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第二十章:畏怖

404.クリミナル・ゲート 1

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 満腹で張り切るルティたちを後ろに置き、ひとまずアルビンを先頭に地下へ降りた。
 ここに詳しいのはアルビン一人だけだ。先に進んでもらうのがふさわしい。

 ロビー階の階段から降りているだけなのに、早くも怪しい気配が漂い始めた。

「……ぬぅ。これはどうしたことだ……」
「何か問題でも?」
「地下の書庫というのは地上や上に比べると、空間が冷えているものだ。しかし今感じている冷気は書庫特有のものではない……」

 冷気を感じられるということは、異様な場所であることは察しているようだ。
 
「地下にダンジョンがあるんだよな?」

 地下のダンジョンを通って、宮殿にいるであろう皇帝の所に行く――
 ――という話だったはず。

「いや、いくら何でもすぐには無い。ロビー階から降りてすぐの書庫は閉架式になっているだけで、出入りは禁止されていないのだ。書庫の者が見回りに来るはずだからな」

 地下へ降りてすぐに周りを見回すと、左右にある書庫が全て閉ざされていた。鉄格子で厳重に守られていて簡単に入れそうにない。

 そんな書庫を横目で見ながら歩いているが、まるで檻の中を歩いているような感覚さえする。

「アックさま、何か気になりますか?」
「……今はまだ無いな。ただ、重苦しさはある」
「感じているのはアックさまとアルビンのようですけれど、あたしたちは特に何も感じませんわよ?」

 人間しか利用しない場所でもあるし、そういうものかもしれない。
 
「アック。見ての通り、地下書庫は利用出来ない。だが、もしここにある書庫に何かを感じるならば、俺が口利きしても構わぬぞ。どうだ、何か感じているのか?」

 そう言われても、ここにあるのは見事に何の違和感も無い書物ばかり。
 むしろ何故上の階に魔導書が紛れていたのだろうか。

 理由は不明だが、それはともかく――

「残念ながらここには何も無いな。アルビンは気にせず、番人がいる所に進んでくれ」

 この階の違和感を感じているのは、見事におれとアルビンだけ。
 それが何なのか分からないが、気にしても始まらないので進むしかない。

「む、そうか。それならばこっちだ! さらに地下へ降りるには、この先にいる番人と交渉をする必要があるのでな」

 そう言うとアルビンは気にするのを止めて前へ歩き出した。
 
「ルティ、シーニャ! ちゃんとついて来てるか?」

 迷うことは絶対無いくらいの真っすぐな通路。
 少なくとも今の時点で迷ったりはぐれることは無いが、薄暗さも相まって心配にはなる。

「ウニャッ!! アックの声が響いているのだ~!」
「アック様、寂しくなりましたらいつでもわたしをおそばに~!!」

(何も心配は要らなかったな……)

 おれの前を歩くのはアルビンで、ミルシェは真後ろ。フィーサは神剣のまま沈黙を保ったままだ。
 そう考えると、彼女たちは何も問題が無いことが分かる。

「分かった! おれも今のところ大丈夫だぞ!」

 違和感と冷気の正体は不明だが、もうすぐダンジョンに行けるなら気にしなくても良さそうだ。

「ア、アック! すまぬがすぐに来てくれ!!」

 騎士鎧を着ている彼の後ろ姿を追いながら進んでいると、角を曲がったところで一瞬見失った。
 しかしすぐに声がかかったので問題は無さそうだ。

 どうやらようやく番人とのご対面らしい。
 しかし――

 アルビンが進んだ先には彼の姿しか無く、番人らしき者の姿は無かった。
 そこに見えるのは、魔法扉に似た頑丈そうな扉だけだ。

「アルビン。番人は?」
「見ての通りだ! いると聞いていたのだが、ここにあるのは妙な扉だけだ。どうすれば開くのかも分からぬが……」
「開ける条件か。鍵穴が見当たらないし鍵じゃなさそうだな……」

 魔法扉のように魔法を使って開くなら、簡単に進めることも可能のはず。
 しかしそういうのではない気がする。

「アックさま、また仕掛け扉です?」

 悩む前にミルシェがすぐに声をかけて来た。
 シーニャとルティは面倒くさそうなのが分かるのか、近付いても来ない。

「そうみたいだ。でも鍵穴も無いし、何が条件なのか分からない」
「……この扉の先にダンジョンが?」
「うむ。そう聞いている。すまぬが、ミルシェよ。そなたの知恵も借りたいのだが頼めるか?」
「そうすぐに頼られても困りますけれど、小娘たちが退屈する前に何とかするしかありませんわね」

 今までの仕掛けは、自分たちだけで何とかクリアして来た。
 しかし今回はアルビンも同行している。

 貴族騎士の知恵も借りて突破するしか手は無さそうだ。
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