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第二十章:畏怖
405.クリミナル・ゲート 2
しおりを挟む「ぬおおおっ!?」
「アルビン! おれの後ろに!!」
「す、すまんっ! ぐぅっ……ふ、不覚……」
ダンジョン入口とされる扉。
そんな扉に対し、アルビンは不用意に触れた。
仕掛けなどに遭遇したことが無い故の油断だったわけだが……。
――数分前。
後方に残したルティとシーニャを休ませ、おれとミルシェ、アルビンは扉と向き合っていた。
鍵穴が見当たらない扉は模様も無く、ただの真っ白い壁といった様相を呈している。
近づくと向こうから風が吹いていることが分かった。
だが開けられるような隙間は見当たらず、手段も見つかりそうにない感じだ。
「風が来ているということは、間違いなく地下が続いていますわね。ですけれど……」
「うーん……」
ここにいる中で一番頭が回りそうなのは、聖女の知識を持つミルシェしかいない。
そんな彼女でも、特徴が見られない扉を開けることは厳しいと見ているようだ。
「とりあえず、触れてみるしか無いのでは?」
「それしかないか。魔法扉みたいな仕掛けが表れる可能性も捨てきれないし、おれが触れ――」
「アック・イスティ! ここは騎士である俺の出番だな。……ふむ、特に何も起きないようだが?」
「――あ」
おれのすぐ近くにいたから仕方が無いが、アルビンがおれよりも先に扉に触れていた。
触れた直後は何も起きる気配は無さそうだったが……。
「アックさまっ! 魔物ですわっ!!」
ミルシェの注意よりも先に、扉の真ん前にいたアルビンが真っ先に襲われていた。
扉が光ったわけでも無く音を出したでも無い。
それなのに白色扉が黒色扉に変わってすぐに魔物が現れた。
それも羽根つきの魔物。デーモン族のように見えるがやや小さい。
「アルビンっ! 避けろ!!」
「ぬおおおおおっ!! む、無理だ……がっ、がはぁっ!」
「おれの後ろに回れ! 目に見える魔物は全て消してやる」
「す、すまん……まさか扉に仕掛けが施されているとは……」
動くこともままならずその場に釘付け。そんなアルビンをかばうように彼の前に出た。
魔物は黒色扉をすり抜けながら、おれたちに狙いを定めている。
「ミルシェ!」
「アルビンを後ろに連れて行ってから治療しますわ!」
「頼んだ」
アルビンは傷を負いながらも、おれの後ろに何とか逃げた。
彼をミルシェに任せ、扉から次々と出て来る魔物をやるしか無さそうだ。
ちらりとルティたちを気にすると、魔物に備えて構えだけ見せている。
しかしアルビンの回復の妨げになっても面倒だ。
ここは取りこぼしをすることなく倒す。
「ギャギャッ!! 罪人。後悔しても、もう遅い……苦しみながら罪を憎め!」
(罪人? アルビンのことを言っているのか。いや、おれのことも含めてか)
デーモン族に比べるとツノが短く、翼と呼べないくらい小さな羽根。
全身が白い悪魔も珍しいが、図体がやや筋肉質という時点で防御力は堅そうだ。
「……魔物のくせに、大層な物言いだな!」
「ギャギャギャ! オレサマ、グレーターデーモン! 罪人を断罪スル!!」
図体がデカいせいか、後ろから見えているツノが侵入出来ていない。
扉のサイズが小さいことが障害となったか。
「断罪か。その前に――うぉらぁっ!!」
これだけ分かりやすく出現してくれているので、まずは素手で攻撃してみた。
ただでさえ狭い範囲にある部屋の中。
真正面からの拳にデーモンは避けようがなかったのか、まともに入った。
感触は悪くない――が、空ぶったような感覚がした。
「罪深い人間……オマエの攻撃はオレサマに届くことはナイ!! 人間の体、ヨワイ! ムダダ」
――なるほど。
妙な感触だったが、人間の体からは攻撃判定を受け付けないということか。
「素手でってのはさすがに甘かったか」
「ギャギャ! オレサマヲ倒せないオマエ、弱い! 罪人、罪人罪人!!」
体の一部使用での攻撃が利かないなら、やりようはいくらでもある。
それならこれでどうだ――
「……グレーターデーモン! 《深淵の毒刃》で沈め!」
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