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第十六章:エンシェント・エリア

317.精霊の試し撃ち

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「アック様、こっちですこっちー!」

 エルフであるサンフィアにも専用魔石が出来た。
 それがきっかけというわけでも無かったが、イーク村に留まる意味が無くなってしまった。

 そんなこともありおれたちはルティの先導で、王国があったとされる城に向かうことにした。
 シーニャとミルシェからは特に異論もなく、黙ってついて来ている。

 サンフィアはおれの隣を歩いているが、よほど嬉しいのか魔石をずっと眺めてうっとりしまくりだ。

 イーク村から進む道は、全て岩肌が露わになった洞窟が続いている。
 状況が見えていないのか、よそ見をしているサンフィアは何度も転びそうになっていた。

「……夢中になるのはいいが、気を付けてくれよ?」
「す、少しくらい、いいではないか! 我にだって貴様以外に夢中になるものくらいあるのだぞ!」

 サンフィアはシーニャたちと違い、途中で行動を共にすることになった。
 様子を見る限りでは、実力差を相当気にしていたらしい。

 それが今、魔石を手にしたことで、ようやく素直な感情を出したようだ。

「アック様、アック様!! 大変ですーー! こっちへ来てくださいー!!」

 しばらく敵どころか罠にもかからずに歩いていたら、ルティが騒いでいる。
 どうやら城への入口を見つけたらしい。

 ルティの声に反応して、シーニャとミルシェが先に進んだようだ。
 しかし――

「アック! 早く来るのだ!! よく分からないけど大変なのだ」

 シーニャが手をぶんぶんと振りながら、おれを呼んでいる。
 横穴があるらしく、そこから行けるようだ。

「サンフィア。そろそろ魔石をしまっていいか?」
「……む? 専用魔石なのに、何故貴様に預けなければならない?」
「ガチャをする時に必要だからな。それに専用魔石といっても、君自信がその魔石で何かが出来るわけじゃない。それは理解して欲しいんだが……」
「断る。我の魔石はエルフ族のものでもある。魔石で何かするなど考えてもいないぞ! 我のお守りなのだからな!」

 お守りと言われてしまうと強くは言えそうにない。
 サンフィアの魔石はエルフ専用のような気もするし、ここは彼女に預けたままにした方が良さそうだ。

「分かった。そういうことならそのままでいい。ガチャをして欲しい時は渡してくれればいい」
「当然だ」

 変な所でプライドが高いようだ。
 しかし言われないだけで、実はシーニャたちも専用魔石を持っておきたいのだろうか。

 彼女たちが何かの恩恵が得られるとしたら、持たせてもいいかもしれない。

「シーニャ、どうした? この奥に入口があるんだろ?」
「ウニャ……ドワーフが疑ってばかりなのだ。アックが解決するのだ!」
「疑い?」
「とにかく、こっちなのだ! 早く早くなのだ!」
「こ、こら……そんなに引っ張らなくても」

 何を言っているのか分からないが、シーニャに引っ張られながら奥へ進んだ。
 横穴からしばらく進んだ先には、首を傾げている二人の姿があった。

 どうやら行き止まりのようだが。

「アックを連れて来たのだ!」
「遅かったですわね。まぁ、急いだところでご覧の有様ですけれど……」
「あぅぅ~はうぅぅ~……おかしい、おかしいですよぉぉ」

 ミルシェは冷静にしているが、ルティは今にも泣き出しそうにしている。
 どうやらここが例の入口付近のようだ。

「――で、ルティ。ここから城に行ける……いや、来たんだな?」
「そうなんですよぉぉ!! 本当にここから来たんです~それなのに~……」
「どう見ても壁だな。塞がっているのか、塞がれたのかは分からないけど」
「ここには本当にアーチ状の入口があるんですよぉぉ!」

 ルティの様子を見る限り、嘘をついているようでは無さそうだ。
 しかし完全に岩の壁が見えているだけで、確かめようがない。

「……ふん、そこをどけ! 我が邪魔な岩を吹き飛ばしてくれる! それに、そこの娘の言っていることは確かだ。我もそこから来たのだからな!」
「む、そうなのか。だったらおれが飛ばしても――」
「精霊の試し撃ちをする! それに貴様では、正確な入口の位置までは分からないだろう?」

 ゆっくりとしていたサンフィアが、横穴に入って来た。
 しかも早速精霊の力を使って、塞がれた岩壁を吹き飛ばすらしい。

「それならやってみてくれ」

 横穴自体が狭いこともあって、サンフィア以外の彼女たちには後ろに下がらせた。
 さらには、ミルシェの防御壁で巻き添えにならないようにした。

「――時は来た! 我はエルフの賜りを備うる者。我を導け! 《ゼファー》!!」
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