上 下
386 / 577
第十九章:帝国の望み

386.魔法扉を開こう! 前編

しおりを挟む

 シンザ帝国に繋がっているとされる魔法扉。
 その扉の前でミルシェとフィーサ、そしておれを含めた三人が揃って頭を悩ませている。

「うーんうーん……どう見ても属性ごとに分かれている感じがするなの」
「そうかしら? そんな単純なものには見えないわね。アックさまはどう思います?」

 ルティの力をいとも簡単に弾いた魔法扉は、固く閉ざされたままだ。
 扉の表面には六芒星の模様が浮かび上がっている。

 六芒星の箇所には青白赤黒……といった色が分かれていて、どうやらそこに向けて対応する属性を当てればいいだけみたいだ。

 しかしそんな単純な扉なはずが無いとミルシェが訴えていて、なかなか魔法を撃つ段階になっていない。そんな状況を知らず、ルティとシーニャがずっと声援を送ってくれているわけだが。

「とりあえずミルシェ。水属性を当ててみてくれないか?」
「分かりましたわ。それでは……」

 水属性に対応しているとされる箇所に向けて、ミルシェが魔法を放つ。
 魔法が命中し、じゅぅっ、とした音と同時に扉が反応を示した。

 だがそれだけでは不足ということなのか、反応を示した水属性の模様は何も変化していない。

「だから言ったなの。魔法を撃つだけならわらわにだって出来るなの!」
「文句はあたしにじゃなくて、アックさまに言えば?」
「イスティさまは指示を出しただけなの。年増はそれを単純にしただけに過ぎないなの」
「小娘は屁理屈だけ並べて、実は何も分かっていないんじゃなくて?」

 魔力感知に優れているフィーサがあまりにも慎重だ。
 ミルシェが放った魔法が反応したということは、間違いでは無いはず。

 色々試すしか無さそうだが……。

「まぁまぁ。フィーサ、君はどう思ってるんだ?」
「各属性に当てても反応が無いのは明らかなの。きっとこれは、魔法の威力が関係しているなの。年増のような中途半端な魔力ではどうしようもないなの」
「何ですって!?」

 属性の威力だとしたら、どの程度の威力で正解なのか。

「フィーサ。魔法剣で扉を斬りつけてみてくれないか?」
「それはいいけど、属性はどうするなの?」
「内在してる属性は全てだろ? それで試してくれ」
「わ、分かったなの」

 魔法剣として攻撃するなら、属性ごとの威力を試す必要は無い。
 フィーサの剣としての攻撃力は属性で変わるわけでは無いからだ。

「よし、やってくれ」 
「い、行くなのっ……!!」

 魔法剣としてどれくらい威力があるのか見たことが無い。
 それを確かめつつ、物理攻撃が無効なのかも確かめる必要があった。

 バシュッ、とした斬り込みの音が響く。
 しかし魔法扉に斬り込んだフィーサの動きが止まっている。

「……あら? 小娘が震えていますわね。アックさま、様子を見られては?」
「ん?」

 ミルシェが気にしているようなので、フィーサに近付き声をかけた。
 すると、そこから聞こえて来たのはフィーサの嗚咽だった。

「――ひっく……ひぅっ……い、痛いなの。痺れと同時に痛みが襲って来たなの……」
「だ、大丈夫か?」
「何にも反応しないどころか、魔法剣として何の意味も……ひぐっ……」
「ご、ごめんな」

 魔法剣はやはり物理扱いのようだ。
 そうなると純粋に属性魔法で開くしか無いということになる。

「……アックさま、どうされます?」
「そ、そうだな……」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:251

【完結】ぎゅって抱っこして

BL / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:1,486

女王直属女体拷問吏

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:1,730

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:4,864

処理中です...