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第十六章:エンシェント・エリア

320.導きの精霊竜、翼を広げる

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 フィーサの機嫌を取りながら、おれたちは城の中を一通り見て回っている。
 サンフィアとは途中ですれ違った。

 しかし一緒に見て回る気が無いのか、別の所を見て回っているようだ。

「アックさま。やはりイデアベルクへ帰した方がよろしいのでは?」
「んー……それは考えているが……、ここからどうやって」
「そうですわね……」

 専用の精霊魔石を得たことで、サンフィアは戦力の一つとして考えられるようになった。
 しかしルティと似て、別の意味で暴走しかねない恐れがある。

 そう考えるとその力を、イデアベルクの為に使って欲しいと思ってしまった。
 彼女を旅に連れて行くことを頼まれたとはいえ、どうしたものだろうか。

「アック様、アック様。その剣はどうしちゃったんですか~?」
「ん?」

 魔剣ルストは完全に沈黙していて、音も動きも出していない。
 神剣であるフィーサと相性の問題なのかは不明だが、廃城の中を歩き回っていたら静かになった。

「フィーサが人化したら静かになりましたけど~、ずっとそのままなんでしょうか?」
「今のところは問題無いな。それよりも、この城は本当に何も無いんだな?」
「はいっっ! 何せ孤島にぽつんとあるお城ですから! 大昔は精霊さんが多く住んでいたみたいですし、危険なことになるようなものは残さなかったじゃないかなぁと」

 ルティの話によると、かつて王国だったこの城は孤島の中にあるらしい。
 イデアベルクのように多種族が居着き、精霊や獣人が治めていた国だったようだ。

 その話を聞いて確信したが、廃城に来てから彼女たちは楽そうにしている。
 地下倉庫は違ったが、他の部屋からは精霊に似た気配があった。

 恐らくそのことで、気分的に違ったのだろう。

「外はどこから出られるんだ?」
「こっちですよ~! さぁさぁ、こっちへ~!」
「いや、引っ張らなくても……」

 寂しい思いをさせすぎたせいか、ルティのスキンシップがやたらと増えた。
 しかし嫌という程でも無いので、これについてはなるべく強く言わないことにした。

「ウニャ? 外に行くのだ?」
「そうみたいだ。シーニャはミルシェたちとついて来てくれ」
「分かったのだ!」

 廃城の中を歩き回った限りでは、特に気を付ける物が無かった。
 強いて言えば、サンフィアが使った精霊が魔剣ルストに刺激を与えたくらい。

 フィーサは剣に戻ることなくついて来ている。
 魔剣との違いは両手剣と片手剣ということになるが、使い道はそれぞれで考えるしか無い。

 毎回暴走されても困るが、それについては他の場所で試すしか無いだろう。

 ルティに連れられて外へ出た。
 廃城を外から見ると、岩をくり貫かれて作られた城のようで、視界上からは岩しか見えない。
 
 神族国ヘリアディオスに似てもいるが、ここは完全に外界から遮断された孤島のようだ。
 空もしくは、移動魔法でしか来られないことが分かる。

「ここへはウルティモが連れて来たんだったか?」
「そうなんですよ~。うちの常連さんでして」
「何か言ってなかったか?」
「精霊竜の言葉を頼って、ここにたどり着いたとか何とか……」

 アヴィオルが何か知っていそうだ。
 それにここから飛び立つには、精霊竜である彼女の力が必要となる。

「ルティちゃんとイスティさま、アヴィを呼んだ~?」

 シーニャとミルシェは動き回っているが、アヴィオルだけはすぐ近くにいた。
 ルティが思っていたことが伝わっていたようで、彼女はすぐに話を理解してくれた。
 
「――ってことで、遺跡に関してもし君に何らかの役目があるなら、それを使ってもらえると助かるんだけど……」

 おれたちは、遺跡の地下から廃城に上がって来られた。
 しかしザームの連中に出遭えず、魔導士と遭遇しただけで大して進むことが出来ていない。

 このままでは、追い付けないどころか似た場所にしか進めない可能性がある。
 それもあってアヴィオルに話してみたが、彼女は笑顔で頷いた直後、竜に変化してみせた。

「イスティさまから言われたらその通りにしろって言われてたから、みんなを乗せて移動するよ~!」
「言われたってのは、ウルティモ?」
「そうだよ~! ここから飛んでいかないと入れない遺跡があるんだって~!」
「やっぱりそういうことか」
 
 ザームの連中には、盗賊剣士であるジオラスがついている。
 恐らく遺跡の進み方は、誰よりも分かっているはずだ。

「あれれ、アック様? アヴィに乗るんですか?」
「ああ。ここから移動する。シーニャとミルシェ、それとサンフィアを探して来てくれ」
「はいっっ! 分かりました~!」
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