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第十六章:エンシェント・エリア
307.ザヴィ・デ・イーク境域の戦い 1
しおりを挟むようやく気づいてくれたルティは、何度も頭を下げて謝りまくっている。
攻撃して来たことに怒りは無く、むしろ彼女の強さを再認識出来ただけでも良かった。
それよりも、どうやってここまで来られたのかを聞く方が重要だ。
「はふうぅ~アック様が本物で良かったですぅぅぅ」
「よくもまあ何度も騙されるものですのね。どうみても機械だというのに!」
「はぇぇ……ミルシェさんだって一人でいたら、絶対騙されちゃいますよぉぉ~」
ルティの話によるとディルアなる人型機械は、おれの声と姿を似せて現れた。
遺跡の中を彷徨い歩いていた所に現れたことで、疑うことなく近付いてしまったらしい。
しかしいざ近づくと、そいつはただの人型機械でおれでは無かった。
おびき寄せたディルアはすぐに攻撃を仕掛けて来たが、それをルティはあっさり撃破した。
撃破しても偽物として何度か近付いて来たことで、とにかく破壊しまくったというのが理由なのだとか。
「アック、こっちに何か落ちているのだ! こっちに来て欲しいのだ」
ディルアの残骸がある採石場側で、シーニャが何か見つけたようだ。
「シーニャ。どうした?」
「アックが持つ石みたいなのが落ちているのだ」
「魔石みたいだな。光は失われているようだが、もしかして魔石が動力源なんじゃないだろうな」
「ウニャ?」
壁面通路の魔石と採石場での出来事から、ルティへの動き。
魔石についても意味は無いと思っていたが、すでに遺跡による罠が発動している可能性が高い。
「光っていた魔石とそうじゃない魔石。人型機械が攻撃して来るのも、魔石の仕業ってことか」
「アック、落ちている魔石はどうするのだ?」
「これは拾わずにそのままにしとく。キリが無いからな」
そういえばミルシェは、まだ拾った魔石を持っていただろうか。
そうだとしたら、すぐに捨てさせないと人型機械に追尾されかねない。
「アック! 尖った氷が天井からたくさん降って来るのだ!!」
「――むっ」
「全部砕いてやるのだ! ウニャッ!!」
天井部分は気にしていなかったとはいえ、さっきまでは何も無かったはず。
そうなるとこれは魔法によるもので間違いない。
【ヘルフラム・エグリー 所属:ザーム教導魔導隊】
とっさにサーチをかけたが、やはりザームの者が近くに来ているようだ。
一人しか見えないということは、こいつの仕業か。
シーニャが爪で砕いているが、しつこいくらいに絶え間なく降って来ている。
これは明らかに敵意を持った攻撃だ。
「キリが無いのだ……ウニャ」
「シーニャ、いいよ。後はおれがやるから」
「ウニャ」
「……《フレイムバースト》!」
恐らく遠隔魔法による攻撃だろうが、高位魔法使用者に違いない。
こうなるとルティたちが心配だ。
「ウニャニャ!? 落ちて来なくなったのだ! すごいのだ~」
「ここはもう大丈夫だ。ルティたちの方に行こう」
採石場側にいるおれたちとは別に、通路中央にいるミルシェたちも魔法攻撃を受けていた。
だがミルシェによる水の守りで自分たちを覆っていて、何も問題は起きていないようだ。
「あっ、アック様! いきなり魔法がですね~」
「ミルシェとルティは、そのままそこで待機でいいぞ」
「分かりましたわ!」
「えぇ!? 置いて行かないでくださぁぁい!」
ディルアの墓場から離れ、先の方に進むと、そこには閉じられた鉄扉があった。
ルティがどこから墓場に迷い込んだかはさておき、敵は鉄扉の向こう側にいるようだ。
鉄扉を壊すのは簡単だが、誘い込む罠であることは間違いない。
しかも二か所同時に属性魔法を使用出来る相手だ。
相当な自信を持っているはず。
「アック!! 何か文字みたいなものが鉄扉に見えているのだ!」
「――! 魔法文字か?」
「読めないのだ。何て書いてあるのだ?」
おれ以外にルーンを使う奴がいるとは驚きだ。
姿を見せずに伝えて来る敵というのも、初めてのことになる。
「……【ドワーフ、獣、怪物、そしてイデアベルクの男は墓場で消す】か。大した自信だな」
「シーニャ、獣じゃないのだ!」
怒る所はそこじゃないが、遠隔魔法は相手として非常に面倒だ。
姿を見せずに単独で行動しているのも気になるが、ここは試してみるか。
「どうするのだ、アック? 鉄扉を壊すのだ?」
「――いいや、もっといい方法がある。とりあえず、シーニャはミルシェたちの下へ行っててくれ」
「分かったのだ!」
神族国家ヘリアディオスで覚えた暗黒魔法を試して、奴を目の前に呼ぶことにする。
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