404 / 577
第二十章:畏怖
404.クリミナル・ゲート 1
しおりを挟む
満腹で張り切るルティたちを後ろに置き、ひとまずアルビンを先頭に地下へ降りた。
ここに詳しいのはアルビン一人だけだ。先に進んでもらうのがふさわしい。
ロビー階の階段から降りているだけなのに、早くも怪しい気配が漂い始めた。
「……ぬぅ。これはどうしたことだ……」
「何か問題でも?」
「地下の書庫というのは地上や上に比べると、空間が冷えているものだ。しかし今感じている冷気は書庫特有のものではない……」
冷気を感じられるということは、異様な場所であることは察しているようだ。
「地下にダンジョンがあるんだよな?」
地下のダンジョンを通って、宮殿にいるであろう皇帝の所に行く――
――という話だったはず。
「いや、いくら何でもすぐには無い。ロビー階から降りてすぐの書庫は閉架式になっているだけで、出入りは禁止されていないのだ。書庫の者が見回りに来るはずだからな」
地下へ降りてすぐに周りを見回すと、左右にある書庫が全て閉ざされていた。鉄格子で厳重に守られていて簡単に入れそうにない。
そんな書庫を横目で見ながら歩いているが、まるで檻の中を歩いているような感覚さえする。
「アックさま、何か気になりますか?」
「……今はまだ無いな。ただ、重苦しさはある」
「感じているのはアックさまとアルビンのようですけれど、あたしたちは特に何も感じませんわよ?」
人間しか利用しない場所でもあるし、そういうものかもしれない。
「アック。見ての通り、地下書庫は利用出来ない。だが、もしここにある書庫に何かを感じるならば、俺が口利きしても構わぬぞ。どうだ、何か感じているのか?」
そう言われても、ここにあるのは見事に何の違和感も無い書物ばかり。
むしろ何故上の階に魔導書が紛れていたのだろうか。
理由は不明だが、それはともかく――
「残念ながらここには何も無いな。アルビンは気にせず、番人がいる所に進んでくれ」
この階の違和感を感じているのは、見事におれとアルビンだけ。
それが何なのか分からないが、気にしても始まらないので進むしかない。
「む、そうか。それならばこっちだ! さらに地下へ降りるには、この先にいる番人と交渉をする必要があるのでな」
そう言うとアルビンは気にするのを止めて前へ歩き出した。
「ルティ、シーニャ! ちゃんとついて来てるか?」
迷うことは絶対無いくらいの真っすぐな通路。
少なくとも今の時点で迷ったりはぐれることは無いが、薄暗さも相まって心配にはなる。
「ウニャッ!! アックの声が響いているのだ~!」
「アック様、寂しくなりましたらいつでもわたしをおそばに~!!」
(何も心配は要らなかったな……)
おれの前を歩くのはアルビンで、ミルシェは真後ろ。フィーサは神剣のまま沈黙を保ったままだ。
そう考えると、彼女たちは何も問題が無いことが分かる。
「分かった! おれも今のところ大丈夫だぞ!」
違和感と冷気の正体は不明だが、もうすぐダンジョンに行けるなら気にしなくても良さそうだ。
「ア、アック! すまぬがすぐに来てくれ!!」
騎士鎧を着ている彼の後ろ姿を追いながら進んでいると、角を曲がったところで一瞬見失った。
しかしすぐに声がかかったので問題は無さそうだ。
どうやらようやく番人とのご対面らしい。
しかし――
アルビンが進んだ先には彼の姿しか無く、番人らしき者の姿は無かった。
そこに見えるのは、魔法扉に似た頑丈そうな扉だけだ。
「アルビン。番人は?」
「見ての通りだ! いると聞いていたのだが、ここにあるのは妙な扉だけだ。どうすれば開くのかも分からぬが……」
「開ける条件か。鍵穴が見当たらないし鍵じゃなさそうだな……」
魔法扉のように魔法を使って開くなら、簡単に進めることも可能のはず。
しかしそういうのではない気がする。
「アックさま、また仕掛け扉です?」
悩む前にミルシェがすぐに声をかけて来た。
シーニャとルティは面倒くさそうなのが分かるのか、近付いても来ない。
「そうみたいだ。でも鍵穴も無いし、何が条件なのか分からない」
「……この扉の先にダンジョンが?」
「うむ。そう聞いている。すまぬが、ミルシェよ。そなたの知恵も借りたいのだが頼めるか?」
「そうすぐに頼られても困りますけれど、小娘たちが退屈する前に何とかするしかありませんわね」
今までの仕掛けは、自分たちだけで何とかクリアして来た。
しかし今回はアルビンも同行している。
