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第十六章:エンシェント・エリア
281.魔石彼女たちとの戦い ③
しおりを挟む「あっ! アックさん、ルティちゃんはどうなりましたか?」
ルティとのことが片付きリリーナさんのいる所に戻ると、彼女は直ぐに声をかけて来た。
ドワーフとエルフの人垣は解散しているようだが、シーニャとミルシェ、それにサンフィアは正気を失ったままのようだ。
その辺のさじ加減がよく分からない。
悪い人ではないとはいえ、リリーナさんは意識していないんだろうか。
「ルティなら背中にいますよ」
ずぶ濡れになったルティは、おれに抱きついてキスをして来た。
その時、火の神アグニの力も返して来た為、疲労が一気に来たのか眠ってしまった。
ルティには火の精霊竜アヴィオルがついている。
そのことが関係しているのか、アグニの力だけが戻された感じだ。
トコトコとリリーナさんが、おれの背中を確かめに来る。
見た感じは悪い人には見えないのに、性格の問題か。
「ふむふむ。ルティちゃん、力を使い果たしちゃっていますね。魔石の姿が見えないということは、"覚醒"したんですね?」
「――まぁ、そういうことになりますね」
「警戒しなくてもいいですよ? 魔石が欲しいわけじゃなかったですし、ルティちゃんのことは期待していただけなんですから」
油断出来ないから警戒もしたくなる。
しかし、ルティへの期待ということに関しては信じてもいいか。
「それで、そこの三人についてはどうするつもりがあるんです?」
ルティへの想いは伯母だけあって強そうだ。
だがシーニャたちを拘束していることは、決して許されることではない。
「そうですねぇ……、予定通り、一人ずつ戦ってもらおうと思います! その方が彼女たちの為にもなりますし、アックさんも不安があるはずです。特にミルシェさんのことについてを!」
何から何まで厄介な人だ。
この人もただの薬師というわけでも無さそうだな。
「それじゃあ、サンフィアは?」
「エルフさんはですね、禁じられている武器を隠し持っていまして~それで仕方なく大人しくしてもらっているだけなんですよ~」
「意識はあるんですか?」
「はい、それはもう! とにかく暴れられまして大変でしたので。そのうち目を覚ましますよ」
なるほど。サンフィアはそういう理由か。
槍は渋々置いて来たようだが、短剣でも忍ばせていたようだ。
「――で、シーニャを戦わせるつもりですか? 操った状態とか、あまりいい行為とは言えませんが」
ネーヴェル村へ入る前から仕組まれていたし、何かの狙いがあるのは分かる。
しかし無意識状態の彼女たちを勝手に戦わせることには、さすがに憤りを感じてしまう。
「魔石は成長要素があります。ご存じですよね?」
「……まぁ」
「しかしアックさんは、彼女たちの専用魔石を覚醒させてから何もしていないし、させていない。それでは駄目なんですよ!」
専用魔石となってから、確かに袋に入れたままだが。
「駄目って何が――」
「アックさんがそこまでお強くなられているのに、ルティちゃんも含めて彼女たちは弱点を克服出来ていません。自分だけがお強ければいいとお思いですか?」
「……そんなことは」
痛いところを突かれた。
シーニャにしても、ルティにしてもそれぞれ苦手なものがある。
彼女たちが単独で戦うことを考えなかったわけじゃないが、弱点があっても強いと認識していた。
リリーナさんはそのことを言っている。
「――ですので、まずはシーニャさんと本気で戦ってもらいます」
「本気ってのは、魔法を使って……ですか?」
「もちろんそうですよ。拳でもいいですけど、公平じゃありませんし」
「いいですよ。そこまで言うならやりますよ」
シーニャも何だかんだで強い。
うかうかしていたらやられかねないし、本気でやるしか無さそうだ。
「ルティちゃんはこっちで休ませますね。霧で魔法防壁を展開しますので、存分にどうぞ」
「……そうしますよ」
果たして魔法攻撃だけでシーニャを何とか出来るのか、やってみるしかないか。
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