドンンッ。といった調子で、地面に落とされて来るのでおれが動く必要が無い。
さすがシーニャは動きが違うな。魔法相手だと苦戦必至なのに、対人間相手だとここまで違うとは。
「ひ、ひぃぃっ~~!!」
「ウウゥッ!! アックの邪魔をするななのだ!」
エドラ相手にシーニャが何も出来なかったわけじゃ無い。しかしさすがにシーニャが相手では、兵士からすれば相手が悪かったとしか言いようが無いくらいレベルが違う。
魔物や影と違い、人間相手だと変則的な動きは少ない。それだけにシーニャからすれば物足りなさを感じる相手だろうな。
必殺の爪攻撃は一撃ダメージが大きい。だがそれが必要じゃないくらい、手数が圧倒している。
「ぐはぁっ!! ぐ、こんな強さ……聞いて無い……」
なかなか意識を保った状態で落ちて来なかったが、頑丈な兵士がようやく出て来た。
エドラの命令で動いてるのか、それとも別の何かなのかを聞く必要がある。
「あんたはシーフェル王国の兵士だな?」
「……侵略……者……め。何故王国、を落とす……」
「何? 王国を? おれたちは王国の敵じゃない。何を言っている?」
「我が王国……は、帝国、の男……に――ガハッ……――」
――ちっ、外部から攻撃か?
王国兵は口封じをされたのか、話してる最中に血を吐き絶えていた。
「あ~あ、つまらないね。やはり普通の兵士じゃ話にならないな。そう思うだろう? アックくん」
予想はしてたが、ずっと信用することが出来なかった帝国の道化師。
それが、
「スフィーダ! お前の仕業だな?」
「ご名答。見世物の前に、少しは役立ってもらうつもりだったんだけど、生かしておいた王国兵は何の役にも立たなかったね」
「見世物……? 王国兵の他に何を見せるつもりだ?」
「いやいや、僕の意図しないところで見せてくれるなんて、アック・イスティ。君は僕の気持ちを理解してくれているようだねぇ。もうすぐショーが始まる……2人だけで良かったのかい?」
2人だけで……つまり、ミルシェとルティが対峙している相手。
第一王女が本命か。しかしエドラと違って、聖女でもない王女はそこまで脅威では無いはず。
「ウニャ!! アック、ドワーフたちがいるところが変なのだ! あっちに――ウウゥ!! お前、どこから現れた? お前、アックの敵……!」
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