上 下
349 / 577
第十八章:遺物の導き

349.リオング・メイズ③ フィーサパート

しおりを挟む

 彼女たちは人化したフィーサを先頭に、迷うことなく進んでいる。
 行き止まりの無い水路をしばらく進んでいると、大きな橋が待ち受けていた。

「おかしいなの!!」

 ミルシェとサンフィアをしり目に、前を歩くフィーサが突然声を張り上げる。
 しかしマイペースの二人は、騒ぐフィーサの元に中々近付いて行かない。

「そこの二人! 早く来るなの!! 早く早くなの!」 
「――全く、やかましいわね。何なのかしら?」
「ふん、我を放置したくせにすぐに頼るとは。何事だ?」

 ミルシェたちは面倒くさそうにしながら、フィーサに近付いた。

「この橋はおかしいなの! ここを触って欲しいなの!!」

 フィーサが立っている場所は、何の変哲もない橋の中央付近。
 どういうわけかフィーサはそこで立ち止まっているようで、ミルシェたちに手招きをしている。

「全く、何でそんな何もない所で騒いでいるというの?」
「騒がしい奴め。何だというのだ?」
「見えないけど、ここにあるなの!」
「――む? 透明の壁……か?」
「本当ね……確かに壁があるわ。もしかしてここから先には進めないということかしら?」

 フィーサに従って、二人は目の前に向かって渋々腕を伸ばした。
 するとフィーサの言うとおり、橋の継ぎ目にしか見えない所に壁があった。

「……これは幻では無いな。だとして、どうするつもりがある?」
「確かに幻とかでは無さそうね。あたしからは何とも言えないけど、あなたなら何とか出来るのでは?」
「色々試したなの。でもでも、全く攻撃が当たらないなの。どうしようもないなの……」

 フィーサは魔法はもちろんのこと、剣の形状を自在に変えられる。
 それでも見えない壁に対しては、どうすることも出来ず途方に暮れているようだ。

「神剣である貴様が何も出来ないのならば、ここは引き返すしか無いだろう。時間の無駄を過ごすつもりなど、我には無い!」
「むむぅ、仕方が無いなの。悔しいけど来た道を戻るしか無いなの」
「あら? さっきそこにルティの姿が見えた気がするんだけれど気のせい?」
「ど、どこなの!?」

 ミルシェの言葉にフィーサは慌てて振り向いた。
 ――ものの、すぐに落胆してしまった。 

「……気のせいだったかしらね」
「小娘のくせにお騒がせするなんて、ムカムカするなの!! こうなったら、思いきりぶん回してやるなの! ミルシェとサンフィアは離れていて欲しいなの」
「足掻きでも何でも、やってみるのはいいことだわ」
「ふん」

 フィーサは見えない壁に向かって、内在している魔力と物理攻撃力の全てをぶつけ、そのまま勢いよく風属性を付与して斬り込んだ。

「やったなの!! これで何かが起きるのは間違いないなの!」
「お、おい、貴様! 何をした? 床全体が揺れているぞ?」
「……こ、これは、まずいことになるんじゃないかしら……あなた、一体何を繰り出したの?」
「何って、風を付けて《一刃の斬撃》を――えっ……!?」

 見えない壁から弾かれた斬撃の威力が、彼女たちの足下を激しく揺らしている。
 そして――
 
「キャアァァァッ!! お、落ちるーー!」
「お、おのれ、小娘の分際で」
「し、失敗したなの……。せ、せめてダメージを受けないようにするから、許して欲しいなのー!」

 フィーサの斬撃は、ものの見事に床に大穴を開けていた。
 その結果体力を失っていたサンフィア、そしてミルシェもろとも穴底に落としてしまった。
 
「イスティさま、どうかどうかわらわたちを探して欲しいなの……」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

えっ!?俺が神様になるの? チートで異世界修行物語。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:3,414

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:2,948

真実の愛に目覚めた伯爵令嬢と公爵子息

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,809

俺は特攻隊員として死んだ

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:12

異世界でもプログラム

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:307

初対面の不愛想な騎士と、今日結婚します

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,871

【完結】異形の令嬢は花嫁に選ばれる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:190

処理中です...