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第十六章:エンシェント・エリア
293.レイウルム遺物奪取計画
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依頼書に記されていたのは、簡単な文面だった。
「【武器調達を求む! 奴らから奪取出来れば……】か。盗賊連中でも厳しい状況のようだな」
それにしても懐かしいというほどでも無いが、思わぬところで再会したものだ。
アグエスタ以来とか、だいぶ昔のことのように思える。
しかし話によると、アルビンに関してはミルシェが王女に為り代わっていた時からの付き合いらしい。
行動を共にしていたからこその親し気な態度というわけだ。
「――なるほど。地下都市に襲撃があって、その時に出入り口を封鎖された。そういうことだな?」
「うむ。故に、原因となっている岩を取り除こうと努力したのだが……」
貴族騎士アルビンの実力は、Aランク程度だったはず。
もちろん、今となってはランクによる実力なんてあてにならない。
ここに来るまでに、どれくらいの戦いを経験して来たかで評価は変わるものだ。
「騎士の腕力では岩程度も取り除けない……それで合っているか?」
「む、むぅ……悔しいがその通りだ。私はアクセリナさんを救いつつここにたどり着いたのだが、奴らは徒党を組んでいて迂闊に手が出せなくてな」
「奴らってのは?」
「共和国の連中だ」
「――! ザーム共和国か!」
イデアベルクを狙おうとしているどころか、レイウルムも狙っているのか。
しかもすでに侵攻を開始しているとは。
「――何だ、因縁があるのか? それならば、アクセリナさんを救えるのはお前なのではないか?」
地下都市を狙うということは、何かありそうだ。
イデアベルクにしてもそうで、レアな物が眠っていそうな想像でも働かせているはず。
ちょっとした気分転換のつもりだったのに、前哨戦のような形になりそうだ。
「アクセリナ、盗賊の彼らは連中の人質に?」
「ううん、私が地下都市から逃げて来た時点で抵抗は続けていたから、そこまでじゃないはず……」
「何故ザームの連中が地下都市を狙うんだ?」
薬師の女が来ている感じでは無さそうだが、財宝でも狙ったか。
貴族騎士一人だけでは太刀打ち出来ないだろうし、面倒だな。
「た、多分、海底に通じる地下遺跡の遺物狙いかと」
「――遺物? それって、レア魔石か何かか?」
「よく分からないんだけど、多分そんな感じかと」
アルビンがいる時点で、おれたちはここでのことにあまり関わることでも無いと思っていた。
しかしザームの連中が侵略して来ているとなれば、話は別だ。
「アックさま、どうなされます?」
「アック、アック。戦うのだ?」
「――ふぅ。ここに飛んで来たってことは、そういうことなんだろうな」
どれくらいの人数が来ているか分からないが、レイウルムの人とは関わりがある。
助けるついでに、ザームの奴らに思い知らせるのも悪くない。
遺物の存在も初めて知ったし、奴らの手に渡る前に収めておくか。
「アックよ、どうか頼む! 私の力だけではどうすることも出来ぬのだ。王国に現れた黒き翼たちがいれば話は違ったのだが……」
「それって、もしかしてデーモン族?」
「む? あの異形のモノたちもお前の?」
何やら驚愕しているが、ミルシェが王女として動いていた時の騎士がこの男だったのか。
「ふふっ、そうですわ。全てアックさまのおかげですわ」
「な、何と!」
ミルシェが、おれをチラ見しながら勝ち誇ったような態度を見せている。
王国でのことは詳しく聞いていないが、相当苦労させてしまったみたいだ。
しかしシーフェル王国に向かわせたデーモン族が、まさかここに繋がるとは驚きだ。
乗り掛かった船というのは、このことらしい。
「……そう言えば、あんたの問題は解決したのか?」
「――グルートに代わって現れた化け物のことか! まだ覚えていたとはな。いや、すまない。その化け物はまだ倒すことが出来ていなくてな……」
「その化け物はどこにいる?」
「ザーム共和国近く、ベッツの領地内だ」
全ての元凶が、あのSランクの連中から始まっているわけか。
今すぐどうこう出来るものでも無いとはいえ、攻めるのは確定のようだ。
「アクセリナと騎士アルビンは、安全な所があるならそこに向かってくれ。おれたちは、地下都市に進む」
「アックさん! じゃ、じゃあ――!」
「盗賊剣士の彼らなら持ちこたえているはずだ。それに、ザーム共和国の連中とは今後も付き合いがあるんでね。今から叩きのめしておく必要がある」
「あ、ありがとう!! もし上手く行ったら、遺物はアックさんが手にしていいからね! ルティちゃんの為にも!」
おれの言葉に安心したのか、アクセリナは何度も頭を下げている。
アルビンも安堵した表情を見せているが、ここからどこに向かえるというのか。
「――ん? ルティが何だって?」
「ドワーフが何なのだ? ウニャ」
聞こえなかったことにしよう。
とにかくこれから早急にやることは、レイウルムの遺物を奴らよりも先に奪取することだ。
「アックさま、あたしたちだけで地下都市に向かわれますか?」
「あぁ、問題無い。何か心配なことでもあるのか? ミルシェ」
「ありますわ! 虎娘をあの二人に付けて、途中まで送ってもらうべきかと」
レイウルム半島から向かえる所は限りがある。
シーニャに頼んでみるか。
「シーニャ、彼らを途中まで送って行ってもらえるか?」
