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第十八章:遺物の導き
349.リオング・メイズ③ フィーサパート
しおりを挟む彼女たちは人化したフィーサを先頭に、迷うことなく進んでいる。
行き止まりの無い水路をしばらく進んでいると、大きな橋が待ち受けていた。
「おかしいなの!!」
ミルシェとサンフィアをしり目に、前を歩くフィーサが突然声を張り上げる。
しかしマイペースの二人は、騒ぐフィーサの元に中々近付いて行かない。
「そこの二人! 早く来るなの!! 早く早くなの!」
「――全く、やかましいわね。何なのかしら?」
「ふん、我を放置したくせにすぐに頼るとは。何事だ?」
ミルシェたちは面倒くさそうにしながら、フィーサに近付いた。
「この橋はおかしいなの! ここを触って欲しいなの!!」
フィーサが立っている場所は、何の変哲もない橋の中央付近。
どういうわけかフィーサはそこで立ち止まっているようで、ミルシェたちに手招きをしている。
「全く、何でそんな何もない所で騒いでいるというの?」
「騒がしい奴め。何だというのだ?」
「見えないけど、ここにあるなの!」
「――む? 透明の壁……か?」
「本当ね……確かに壁があるわ。もしかしてここから先には進めないということかしら?」
フィーサに従って、二人は目の前に向かって渋々腕を伸ばした。
するとフィーサの言うとおり、橋の継ぎ目にしか見えない所に壁があった。
「……これは幻では無いな。だとして、どうするつもりがある?」
「確かに幻とかでは無さそうね。あたしからは何とも言えないけど、あなたなら何とか出来るのでは?」
「色々試したなの。でもでも、全く攻撃が当たらないなの。どうしようもないなの……」
フィーサは魔法はもちろんのこと、剣の形状を自在に変えられる。
それでも見えない壁に対しては、どうすることも出来ず途方に暮れているようだ。
「神剣である貴様が何も出来ないのならば、ここは引き返すしか無いだろう。時間の無駄を過ごすつもりなど、我には無い!」
「むむぅ、仕方が無いなの。悔しいけど来た道を戻るしか無いなの」
「あら? さっきそこにルティの姿が見えた気がするんだけれど気のせい?」
「ど、どこなの!?」
ミルシェの言葉にフィーサは慌てて振り向いた。
――ものの、すぐに落胆してしまった。
「……気のせいだったかしらね」
「小娘のくせにお騒がせするなんて、ムカムカするなの!! こうなったら、思いきりぶん回してやるなの! ミルシェとサンフィアは離れていて欲しいなの」
「足掻きでも何でも、やってみるのはいいことだわ」
「ふん」
フィーサは見えない壁に向かって、内在している魔力と物理攻撃力の全てをぶつけ、そのまま勢いよく風属性を付与して斬り込んだ。
「やったなの!! これで何かが起きるのは間違いないなの!」
「お、おい、貴様! 何をした? 床全体が揺れているぞ?」
「……こ、これは、まずいことになるんじゃないかしら……あなた、一体何を繰り出したの?」
「何って、風を付けて《一刃の斬撃》を――えっ……!?」
見えない壁から弾かれた斬撃の威力が、彼女たちの足下を激しく揺らしている。
そして――
「キャアァァァッ!! お、落ちるーー!」
「お、おのれ、小娘の分際で」
「し、失敗したなの……。せ、せめてダメージを受けないようにするから、許して欲しいなのー!」
フィーサの斬撃は、ものの見事に床に大穴を開けていた。
その結果体力を失っていたサンフィア、そしてミルシェもろとも穴底に落としてしまった。
「イスティさま、どうかどうかわらわたちを探して欲しいなの……」
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