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第十八章:遺物の導き
372.遺物の導き
しおりを挟む「ギギギ……ニンゲン、ケス!!」
どうやら西地区にはゴブリンの魔物使いを多く配置しているようで、おれに気付いたゴブリンが近づいて来ている。
シーニャはリッチを始めとして、目に見えるゴブリンを倒しまくりだ。それでも離れた所にいる魔物までは追い付いていないので、ここはおれがやるしかない。
「お前たちのボスはどこにいる?」
知性のあるゴブリンがそうじゃないゴブリンを使っているのは、初めて見る。これまでザーム共和国が寄こして来た敵は、ほとんどが人間の傭兵だった。
それがいよいよ魔物を使って来たということは、遺跡での戦いによる報告を受けての変化ということになる。
「ウギギギギ……ニンゲンコロス!!!」
「コロスコロス!!」
言葉が通じていないのか、ナイフで威嚇しながら襲い掛かるタイミングを見計らっているようだ。シーニャの方にはリッチが多数と、少数のゴブリン。
そしてこちらには、十体くらいのゴブリンがじりじりと近づいて来る。
ゴブリン相手に魔法というのは大げさなので、魔剣ルストで対応することにした。
しかし――
「ギギ……!? ノロイ、ノロワレル……オマエ、ニンゲンチガウ!!」
魔剣を構えただけのおれに、ゴブリンたちが一斉に怯み出した。
少し前に呪術の毒を吸収してはいるが、魔剣自体が呪いの剣に変わってしまったのだろうか。
「えっ――!?」
戦う気があったのに、ゴブリンたちはシーニャの方に逃げ出し、そのまま彼女に攻撃を仕掛けている。
(何だよ、魔剣が何だっていうんだ……)
見た目は確かに毒々しくなっているとはいえ、ゴブリンが怯んで逃げ出すのはどういうことなのか。
結局西の敵は全てシーニャに襲いかかり、あっさりと倒された。
リッチを操る死霊術師の気配を探ったが、この地区にはひそんでいなかったようだ。
「アック、アック! やっつけたのだ!!」
それからしばらくして、満足気なシーニャが戻って来た。
こっちとすれば魔剣を構えただけで何もしていないだけに、シーニャだけを満足させた形だ。
「よしよし、よくやったぞ」
「フニャウ」
シーニャだけがここに来て敵を一掃してくれた。それはいいとしても、どうやって来たのか。
「ところでシーニャ。ここへはどうやって?」
「食事してたおっさんが送ってくれたのだ! ウニャッ」
「……ウルティモ?」
「ウニャ」
そういえば彼は、ルティのこぶし亭の常連だった気がする。
――ということはそこで気付いて、そのまま送ってくれたということだ。
「そ、そうか」
ルティが来ていないのは寒さに弱いからに違いない。
フィーサはおれが魔剣ルストを使うようになったのと、被魔法戦闘じゃない限りは出番が無いだけに、退屈していそうな感じだ。
「ウニャ? アック、それは何なのだ?」
「……うん?」
「アックが光っているのだ!」
シーニャが言うことに一瞬分からなかったが、どうやら持って来ていた遺物が光っているらしい。
遺物自体、今までそんな風になったことが無かった。
試しに持って来た首輪の遺物を手の平に乗せてみると、光は点滅をし始めた上、どこかに向かって光を放ち始めた。
この動きで考えられるのは、違う遺物に共鳴しているという点だ。
別の遺物が近くにあるという可能性がある。
「点滅する光か……」
遺物が何かに向けて導いてくれているような、そんな点滅としか考えられないがどうだろうか。
「行ってみれば分かるのだ!」
「そうだな、残る場所は南地区だけ。そこに遺物を持つ敵がいるなら、ついでに奪還するだけになるな」
氷雪都市の奪還はもちろんのこと、遺物がそこにあるなら一緒に取り戻すしかない。ゴブリンやリッチも大した強さでは無かったが、さすがに南地区にはそうじゃない敵が来ているはず。
「アックも暴れるのだ?」
「そうだな、二人で暴れるか!」
「ウニャッ!」
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