310 / 577
第十六章:エンシェント・エリア
310.ザヴィ・デ・イーク境域の戦い 4
しおりを挟む
「わあああーー!? こんなの無茶ですよぉぉ!」
「ルティの拳なら問題無いはずだ。頑張れ」
「はひぃぃぃ」
ヘルフラムという女魔導士を逃がしたおれは、ミルシェたちを襲っていた魔法を難なく消した。
魔導士の攻撃魔法は解消され、おれたちは鉄扉を開けてグレイヴヤードをようやく脱する。
そこまでは良かったが、ミルシェは魔力をかなり消耗し、シーニャは降り注ぐ氷の刃を砕き続けたことにより、ルティ以外の二人は明らかに疲れが生じていた。
しかしどこかに座って休む程、ここが安全な場所とは言い難い。
その意味でも、とりあえずそのまま歩き続けることにした。
鉄扉を抜けた先の通路は、横並びで歩けるくらい広くて歩きやすい空間だ。
敵の気配も無く穏やかな時間が流れたかに思えたが、どうやら甘くは無かったらしい。
おれたちは境界内のエリアが変わったとされる地点に入った。
その途端のことになるが、どこに隠れていたのかというくらいの人型機械が、いきなり大量に現れたのである。
「――なるほど。これが厄介な境域になるわけか」
「はぇ?」
「エリアの境目のことだ」
この場所のことは、サーチを使った時にひそかに見えていた。
ディルアのグレイヴヤードという場所が分かった時だったが、エリア全体の"名称"のようなものだと思って特に気にも留めていなかったわけだが――。
「ウニャ……戦うのだ?」
「ふぅっ、この遺跡は戦いばかりですのね」
「…………二人は休んでていいぞ。こいつらは、おれとルティだけでいい」
ミルシェの表情を見ると、何度も同じ魔法を防いで来たことによる疲労が溜まっているようだ。
シーニャは同じ動きをして来たことで、だるそうにしている。
二人とは対照的なのがルティだ。
ミルシェの所にいたものの、氷を砕いていたのはほとんどシーニャだけだったらしい。
そのせいでシーニャは疲れを見せ、ルティだけは体力が有り余っている。
「アック様、アック様! 魔導士を、どうして逃がしちゃったんですか?」
「ザームの連中のことを聞いたからだな」
「ええ? 氷の魔法攻撃は止まらなかったのに?」
ルティは特に何もしていないのに、随分と食い下がって来るな。
ここで彷徨った挙句、おれの偽者と戦い続けたことで拗ねているのか。
これは嘘でも調子に乗らせた方が良さそうだ。
「……氷を止めたら、ルティが襲って来ると思っていたかららしいぞ」
「それってつまり、わたしを恐れたということですか?」
「ま、まぁな」
「ふおぉぉ!! それなら仕方が無いですっ! じゃあ片付けちゃいますよぉぉ!!」
おだてたことで、気合も入ったようだ。
おれたちの前には、ディルアが大量に立ちふさがっている。
識別番号を見ると、【XV】と記された奴ばかりだ。
ナンバー自体にどんな意味があるかは不明だが、今のところ脅威は感じられない。
「ルティ! 全て破壊していいぞ!」
「はいっっ!!」
ディルアの動力源もまだよく分かっていないが、魔石が関係している可能性がある。
それにミルシェが持っていた魔石に反応したのが、今後に繋がることになるかもしれない。
それにしても単純攻撃で突っ込んで来る相手には、ルティの拳が最適すぎる。
魔法を使って来るわけでもないし、彼女にとっては戦いやすいはず。
かくいうおれも、魔剣ルストの試し斬りが出来るという意味では、その機会を得られた感じか。
「――無数に刻め!」
ルティの拳とは別に、四、五体で向かって来るディルアに対し、おれは魔剣で斬撃を繰り返す。
切れ味を試すには丁度いいということもあるが、避けることも無い相手なだけに物足りなさがある。
「テンソウ、テンソウ……」
(ん? 転送? 攻撃データでも送っているのか)
片手剣である魔剣ルストの攻撃力は今のところ、驚くような感じじゃない。
切れ味に関していえば、フィーサの方がよく斬れる感覚がある。
この魔剣は武器を吸収して成長する剣のようでもあるし、どの敵と相性がいいのかはまだ不明だ。
「とぉりゃああぁ~!」
ルティの方はというと、以前と変わらない破壊力を発揮している。
一時的に弱っていたこともあるが、魔石も覚醒したことで存分に振れている感じか。
ディルアの装甲は硬そうな見た目に反して、ルティの拳であっさり破壊されている。
恐らく格闘属性に耐えられる作りじゃないのだろう。
斬撃は相手を選ばないが、ルティのような格闘属性は相手次第で無双出来る可能性を秘めていそうだ。
そうこうしているうちに、あらかた片付いたようでルティが戻って来る。
「大丈夫だったか?」
「ふぅっ、いい汗がかけましたですっ! アック様は拳を使わなかったんですか?」
「おれは剣があったからな」
「なるほどです~。アック様は色んな武器を使いこなせますもんね」
武器といえば、フィーサとはいつ再会出来ることになるのか。
そういえば、ルティから詳しいことを聞いていないままだった。
「あー、ところで――」
「うぎぎっ!? ア、アック様、何だか体が痺れて来ました……」
「痺れ? どの辺が?」
「はへぇぇぇ……」
あっさり片付いたと思えばルティに痺れが生じるとか、これも遺跡の罠なのか。