「ウニャ? 人間をどこに送るのだ?」
「それは彼らに聞いて――」
「ウニャッ! 分かったのだ。すぐに行くのだ!」
「【武器調達を求む! 奴らから奪取出来れば……】か。盗賊連中でも厳しい状況のようだな」
それにしても懐かしいというほどでも無いが、思わぬところで再会したものだ。
アグエスタ以来とか、だいぶ昔のことのように思える。
しかし話によると、アルビンに関してはミルシェが王女に為り代わっていた時からの付き合いらしい。
行動を共にしていたからこその親し気な態度というわけだ。
「――なるほど。地下都市に襲撃があって、その時に出入り口を封鎖された。そういうことだな?」
「うむ。故に、原因となっている岩を取り除こうと努力したのだが……」
貴族騎士アルビンの実力は、Aランク程度だったはず。
もちろん、今となってはランクによる実力なんてあてにならない。
ここに来るまでに、どれくらいの戦いを経験して来たかで評価は変わるものだ。
「騎士の腕力では岩程度も取り除けない……それで合っているか?」
「む、むぅ……悔しいがその通りだ。私はアクセリナさんを救いつつここにたどり着いたのだが、奴らは徒党を組んでいて迂闊に手が出せなくてな」
「奴らってのは?」
「共和国の連中だ」
「――! ザーム共和国か!」
イデアベルクを狙おうとしているどころか、レイウルムも狙っているのか。
しかもすでに侵攻を開始しているとは。
「――何だ、因縁があるのか? それならば、アクセリナさんを救えるのはお前なのではないか?」
地下都市を狙うということは、何かありそうだ。
イデアベルクにしてもそうで、レアな物が眠っていそうな想像でも働かせているはず。
ちょっとした気分転換のつもりだったのに、前哨戦のような形になりそうだ。
「アクセリナ、盗賊の彼らは連中の人質に?」
「ううん、私が地下都市から逃げて来た時点で抵抗は続けていたから、そこまでじゃないはず……」
「何故ザームの連中が地下都市を狙うんだ?」
薬師の女が来ている感じでは無さそうだが、財宝でも狙ったか。
貴族騎士一人だけでは太刀打ち出来ないだろうし、面倒だな。
「た、多分、海底に通じる地下遺跡の遺物狙いかと」
「――遺物? それって、レア魔石か何かか?」
「よく分からないんだけど、多分そんな感じかと」
アルビンがいる時点で、おれたちはここでのことにあまり関わることでも無いと思っていた。
しかしザームの連中が侵略して来ているとなれば、話は別だ。
「アックさま、どうなされます?」
「アック、アック。戦うのだ?」
「――ふぅ。ここに飛んで来たってことは、そういうことなんだろうな」
どれくらいの人数が来ているか分からないが、レイウルムの人とは関わりがある。
助けるついでに、ザームの奴らに思い知らせるのも悪くない。
遺物の存在も初めて知ったし、奴らの手に渡る前に収めておくか。
「アックよ、どうか頼む! 私の力だけではどうすることも出来ぬのだ。王国に現れた黒き翼たちがいれば話は違ったのだが……」
「それって、もしかしてデーモン族?」
「む? あの異形のモノたちもお前の?」
何やら驚愕しているが、ミルシェが王女として動いていた時の騎士がこの男だったのか。
「ふふっ、そうですわ。全てアックさまのおかげですわ」
「な、何と!」
ミルシェが、おれをチラ見しながら勝ち誇ったような態度を見せている。
王国でのことは詳しく聞いていないが、相当苦労させてしまったみたいだ。
しかしシーフェル王国に向かわせたデーモン族が、まさかここに繋がるとは驚きだ。
乗り掛かった船というのは、このことらしい。
「……そう言えば、あんたの問題は解決したのか?」
「――グルートに代わって現れた化け物のことか! まだ覚えていたとはな。いや、すまない。その化け物はまだ倒すことが出来ていなくてな……」
「その化け物はどこにいる?」
「ザーム共和国近く、ベッツの領地内だ」
全ての元凶が、あのSランクの連中から始まっているわけか。
今すぐどうこう出来るものでも無いとはいえ、攻めるのは確定のようだ。
「アクセリナと騎士アルビンは、安全な所があるならそこに向かってくれ。おれたちは、地下都市に進む」
「アックさん! じゃ、じゃあ――!」
「盗賊剣士の彼らなら持ちこたえているはずだ。それに、ザーム共和国の連中とは今後も付き合いがあるんでね。今から叩きのめしておく必要がある」
「あ、ありがとう!! もし上手く行ったら、遺物はアックさんが手にしていいからね! ルティちゃんの為にも!」
おれの言葉に安心したのか、アクセリナは何度も頭を下げている。
アルビンも安堵した表情を見せているが、ここからどこに向かえるというのか。
「――ん? ルティが何だって?」
「ドワーフが何なのだ? ウニャ」
聞こえなかったことにしよう。
とにかくこれから早急にやることは、レイウルムの遺物を奴らよりも先に奪取することだ。
「アックさま、あたしたちだけで地下都市に向かわれますか?」
「あぁ、問題無い。何か心配なことでもあるのか? ミルシェ」
「ありますわ! 虎娘をあの二人に付けて、途中まで送ってもらうべきかと」
レイウルム半島から向かえる所は限りがある。
シーニャに頼んでみるか。
「シーニャ、彼らを途中まで送って行ってもらえるか?」
「ウニャ? 人間をどこに送るのだ?」
「それは彼らに聞いて――」
「ウニャッ! 分かったのだ。すぐに行くのだ!」
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