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第十八章:遺物の導き
364.ダークエルフの帰順と一時帰還
しおりを挟む「――水棲怪物も心服させた。そういうことか?」
「そういうことだ。彼女はおれの味方になり、仲間として行動をともにすることを決めた。これでお前たちの脅威は消えたんじゃないのか?」
ミルシェを水棲怪物の状態から戻し合流を果たすと、ダークエルフたちが姿を見せた。戦いの一部始終を見ていたようで、長年の願いは果たされたと判断したらしい。
その瞬間をもって、ルミカ・リオング率いるダークエルフたちはこぞって膝をついて来た。
「……約束の時だ。我が方たちはこれより、アック・イスティにつく。リオング水路は廃し、閉じることを決めるものである!」
困ったことになった。心服してダンジョンから脱出出来るものと思っていたのに、まさか全員ついて来るとは想像すらしていなかった事態だ。
思わずミルシェを見たが、彼女もお手上げなのか顔をそむけられた。ルミカの言葉を素直に聞くと、ダークエルフによって、リオング水路ごと無くすという感じに聞こえた。
そのこと自体に首は傾げないが、ダークエルフの大所帯をどうやって説得するべきなのか。
「ルミカとダークエルフたちの件だが、おれの国について来るという意味か?」
「そう言っている。我が方はアックに帰順を果たした。よって、リオング水路に留まる必要はすでに無い」
「……一応聞くが、転送魔法は使えるのか?」
「我が方は武器による攻撃と、戦術による戦いを好む。魔法は不得意と言えよう」
まさかまたしても大移動をしなければならないことになるとは。移動の腕輪を渡してしまえば済む話だが、あれも不安定なことに変わりはない。
古代遺跡群にこだわることは無いが、遺物の関係もあるしどうしたものか。
「イスティさま~!!」
ダークエルフたちを前にして悩んでいると、フィーサの声が聞こえて来た。どこかにいなくなっていたらしいが、戻って来たみたいだ。
「おい、貴様! 我を放置して他の女を――ダークエルフ! 何故この者らがここにいる!? アック、貴様まさか……」
声を探しに行ったと聞いていたが、どうやらサンフィアのことだったらしい。サンフィアも暗礁域に落ちて来ていたようだ。
ルティとフィーサは笑顔を見せ、シーニャはミルシェを回復している状況にある。
「まさかでもないんだが、ダークエルフたちのことを何か知っているのか?」
「ふん、我はエルフのことなら大概のことは知っている。無論、ダークエルフのこともだ! 何故こんなにもいるのかは聞きたくないが、儀でも結んだか?」
「……そういうことになるな」
エルフのことはエルフに聞けといったところか。そうなるとどう考えても結論が出ているわけだが。
「貴様という奴はどこまで節操の無い――ふん、ということは、イデアベルクにまでついて来るということだな?」
「ああ。だが……」
「迷うでも無いことだ。貴様にえらい目に遭わされた我は、もう二度と外に出たくなくなった。我の答えはすでに出た。貴様がすることも決まっている!」
古代遺跡群と遺物の捜索は、とりあえずここで止めるしか無さそうだ。見つけることが目的ではあったが、仕方ない。
「――分かった」
彼女たち全員と合流したこともあるし、一時帰還をすることにした。イデアベルクに戻ることで、古代遺跡のことも何か分かるかもしれない。
「ルミカ・リオング! お前たちとともに、イデアベルクに飛ぶ。お前たちはその瞬間にやるべきことをやってもらいたい! 意味を理解したなら、おれの近くに集まれ!」
ルティたちはかなり驚いていたが、ダークエルフの大所帯を見ている以上、何となく理解したようだ。
「はぇぇぇ」
「帰れるのだ?」
「一時帰還だ。まぁ、少しだけいられることになるかもな」
エラトラリングとフィーサの魔力を使い、おれたちはリオング水路を脱してイデアベルクに帰還する。
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