「ルティの拳なら問題無いはずだ。頑張れ」
「はひぃぃぃ」
ヘルフラムという女魔導士を逃がしたおれは、ミルシェたちを襲っていた魔法を難なく消した。
魔導士の攻撃魔法は解消され、おれたちは鉄扉を開けてグレイヴヤードをようやく脱する。
そこまでは良かったが、ミルシェは魔力をかなり消耗し、シーニャは降り注ぐ氷の刃を砕き続けたことにより、ルティ以外の二人は明らかに疲れが生じていた。
しかしどこかに座って休む程、ここが安全な場所とは言い難い。
その意味でも、とりあえずそのまま歩き続けることにした。
鉄扉を抜けた先の通路は、横並びで歩けるくらい広くて歩きやすい空間だ。
敵の気配も無く穏やかな時間が流れたかに思えたが、どうやら甘くは無かったらしい。
おれたちは境界内のエリアが変わったとされる地点に入った。
その途端のことになるが、どこに隠れていたのかというくらいの人型機械が、いきなり大量に現れたのである。
「――なるほど。これが厄介な境域になるわけか」
「はぇ?」
「エリアの境目のことだ」
この場所のことは、サーチを使った時にひそかに見えていた。
ディルアのグレイヴヤードという場所が分かった時だったが、エリア全体の"名称"のようなものだと思って特に気にも留めていなかったわけだが――。
「ウニャ……戦うのだ?」
「ふぅっ、この遺跡は戦いばかりですのね」
「…………二人は休んでていいぞ。こいつらは、おれとルティだけでいい」
ミルシェの表情を見ると、何度も同じ魔法を防いで来たことによる疲労が溜まっているようだ。
シーニャは同じ動きをして来たことで、だるそうにしている。
二人とは対照的なのがルティだ。
ミルシェの所にいたものの、氷を砕いていたのはほとんどシーニャだけだったらしい。
そのせいでシーニャは疲れを見せ、ルティだけは体力が有り余っている。
「アック様、アック様! 魔導士を、どうして逃がしちゃったんですか?」
「ザームの連中のことを聞いたからだな」
「ええ? 氷の魔法攻撃は止まらなかったのに?」
ルティは特に何もしていないのに、随分と食い下がって来るな。
ここで彷徨った挙句、おれの偽者と戦い続けたことで拗ねているのか。
これは嘘でも調子に乗らせた方が良さそうだ。
「……氷を止めたら、ルティが襲って来ると思っていたかららしいぞ」
「それってつまり、わたしを恐れたということですか?」
「ま、まぁな」
「ふおぉぉ!! それなら仕方が無いですっ! じゃあ片付けちゃいますよぉぉ!!」
おだてたことで、気合も入ったようだ。
おれたちの前には、ディルアが大量に立ちふさがっている。
識別番号を見ると、【XV】と記された奴ばかりだ。
ナンバー自体にどんな意味があるかは不明だが、今のところ脅威は感じられない。
「ルティ! 全て破壊していいぞ!」
「はいっっ!!」
ディルアの動力源もまだよく分かっていないが、魔石が関係している可能性がある。
それにミルシェが持っていた魔石に反応したのが、今後に繋がることになるかもしれない。
それにしても単純攻撃で突っ込んで来る相手には、ルティの拳が最適すぎる。
魔法を使って来るわけでもないし、彼女にとっては戦いやすいはず。
かくいうおれも、魔剣ルストの試し斬りが出来るという意味では、その機会を得られた感じか。
「――無数に刻め!」
ルティの拳とは別に、四、五体で向かって来るディルアに対し、おれは魔剣で斬撃を繰り返す。
切れ味を試すには丁度いいということもあるが、避けることも無い相手なだけに物足りなさがある。
「テンソウ、テンソウ……」
(ん? 転送? 攻撃データでも送っているのか)
片手剣である魔剣ルストの攻撃力は今のところ、驚くような感じじゃない。
切れ味に関していえば、フィーサの方がよく斬れる感覚がある。
この魔剣は武器を吸収して成長する剣のようでもあるし、どの敵と相性がいいのかはまだ不明だ。
「とぉりゃああぁ~!」
ルティの方はというと、以前と変わらない破壊力を発揮している。
一時的に弱っていたこともあるが、魔石も覚醒したことで存分に振れている感じか。
ディルアの装甲は硬そうな見た目に反して、ルティの拳であっさり破壊されている。
恐らく格闘属性に耐えられる作りじゃないのだろう。
斬撃は相手を選ばないが、ルティのような格闘属性は相手次第で無双出来る可能性を秘めていそうだ。
そうこうしているうちに、あらかた片付いたようでルティが戻って来る。
「大丈夫だったか?」
「ふぅっ、いい汗がかけましたですっ! アック様は拳を使わなかったんですか?」
「おれは剣があったからな」
「なるほどです~。アック様は色んな武器を使いこなせますもんね」
武器といえば、フィーサとはいつ再会出来ることになるのか。
そういえば、ルティから詳しいことを聞いていないままだった。
「あー、ところで――」
「うぎぎっ!? ア、アック様、何だか体が痺れて来ました……」
「痺れ? どの辺が?」
「はへぇぇぇ……」
あっさり片付いたと思えばルティに痺れが生じるとか、これも遺跡の罠なのか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる