382 / 577
第十九章:帝国の望み
382.専用ガチャの魔石試し 前編
しおりを挟む本気で帝国に来て欲しいからなのか、イデアベルクに一度戻っても構わないとまで言われてしまった。ピティラスの表情を見る限り、おれが断るという選択肢を与えるつもりはないようだ。
「もしおれが戻って来なかったらどうする――?」
「その時は帝国もザーム共和国に協力し、イデアベルクを攻め落とすのみでございます……」
やはりそういう答えになるのか。
帝国がすでに薬師イルジナに接触しているのは明らかとなっている。そのうえで、損をしないように動いて来たに違いない。おれが断ってもザームにつき、断られなくてもおれを味方にしてザームに抵抗出来る。
不利なのは、攻められることが確定しているイデアベルクだけだ。
「……そういうことか」
イデアベルクに戻る戻らないに関係無く、こちらが不利な状況であることに変わりない。そうなると遺物の腕輪を使って移動するか、もしくは転送魔法でどうにかするしか無さそうだ。
「あ! そういえばアック様」
「……ん? どうした、ルティ?」
「もう必要無いからかもなんですけど~ガチャはもうしないんですかっ?」
そういえばルティも、シーニャのように専用の装備が欲しいと言っていたのを思い出した。後回しにしていただけで、ガチャをやめたわけでも無い。
「ウニャ! ガチャをすればいいのだ!」
「シーニャも何か欲しいの?」
「違うのだ!! 魔石でここに呼び出せばいいのだ。そうすればイデアベルクに戻らずに済むのだ!」
「――あ! そ、そうか……! そうだよな」
彼女たちの名が刻まれた専用魔石の存在のことを、すっかり忘れるところだった。
サンフィアの魔石だけは形見と称して、持って行かれてしまった経緯がある。だが、シーニャたちの魔石は手を付けることなく残したままだ。
専用魔石の使いどころが難しくてガチャをする機会も得られずにいたが、その手があった。ルティに出会えたように、ミルシェとフィーサも魔石ガチャで呼ぶことが出来れば何も問題は無い。
しかしこの場には、帝国の使者であるピティラスがいる。ガチャスキルを見せつけることが果たしていい方に進むのかは何とも言えない。
ガチャスキルを使う前に聞いておく必要がある。
「ピティラス・アンダーさん。あんたは、おれのガチャスキルのことを?」
「……承知しております。使われる……そういうことでしたら――」
おれからの問いにピティラスは軽く頷きを見せ、ドワーフの少女を連れて教会の外に出て行った。
――つまり、知っているうえで気を利かせたということになる。
「ウニャ。アック、今の内なのだ! ミルシェとフィーサをここに呼ぶのだ! ウニャッ」
「えぇ!? そ、そういうことなんですか? わ、わたしの装備一式を新調してくれるわけでは~……」
「もちろん、まとめて出す。でもその前に、二人を呼び出すけどいいよな?」
「はいっっ!」
いつぶりのガチャになるのか。シーニャの黒装束からでも結構経っているわけだが、果たして――
成功するかどうかは微妙なところだし、悩むところだ。
どうするべきか迷っていると、シーニャが気になって腰袋を覗き込んで来た。
「アック、やり方を忘れちゃったのだ?」
「……いや、そうじゃないぞ。専用魔石を使って呼んだことが無いから悩んでいるだけだよ」
「アックらしくないのだ! あの女がいないうちにやってみればいいのだ!」
ルティは自分へのご褒美を気にしているのに、シーニャがここまで言ってくれるとは。
彼女の言うとおり、やってみるしかないようだ。
「それじゃあ、まずは――」
いきなり彼女たちを呼べるか分からないので、無印魔石でガチャをした。
「あれれれ? アック様、これって~……」
「……アイテムだな」
【精霊結晶】【ドワーフリボン Lv.1】
【満腹草×99】【尖った石】【理性回復石】
最初の頃によく出ていた石や草が大量に出て来た。これ自体はルティの錬金術に使えるからいいとしても、今さらな物のような感じだ。
この状態で専用魔石か――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる