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第十八章:遺物の導き
353.暗礁域の影 3
しおりを挟むシーニャからの話によると、初めは調子良く骸骨を倒しながら進んでいた。
しかし途中から骸骨が硬くなった感じを覚え、そうこうしているうちに倒したはずの骸骨が復活したということらしい。
「ウニャ、おかしかったのだ。砕けば砕くほど硬くなったのだ……」
「そっか。疲れはあるかい?」
「本気でやってないから全然問題無いのだ!」
シーニャのいう本気とは、斬属性を発揮させた攻撃のことだ。
よほどの強敵じゃなければ、それをする必要が無いと考えてのことだろう。
周辺の様子を見ていると外ではない地下の空間、それも奥行きまでは見えない海面。
小船で移動することが出来ない暗礁域では、どうしても徒歩による移動になってしまう。
今のところ骸骨しか徘徊していないが、アンデッドが有利な環境なのは明らかだ。
すでに遺物を手にしている以上、早く出てしまいたいが――
「アック様、アック様! 戻りましたっ!!」
ルティがどこまで行っていたか気にしていなかったが、予想より早く戻って来た。
シーニャと同様に疲れは見せていないように見える。
「残りの骸骨はどうなったんだ?」
「全部粉々にして来ましたっ!」
「ウニャッ!? あり得ないのだ! シーニャ、何度も何度も砕いたのにすぐに復活していたのだ。ドワーフだから復活しないなんてあり得ないのだ!!」
こればかりはシーニャに同情するが、やはり拳で砕くのは違うのだろうか。
「……ん? ルティ、何か後ろからついて来てるんじゃないのか?」
「はぇ? 骨さんは跡形もなく……あれれ?」
「やっぱりドワーフなのだ! 甘いのだ、甘すぎるのだ!!」
「骨さんじゃないですよぉぉ! きっと違う何かが……」
はっきりとした姿は見えないが、何かの影と這いずりの音が聞こえて来る。
「武器を手にしているのは見えるな。数はそんなにいないようだが……どこかで見たような――」
周りが薄暗いだけに、肉眼で見るには距離がまだ離れているようだ。
しかし武器なしの骸骨と違い、剣のようなものを手にしているのは間違いない。
「アック様、アレが何だか分かりますかっ?」
「どれどれ……」
【シャドウ・ディルア シャドウ族 遺跡の墓から何度も出現する】
ディルアといえば、ザヴィ遺跡で遭遇した人型機械。
もう戦うことが無いと思っていたが、遺跡巡りをしている以上仕方が無い話か。
「ウニャ? ロボット?」
「シーニャ、あれは遺跡にいた機械だぞ。強くは無いが、一撃の威力は侮れないから注意だ」
「ふんふん……あれもドワーフが得意なのだ! シーニャ、見ているから早くやっつけて来いなのだ!」
「ええぇ!? あれもわたしがやるんですか~!? アック様でいいじゃないですか~」
それもそうだと思ったが、言葉とは裏腹にルティは戦いたそうにしている。
後から文句を言われても面倒なので、ここも任せることにした。
「頼むぞ、ルティ!」
「い、行くです~!! とおぉぉぉぉ!」
ルティが拳を振り回しながら走って行く。
――行ったが、すぐに戻って来た。
「アック様、駄目でした……」
「何が?」
「拳を当てる前に手にしている剣にガードされまして、届かないです」
「剣が? ディルアじゃなくてか?」
「はいです……」
シャドウ族となっているが、本体は剣ということか。
「ドワーフに任せたら駄目だったのだ! シーニャが倒して来るのだ! ウニャ」
「あ、待っ――」
止める前にシーニャが向かってしまったが、やはり彼女もすぐに戻って来た。
「ウニャ……駄目なのだ。アック、アックが行くしか無いのだ……」
「どんな剣だったか見たかい?」
「ドロドロの剣だったのだ。真っ黒に染まっててよく分からないのだ。シーニャが近づいた途端に攻撃して来たのだ」
やはり剣が本体か。
近づけないほど敵意をむき出しにしているということは、それなりの強さだということだ。
しかし素早さのある二人が近づけないとなると、簡単にはいかない。
幸いにして魔法使用の制限は無いが、この空間で何が通じるのか。
「ルティとシーニャは、他に敵が来たら攻撃してていいぞ。おれがシャドウ・ディルアをやるから」
「ウニャッ!」
「お任せ下さいっ!」
敵に向かおうとしていたら、間近にまで迫っていたらしく目の前に現れた。
「…………ギッギギッ――」
手にしている剣は両手剣のようだ。
しかし本体が剣だとすれば、ディルアはあくまで使われているだけにすぎない。
「まずは……燃やすか。ほらっ、《インテンスヒート》だ!」
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