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第十六章:エンシェント・エリア

296.錆びた剣、成長を始める

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 あっさりと片付けた傭兵連中がいなくなり、もぬけの空となった小部屋の中には武器が散乱していた。
 
 特に役に立ちそうな武器はここには見当たらなかった。
 だが腰袋の魔石が反応を示していたので、ここでガチャを試すことにした。

 ガチャをすること自体が少なくなっていたが、ネーヴェル村の長の言葉を思い出した。それもあり、ガチャを試す考えに変えた。

「ウニャッ? 魔石を出すのだ?」
「ああ、ガチャをするから蹴飛ばしたりしないでくれよ」
「シーニャ、もう魔石知ってる! アック、危なくない」

 さすがに慣れたようで、少しだけ離れて見守っているようだ。

 【Lレア 武具吸収の書 :錆びた剣が???する】
 【Lレア ダメージ吸収の書 :錆びた剣のみ】
 【Lレア 属性無効の書 :錆びた剣のみ】

 魔石が反応したのでガチャを試してみたが、アイテム的なものでは無く全て習得系だった。それも錆びた剣だけに有効なものばかり。

 フィーサが来ていないからなのかは不明だが、錆びた剣が急に成長し始めた感じがある。
 これもネーヴェル村で斬撃覚醒をしたからかもしれないが。

 何にしても、全て習得することにした。
 錆びた剣絡みで、何かいい変化を及ぼすかもしれないからだ。

「ウニャ? アック、何も出なかったのだ?」
「――いや、すでに得られているぞ。この錆びた剣の……んっ?」
「ウニャニャ!? 部屋中の武器が勝手に動いているのだ!?」
「こ、これは……!」

 フィーサには鞘があるが錆びた剣は片手剣ということもあり、普段は腰にぶら下げたままだ。
 背中に背負うほど大きい剣でも無いので、腰袋と並びでぶら下げていた。

 ガチャを終えたと思ったら、今度は錆びた剣が小刻みに震え出した。
 錆びた剣だけでなく、散乱している短剣や短刀も何かに反応して、カタカタと音を出している。

 その矛先が全ておれにでは無く、錆びた剣に反応している感じだ。

「全く、用も無い小部屋を動かずに一体何を騒いでいるかと思えば――! あら、その剣……」

 おれとシーニャを残し、先の方へ進んでいたミルシェが戻って来た。
 ずっと怒らせてばかりのような気がするが、錆びた剣を見て何かに気付いたようだ。

「錆びた剣のことで何か気付いたのか?」
「……アックさま。剣をお持ちなら、使って差し上げればよろしいのではなくて?」
「使う?」
「別に敵を斬るだけが剣の役目ではありませんわ。……そうではなく、振ったりすればいいかと」

 ミルシェを呆れさせてしまったが、確かにその通りだ。
 言われるがままに、片手剣を手にして一振り、二振りほどしてみた。

 元々魔石ガチャによって出た剣のせいか、錆びた剣も熱を帯びた感じだ。

「ウニャ!? アック、アック!! 武器が襲って来るのだ!」
「――む?」
「ウウウゥ! 全て叩き落としてやるのだ!!」

 ミルシェは慌ててもいなく冷静に事の成り行きを見守っているが、シーニャは戦闘態勢を取っている。
 短剣と短刀、もしかして――。

「……待て、シーニャ!」
「早くしないとアックが串刺しなのだ!!」
「いや、大丈夫だ。慣れている……ここは任せろ」
「慣れ……ウニャ?」

(物は試しというやつか)

 錆びた剣を構えたままで、武器たちの中心に突っ込んでみた。
 次の瞬間のことだ。

 武器類が、次々と錆びた剣に吸収されてしまったのである。

「フフッ、やはり!」
「ウニャ~? 武器が消えてしまったのだ? どこに消えたのだ?」

 小部屋の中に散らばっていた武器類が全て、錆びた剣に吸収された。
 それにより、錆びた剣そのものが何かに変わったわけでは無さそうだが――。

「ミルシェは何となく感づいていたのか?」
「ええ。あの村で見た光景……そして目覚めた覚醒で、その錆びついた剣も覚醒したものと思われますわ」
「覚醒か。フィーサよりも、強力な武器になる可能性があるってことか」
「……面白いことになりそうですわ! フフフ」

 シーニャだけは何が起きたのか分からずに、小部屋の中を隅々まで探している。
 今のところルーンは何も示していないが、確かに散乱武器は吸収された。

 この先、どうなるのか色々試していくしか無さそうだ。

「シーニャ! 行くよ」
「ウニャ」
「あたしは先に行きますわ! 明かりが近い感じがありますので」
「あ、あぁ」

 ミルシェはまだ、シーニャと距離を取りたいらしい。
 衝突に冷や冷やものだったが、もうすぐ町にたどり着きそうだ。
 
 シーニャはおれの傍を離れずに、すりすりと足にくっつきながら歩いている。
 その辺が猫っぽいが、虎としての怖さも兼ね備えているから問題は無いだろう。
 
「アックさま! こちらへ!」

 小部屋を出た後の通路は、何も起きることなく進んでいた。
 だが先頭を歩いていたミルシェが、明らかに緊張の声色をさせておれを呼んでいる。
 
 傭兵が小部屋に陣取っていた時点で、大方の予想はついていたが事態は深刻のようだ。
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