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第十七章:遺跡群
330.出迎えドワーフとチャルカ給水拠点
しおりを挟むシーニャを下がらせて向かって来る何かに備えていると、地面を這いずる音が聞こえて来る。
その音が聞こえて来た時点で、得体の知れない敵だと認識した。
「ウニャ、熱を帯びているものが近づいて来てるのだ……熱い、熱すぎるのだ」
壁際に立っているシーニャからでも、異様な熱さを感じているようだ。
そしてそいつは、正体に悩ませる前に突っ込んで来た。
「ウジュジュジュッ!!」
シーニャではなくおれに対し、しなやかなムチのような動きを見せて来る。
地上ではあまり見かけないがやはりここには、そういう類の魔物が棲息しているようだ。
「……なるほど。炎属性に特化してるからこそ、バフ無視で攻撃を当てて来れるわけか」
「アック! そいつは何なのだ? グニャグニャしてて嫌なのだ!」
「こいつはスライムだな。それも、サーマルスライムってやつだな。シーニャは触れちゃ駄目だぞ」
「ウ、ウニャ」
シーニャはあまり見たことが無いようで、素直に驚いている。
その辺のスライムと違い、炎の塊のような外見だ。耐性が無ければ逃げ出してもおかしくない。
炎属性のスライムということは、普通に生息するスライムとは弱点がまるで異なることを意味する。
ルティたちは、このスライムを気にせずに進むことが出来たのだろうか。
もしくは時間差の関係で、こいつとは出遭うことが無いまま進んだ可能性がある。
仮に出遭っても、ルティとフィーサなら難なく倒すはずだ。
「襲われた以上、倒しておくか」
「どうするのだ? こんな相手にどう戦えばいいのだ?」
「弱体攻撃なら、相反属性でも当たるからな。麻痺と毒で、放置しておく! そうすれば、自然に消えるだろうしな」
弱体を当てようとすると、スライムは連続した攻撃を繰り出して来た。
攻撃が当たることを分かっているような動きで、何度も触手を伸ばして来る。
「ウジュ……【フレイムカット】!!」
「うおっと――!? 炎属性攻撃か! 見た目に反して攻撃性が高いな」
スライムの触手は、おれのバフを無視して【フレイムカット】という炎属性の物理攻撃を当てて来た。
物理無効のモンスターである以上、拳や爪では反撃が難しいことは明らかだ。
「ジュジュゥ!」
侵入者を排除する為だとしても、こいつは中々の強さを持っている。
その意味でも、倒すことを考えるよりも弱らせる方が有効のはず。
「――これならどうだ? 《フロスト・ベノム》!」
氷属性になるが、効果は麻痺にさせることが出来るうえ、毒効果も付加させられる。属性制限下でも、弱体系が有効なのは助かるところだ。
「ウニャ? 動かなくなったのだ。死んだのだ?」
「いや、動けなくなっただけで死んではいないな。このまま放置しておけば、瀕死状態にはなると思うぞ」
――とはいえ知らずに触れてしまえば、触れた相手を瀕死にするくらいの強さはある。
このダンジョン内には、その可能性を残した連中が残っているが。
「もう大丈夫なのだ?」
「ああ。先の方……まぁ、建造物が見えているけど。そこに進もう」
「分かったのだ!」
炎属性スライムとの戦いを終え、おれとシーニャは小屋のある所にたどり着いた。
村のような感じにも見えるが、井戸のようなものがあるだけで住める場所には見えない。
「ルティたちが待っているでも無さそうな場所だな」
「一体どこに行ったのだ?」
遠くから見えていた小屋は、扉すら無いむき出しの小屋だ。
何年も放置された道具が転がっているだけで、目ぼしいものは無いように思える。
似たような小屋がいくつかあるようで、いちいち中を確認する必要は無さそうだ。
ダンジョン内にこんな場所があるというのも驚きだが、何の為に存在しているのか。
そう思いながら、二人で周辺を見て回っていると――
「スライムはどうした? 客人」
見ていない小屋の内の一つから、誰かが出て来て声をかけて来た。
その者の姿は、どう見てもドワーフそのものに見える。
「ド、ドワーフ!? 何でここに……」
「……チャルカにたどり着いたということは、外からの客人なのだろ?」
「え、チャルカ?」
「――ここは、チャルカ給水拠点……ドワーフの拠点だ」
各地に点在すると言われるドワーフとはいえ、まさかダンジョン内にいるとは。
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