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第二十章:畏怖
422.彼女たちの心
しおりを挟む「全く小娘はどうしていつもいつも騒ぎを起こすなの……シーニャもそう思――シーニャ? あれ? どこに行ったなの?」
ルティとゴブリンが現れた時までは、少なくともすぐ横にシーニャの姿があった。それなのに彼女の姿がどこにも無い。
何となく不安を覚えたフィーサは、シーニャの気配を探ることにした。
すると――
「いたなのっ! む! 戦闘の気配。小娘は年増に任せてわらわが行くしかないなの!!」
シンザ帝国の魔塔第一階層。
ダンジョン内であるにもかかわらず、立ちはだかるのは彼女たちそれぞれにある"弱み"。
だがフィーサは、それらに対し妙なことが意図的に起きていると感じていた。
「イスティさま、シーニャのことはわらわが何とかするなの!」
状況は急激。
それまで仲間として迎えていた虎人族が、一斉に牙をむき出しにした。
戦斧を手にする虎人族は、すでに振り下ろす構えを見せている。しかしそんな危機的状況に対し、シーニャは防御態勢すら見せない。
「どうした、シーニャ! 同じ虎人族に敵意は向けないのカ? オマエが味方とならない時点で、オマエはオレたちの敵! 抗いを見せないとは情けないゾ!!」
虎人族の男は、戦斧を手にし興奮状態の虎人たちに合図を出すのみ。
しかし、
「お前、虎人じゃない」
「何を言う! オレたちは虎人族のシャエラン村の戦士だ。戦士である以上、戦斧は必要。他に何の武器がある?」
「シーニャは爪で戦いたいのだ。なぜ人間の武器を使うのだ?」
シーニャを殺そうとしているのは、見た目は間違いなく虎人族の男。そしてシャエラン村の虎人族。
しかし虎人族の男が手にしているのは人間が使う武器であるということに、シーニャはずっと首を傾げていた。違和感の答えを求めるシーニャだったが――
「爪? グハハハッ!! 帝国で暮らす虎人族は爪など使わない。爪攻撃で防げるものなら、防いでみるがいいゾ!」
「……ウニャ、仲間違う、虎人族もういない。シーニャ、人間の武器効かない」
「ガハハハハハハハハ!! なら、死ねぇっ!!」
頭上に構えられていた戦斧が、合図とともに一斉に振り下ろされた。
シーニャは態勢を崩さず、振り下ろされる戦斧をただ黙って見つめている。
荒々しい息づかいがシーニャの近くを飛び交い、振り下ろしの動きとともに消えた。
一斉の攻撃により一時的に土煙が舞うが、
「な、何だ、ソレは!? その武器は何だ……?」
――シーニャが生きてル……なぜだ?
――感触が無かった。ナゼダ?
防御すら取っていなかったシーニャの前に、見慣れぬ剣が現れている。
その剣は、
「間に合ったなの! 何をボケッとしてるなの? シーニャ」
「ウニャ? シーニャ、敵の攻撃全部受けるつもりだったのだ。フィーサ、邪魔しに来たのだ?」
「確かに弱そうな奴らなの。でもでも、シーニャはイスティさまじゃないなの! そこは勘違いしちゃ駄目なの!」
「それならフィーサと一緒に戦うのだ。ウニャッ!」
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