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第十八章:遺物の導き
358.呪印の魔石
しおりを挟む「シーニャ、ルティ、フィーサ!! もう大丈夫だぞ!」
彼女たちの気配は結構離れていたが、他に逃げ場が無いこともあって岩陰に隠れていたようだ。
おれの声に反応したのか、シーニャが真っ先に飛び込んで来た。
「ウニャゥゥ!! やったのだ! さすがアックなのだ!!」
「耳は大丈夫か?」
「ウニャ! アックに触れてみて欲しいのだ!」
まさかのモフり放題が発生なのか。しかしすぐ近くからルティたちの駆けて来る音が聞こえて来るので、ここは手短にしておく。
「…………ど、どう?」
「フニャウゥ~アック、回復してくれているのだ?」
「いや、おれは回復が使えないよ」
「フニャン。じゃあアックの手がシーニャにそう思わせてるに違いないのだ! ウニャ」
単純な動きで虎耳をモフっているだけなのに、シーニャ的にはヒーリング効果を感じているのか。
もしかすれば、さっきまで闇を使っていたことが関係している可能性がある。
闇装備をまとっている彼女にはそういう恩恵がありそうだ。普通は光によって回復させられるが、闇装備の彼女には回復に似た感触をもたらしているのかもしれない。
「イスティさま~!」
「ルティ、戻りましたっ!! アック様!」
「うん、お帰り。二人とも無事だったか?」
「はいなの!」
「心配していたより洞窟は崩れなかったようで、安心ですっ!」
シーニャは耳鳴りがひどかったらしいが、ルティたちはそうじゃなかった。
地響きに関してだけ言えば、ルティの方が慣れていそうだが――
「それよりもイスティさま。魔石は出たなの?」
「あぁ、これだ」
別に隠すことでも無いので、シーニャたちにも見てもらうということでシーニャに手渡した。
「はぇぇ~傷だらけですねぇ……使えるんですか?」
「これだからドワーフは駄目なのだ! どう見ても真っ黒な石なのだ! 全然傷なんかついて無いのだ。よく見てみるのだ!!」
見え方がそれぞれ違うのか、今度はルティが魔石を手にして眺めまくっている。
「えぇ!? どう見ても無数の傷……それも、十字斬りされてるじゃないですか~!」
シャドウドラゴンからこぼれた魔石は、まだしっかりと眺めていない。黒い石ということだけは見て取れるが――
「イスティさま。その石には呪いが込められている気がするなの……十字に刻まれた印は、どう考えても――」
「……呪いの印? ――ってことは、この魔石ではガチャは出来ないってことか?」
「それは分からないなの。でもでも、そう簡単に行きそうにないなの」
「はぇ? の、呪われてるんですかっ!? か、返しますですっ!」
勢いよくルティから返されてしまった。しかし今すぐどうなるものでもない感じに見える。
それに傷が付いていることに関しては、覚えがあり過ぎるだけに何とも言えない。
「ま、まぁ、これでここでの脅威は去ったわけだし、ダークエルフたちのいる所に戻るか」
「ウニャ!」
「そ、その石は持って行くんですか?」
「そりゃそうだろ。あのドラゴンから得られたドロップ品だからな。そういや、ルティは新たな魔石が欲しいとか言って無かったか?」
「言いましたけど、そんなのじゃなくてですね……とにかく、その魔石はアック様のモノです!」
呪印が施された魔石に、ルティはすっかり恐れをなしてしまったらしい。
「全く情けない小娘なの。でもイスティさま。とにかくその魔石は、ダークエルフには見せない方がいいなの」
「どうしてだ?」
「それを渡したら、また同じことを繰り返す気がしてならないなの……ダークエルフには、ドラゴンを倒したことだけを言えばいいなの」
フィーサはダークエルフたちとは会っていないが、何故この暗礁域にドラゴンが出たのかを知っているかのような口ぶりだ。
しかしいずれにしても、これでようやく外に出られそうだ。
「アック、アック! 大変なのだ! とんでもないのだ!!」
水路のダンジョンに戻ろうとしていると、先を歩いているシーニャが何かを見つけたらしい。
仲が悪いルティとフィーサは、何だかんだで一緒に歩いていておれの後ろを歩いている。
そういう意味でも、やはりシーニャの行動力は頼りがいがあった。
ルティたちを急かしつつシーニャがいるところに向かうと、異変にすぐ気付いた。
「はぇぇぇ……崩れちゃった」
「やっぱりただの地響きなんかじゃなかったなの……」
早く止めを刺しておいて正解だったようだ。
「アック! こっちに来て欲しいのだ!」
迷うことのない一本道だったが、戻れなくなったということだろうか。
「すぐ行く! シーニャ、そこで待ってるんだぞ!」
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