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第十六章:エンシェント・エリア

298.魔剣の目覚め

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「けっ、獣人を連れて来て多勢を任せ、オレらしかいない楽な方に来た奴が偉そうに!」
「楽……ねぇ。一応聞いておくが、お前らは何者だ? 何故ここを襲う?」

 シーニャがいる方をチラッと見ると、痛そうに転がる連中がひしめき合っている。
 確かに数で言えば楽と言えるだろうか。

 しかしここにいる連中がレア持ちという時点で、魔石が自然と導いたと思っても不思議じゃない。
 錆びた剣も見た目こそ笑われてしまうが、レア確定で出た武器だ。

 何かの意思が働いている可能性がある。

「オレらはザーム共和国から選ばれた精鋭メンバーだ! 見ての通り、優秀な剣士ってやつだ。てめえみてぇな錆びた剣しか持てねえ野郎じゃぁ、分かんねえだろうがな!」

 ――なるほど。さっぱり分からないな。

 三人ともレアな両手剣を手にしているのは見て分かるが、口先だけは優秀過ぎるくらい雑魚臭を感じさせている。 

「優秀? Sランクってことか?」
「よく分かってるじゃねえか! ザームには、オレらのような優秀な猛者がゴロゴロいるってわけだ」
「何故地下都市を襲う? ザームの武具は、レイウルムから得られていたはずだ!」

 あまり正しい行いでも無かったが、レイウルムの盗賊はそういう生き方を望んでいた。
 
 王国と共和国が義勇兵を集めていることを知った盗賊たちは、魔物にやられた冒険者の供養ついでに、武具を磨いて国の為に協力をしていたはずだった。

「あぁん? オレらは上からの命令で攻めているだけだ。本命はここじゃなく、この先の遺跡だ。レイウルムの連中なんざ知るか」

 だが共和国にとっては、地下で暮らす人たちよりも遺跡を選んだようだ。
 
 幸いにして人質たちの中に怪我を負わされた者はいないようだが、ここにいないジオラスが条件を出したに違いない。

 それにこいつらは何も知らなそうだが、ザームが地下都市の先に遺跡があったことを知ったのも、つい最近といったところか。
 
「――そういうことか。よく分かった。――で、そっちの二人が剣を構えている状態で待ってくれているが、かかって来ないのか?」

 錆びた剣のことを嘲笑あざわらっていた二人が、リーダー格の男の合図を待ってずっと両手剣を上段に構えたままだ。

 不意打ち攻撃をして来ないところをみると、Sランクと言っても大体の程度が知れる。
 二人は用心深いのか、動く気配を見せて来ない。

「――ったく、何してやがる! 話をしててもこいつに斬りかかることは出来んだろうが!! 今すぐに斬りかかれ!」
「そ、それがその……動けなくて」
「リーダー、お、俺も足がすくんで……」

 何やら様子がおかしい。
 一歩前に出て振り下ろして来ればいいだけのことなのに、二人の男たちはその場から動けずにいる。

「おいおいおい、錆びた剣持ちのこの野郎をぶった斬るだけだろうが!! 何の為にレア武器を持たせていると思ってんだ!」
「ち、違う……錆びた剣じゃない……あ、あれは」
「あ、ああぁ、あれに近付いたら喰われそうな気配が……」

 威勢よく近付いて来たと思ったら、どうやら錆びた剣に怯えているらしい。
 おれから見ても、やはり錆びた剣にしか見えないのに。

 強いて言えば、ここに来る前に種類の異なる武器を吸収したくらいか。

「どうした? 優秀なSランク剣士なのに、剣を振って来ないのか?」
「そいつらは雑魚だ。てめえなんざ、オレだけで十分だ! せああああっ!!」

 ――男は、話し終える前にその場から跳躍して、手にした両手剣を頭上から思いきり振り下ろして来た。

 助走もつけずに跳躍するとは、この男だけはそれなりのようだ。
 だが、その攻撃も鈍い音とともに空しく終わった。

 片手剣に比べれば重量感がある両手剣は、与えるダメージを瞬時に期待出来る。

 だが近接戦闘におけるあらゆる攻撃を全て無効化するおれにとって、その剣が持つ打撃性能値も意味の無いものとしてしまう。

 敵にもよるがウルティモのような狡猾な攻撃をして来られたら、当たることがあるかもしれない。

「……大した攻撃だと思うが、おれには一切の近接物理が効かない。悪いな」
「な、何だそりゃあ……!? そ、それにその錆びついた剣……禍々しすぎるが、まさか――」
「――ん? 錆びた剣が何だって?」

 錆びた剣は右手に持ったままで、特に動かしてもいない。
 しかしこいつらから見れば、禍々しさを放っているように見えるらしい。

「ひっひぃぃぃぃぃ――!? ぶ、武器がぁぁぁぁ!! ひ、引き寄せられ――」
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
「な、何ぃぃ!? 剣が勝手に動いて、引っ張られていやがる!? ちぃっ、お前らっ! 撤退だ!! 遺跡の方に行くぞ!」
「あっ、おい!」

 ――っという間に手にしていた武器を置いて、奴らは遺跡があるとされる道へ逃げて行ってしまった。

 この場に取り残されたおれの目の前には、奴らが投げ捨てて行った両手剣が置き去りになっている。

(どうすんだ、これ……)

 さっきまで威勢と攻撃的な態度を見せていた連中が、あっさりといなくなった。
 何も攻撃も反撃もしていないのに、何とつまらないことか。

 錆びた剣が一体何をしたのか――と思っていたら、錆びた剣から急に熱を感じ始めた。

「あっあちちちちち――!! な、何だ?」

 【Lレア 魔剣ルスト 敵対心+ 所有者不在武器を吸収 スキルLv2】

 ガチャを引いたでも無かったが、手にしていた錆びた剣が変化したらしい。
 ――というか、魔剣だったようだ。

「神剣フィーサとは別の剣ってことになるのか。ううむ……」
「ウニャ? フィーサがどうかしたのだ?」
「――ぬおわっ!?」
「ウニャニャ!? び、びっくりしたのだ!! アック、驚きすぎなのだ!」
「何だ、シーニャか」

 フィーサのように言葉を発するかどうかは不明だが、錆びた剣が魔剣になってしまった。
 これでこの先、さらに有利に進める――のだろうか。

「ウニャ!」
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