貴族騎士の知恵も借りて突破するしか手は無さそうだ。
ここに詳しいのはアルビン一人だけだ。先に進んでもらうのがふさわしい。
ロビー階の階段から降りているだけなのに、早くも怪しい気配が漂い始めた。
「……ぬぅ。これはどうしたことだ……」
「何か問題でも?」
「地下の書庫というのは地上や上に比べると、空間が冷えているものだ。しかし今感じている冷気は書庫特有のものではない……」
冷気を感じられるということは、異様な場所であることは察しているようだ。
「地下にダンジョンがあるんだよな?」
地下のダンジョンを通って、宮殿にいるであろう皇帝の所に行く――
――という話だったはず。
「いや、いくら何でもすぐには無い。ロビー階から降りてすぐの書庫は閉架式になっているだけで、出入りは禁止されていないのだ。書庫の者が見回りに来るはずだからな」
地下へ降りてすぐに周りを見回すと、左右にある書庫が全て閉ざされていた。鉄格子で厳重に守られていて簡単に入れそうにない。
そんな書庫を横目で見ながら歩いているが、まるで檻の中を歩いているような感覚さえする。
「アックさま、何か気になりますか?」
「……今はまだ無いな。ただ、重苦しさはある」
「感じているのはアックさまとアルビンのようですけれど、あたしたちは特に何も感じませんわよ?」
人間しか利用しない場所でもあるし、そういうものかもしれない。
「アック。見ての通り、地下書庫は利用出来ない。だが、もしここにある書庫に何かを感じるならば、俺が口利きしても構わぬぞ。どうだ、何か感じているのか?」
そう言われても、ここにあるのは見事に何の違和感も無い書物ばかり。
むしろ何故上の階に魔導書が紛れていたのだろうか。
理由は不明だが、それはともかく――
「残念ながらここには何も無いな。アルビンは気にせず、番人がいる所に進んでくれ」
この階の違和感を感じているのは、見事におれとアルビンだけ。
それが何なのか分からないが、気にしても始まらないので進むしかない。
「む、そうか。それならばこっちだ! さらに地下へ降りるには、この先にいる番人と交渉をする必要があるのでな」
そう言うとアルビンは気にするのを止めて前へ歩き出した。
「ルティ、シーニャ! ちゃんとついて来てるか?」
迷うことは絶対無いくらいの真っすぐな通路。
少なくとも今の時点で迷ったりはぐれることは無いが、薄暗さも相まって心配にはなる。
「ウニャッ!! アックの声が響いているのだ~!」
「アック様、寂しくなりましたらいつでもわたしをおそばに~!!」
(何も心配は要らなかったな……)
おれの前を歩くのはアルビンで、ミルシェは真後ろ。フィーサは神剣のまま沈黙を保ったままだ。
そう考えると、彼女たちは何も問題が無いことが分かる。
「分かった! おれも今のところ大丈夫だぞ!」
違和感と冷気の正体は不明だが、もうすぐダンジョンに行けるなら気にしなくても良さそうだ。
「ア、アック! すまぬがすぐに来てくれ!!」
騎士鎧を着ている彼の後ろ姿を追いながら進んでいると、角を曲がったところで一瞬見失った。
しかしすぐに声がかかったので問題は無さそうだ。
どうやらようやく番人とのご対面らしい。
しかし――
アルビンが進んだ先には彼の姿しか無く、番人らしき者の姿は無かった。
そこに見えるのは、魔法扉に似た頑丈そうな扉だけだ。
「アルビン。番人は?」
「見ての通りだ! いると聞いていたのだが、ここにあるのは妙な扉だけだ。どうすれば開くのかも分からぬが……」
「開ける条件か。鍵穴が見当たらないし鍵じゃなさそうだな……」
魔法扉のように魔法を使って開くなら、簡単に進めることも可能のはず。
しかしそういうのではない気がする。
「アックさま、また仕掛け扉です?」
悩む前にミルシェがすぐに声をかけて来た。
シーニャとルティは面倒くさそうなのが分かるのか、近付いても来ない。
「そうみたいだ。でも鍵穴も無いし、何が条件なのか分からない」
「……この扉の先にダンジョンが?」
「うむ。そう聞いている。すまぬが、ミルシェよ。そなたの知恵も借りたいのだが頼めるか?」
「そうすぐに頼られても困りますけれど、小娘たちが退屈する前に何とかするしかありませんわね」
今までの仕掛けは、自分たちだけで何とかクリアして来た。
しかし今回はアルビンも同行している。
貴族騎士の知恵も借りて突破するしか手は無さそうだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる