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第二十一章:途切れぬ戦い
438.第一王女との対峙 1
しおりを挟む「まぁ待て、落ち着け」
フィーサを捕らえられて焦る気持ちは分かる。
しかしフィーサが破壊される心配は無いし、半端な奴に取り扱い出来るほど簡単な剣じゃない。
魔法剣としてのスキルや魔法が使えないのは痛手だが。
少なくとも、フィーサそのものがエドラにやられることは無い。
「アック様、どうするんですかぁ~? 逃げちゃいますよぉぉ」
「壁に消えた時点でここにはもういない。加えて、ここはシーフェル王国の中。下手に動けば敵をいい気にさせるだけだ」
「アックさまの言うとおりですわ。知らない場所をむやみに動き回るのは利口ではありませんわね」
転移された直後は疑ったが、間違いなくシーフェル王国のようだ。ここの内部を知るのはミルシェだけ。ここは彼女に従う必要がある。
ルティが起こした爆発で靄が消え、周りの様子がはっきり見えるようになった。
随分と広い場所のようだが、
「ミルシェ。ここは?」
「壊滅前のままで言えば、ここは王城前広場。あたしとアルビンが第一王女の軍勢と戦ってた場所ですわ。もっとも、アックさまが寄こしたデーモン族で助かりましたけれど」
そういえばそうだったな。
あの時は神族国にいて、ミルシェを助けに行くことはままならなかった。
デーモン族を召喚したら圧倒的な数で救ったらしいが……。
悪魔が人の味方をするというのもおかしな話だが、ミルシェにはかなり頼りになったようで何よりだ。
その後、結局シーフェル王国そのものが壊滅したらしいが。
「アック様どうされるんですか~? 奥に見える扉は開いてますよ~」
エドラの思惑通りにしたくない。
とはいえ、奴がいるとされる王の間に進むしか――
「ウウニャ……!!」
シーニャだけ壁の近くや、扉辺りの様子を見ていた。
しかし何かに警戒しているのか、虎耳がピンと立っているし尻尾も慌ただしさを見せている。
「……ん? シーニャどうした?」
「ウゥ……! アック! 誰かが来るのだ!」
「敵か!」
ミルシェが言ったとおり、ここはかつてのシーフェル王国。しかし聖女エドラがいるという時点で、敵の本拠地のような場所といっていい。
時間的に王国兵が大量に現れてもおかしくないはずだ。
そう思いながら全開に開かれている扉を注視していると、コツコツとした足音が響いて来る。
そして、
「ようこそ、シーフェル王国へ。そちらは、旅のお方ですよね?」
この女性は誰だ? 見たところ兵士に見えないが、それどころか似ているな。
おれとルティは思わずミルシェを見てしまった。
「――いきなり見つめられても困りますけれど」
「ご、ごめん」
「でもでも、ミルシェさんにそっくりですっ! どなたなのか知ってるんですか~?」
「……あたしの姿は第二王女に成り代わった姿。面影のようなものは残るということなのでしょうね」
ミルシェは聖女エドラに成り代わり、水棲怪物スキュラの姿を捨てた。
今は水棲怪物だった時の力以上になって、徐々にスキュラの姿を取り戻している。
第二王女に似ているうえ、どこか気品が感じられるということは――
「第一王女……か?」
「恐らく。ですけれど、あたしはまともな第一王女を見たことがありませんわね。でも……」
「えぇっ? お、王女様ですかっ!? しかも第一王女! どうすれば~!!」
「どうもしないけどな。それに……」
驚くおれたちとは別に、シーニャだけが警戒を解いていない。
つまり、敵であるという認識で間違いじゃないということだ。
「アック。攻撃していいのだ?」
「……まだだ。まだ何とも言えないからな。それに第一王女だけとは限らない」
「ウウウゥ……」
気品漂う立ち振る舞いと雰囲気。第二王女の聖女エドラとはまるで違う。
だが敵意は感じられず、どう動くのか読めない。
「わたくしはシーフェル王国第一王女、エンプティ・シーフェル……何も、何も何も何も……ありません」
様子がおかしい。
スフィーダに傀儡されているのか、あるいは――
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