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第十五章:イデアベルク
272.幻霧の村からの声 後編
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「あぁ、そうだ。ルティ!」
サンフィアが言った幻のことと、あの声のことが気になった。
ここであれこれ悩むよりも、ルティに聞いた方が手っ取り早い。
大きめの樽で洗い物をしているのを中断させてしまうが、彼女に聞くことにする。
「はいっ! アック様、わたしをお呼びですかー?」
「忙しそうにしているところ悪いが、話があるからこっちへ来てくれ」
「は、話……わ、分かりましたっ!!」
慌てた様子を見せているが、何かやらかしたのか。
「貴様! アック!! 我なら答えが分かっているのだぞ? それを何故あの娘に聞こうとしている?」
「幻のことなら確かにそうだな。でも、あの声はルティの関係者だ。だから落ち着け、サンフィア」
「……フィアと呼べ。たわけめ」
誰よりもやる気を見せているのはいいことだ。
しかし彼女の活躍を見るのは、まだ先のことになるはずだ。その為にも落ち着かせなければ。
「えっほ、えっほ……お、お待たせしましたっ!」
「ルティシア・テクス。お前に聞きたいことがある」
「ご、ごめんなさぁぁい!!」
作った物の失敗に怒ったかと思ったのか、ルティがいきなり謝り出した。
「へ? な、何を謝るんだ?」
「さっきアック様に飲ませたものに、大量の砂糖が入りすぎてました!! 甘すぎてごめんなさぁぁ……」
そういえば甘かったな。それよりも謎の声が気になって、味のことを忘れてた。
声のことが無ければ、単なる甘い飲み物だったが……。
「そうじゃない。とりあえず怒ってないから、顔を上げて」
どうも最近、ルティに泣き癖をつけてしまっているような。
もっと優しくしないと駄目だな。
「はひぇ? ほ、本当ですかぁ?」
「本当だ。何で怒っているかと思った?」
「アック様がわたしをきちんと呼ぶ時って大体怒る時が多いので、だからそうなのかと……」
「あー……」
そう言えば無意識に区別して呼んでいたような。
「それで、お話とは何でしょうか?」
「あ、そうだった。幻の村に覚えは無いか?」
幻の村というとそんなに数は無いはずだ。ルティならそれだけで分かるのでは。
「はぇ? それって、シーニャと流された湖村のことです?」
そっちの方を思い出すのか。二人で流されたっていう記憶の方が強いんだな。
何を伝えれば分かってもらえるのか。
「うーん……あ! 思い出した。ルティちゃんだ!」
「ル、ルティちゃん!? そ、そそそ……その呼び方でも、わたしは受け入れられます!! これからは、ぜひぜひルティちゃんと!」
「――じゃなくて! ルティのことを「ちゃん付け」で呼ぶ人に覚えはあるか?」
「あぁ!! それでしたら、ネーヴェル村のリリーナさんですよ! 母さまのお姉さんです! リリーナさんに何か用があるんですか?」
幻霧の村ネーヴェルか。なるほど、そのことを言っていたんだな。
あの時は強さが足りないとかで、入ることも出来なかった。
でもあの声では認められたとか言っていたから、来てもいいというメッセージにも聞こえた。
そうなるとまずは、ネーヴェル村に行くのが先か。
ルティがいないと行けない場所らしいし、おれも場所はよく分からない。
「そのネーヴェル村に行きたいんだが、行き方は分かるか?」
「もちろんです! 支度をしてすぐにでも行きますっ!!」
やはりそうだったか。これでルティは、薬師のスキルも身につくことになりそうだ。
ルティだけを連れて行くというわけにもいかないし、みんなで行くか。
「あぁ、ルティ。ドワーフしか入れない村ってのは思い出したが、彼女たちも行っていいんだよな?」
「……駄目ですよ!! ルティじゃなくて、ルティちゃんじゃないですか!」
「――そのうち呼ぶから。とにかく、シーニャたちも行っていいってことで合ってるのか?」
「はい!」
イデアベルクからまた出かけることになるが、とりあえず幻霧の村だな。
サンフィアが言った幻のことと、あの声のことが気になった。
ここであれこれ悩むよりも、ルティに聞いた方が手っ取り早い。
大きめの樽で洗い物をしているのを中断させてしまうが、彼女に聞くことにする。
「はいっ! アック様、わたしをお呼びですかー?」
「忙しそうにしているところ悪いが、話があるからこっちへ来てくれ」
「は、話……わ、分かりましたっ!!」
慌てた様子を見せているが、何かやらかしたのか。
「貴様! アック!! 我なら答えが分かっているのだぞ? それを何故あの娘に聞こうとしている?」
「幻のことなら確かにそうだな。でも、あの声はルティの関係者だ。だから落ち着け、サンフィア」
「……フィアと呼べ。たわけめ」
誰よりもやる気を見せているのはいいことだ。
しかし彼女の活躍を見るのは、まだ先のことになるはずだ。その為にも落ち着かせなければ。
「えっほ、えっほ……お、お待たせしましたっ!」
「ルティシア・テクス。お前に聞きたいことがある」
「ご、ごめんなさぁぁい!!」
作った物の失敗に怒ったかと思ったのか、ルティがいきなり謝り出した。
「へ? な、何を謝るんだ?」
「さっきアック様に飲ませたものに、大量の砂糖が入りすぎてました!! 甘すぎてごめんなさぁぁ……」
そういえば甘かったな。それよりも謎の声が気になって、味のことを忘れてた。
声のことが無ければ、単なる甘い飲み物だったが……。
「そうじゃない。とりあえず怒ってないから、顔を上げて」
どうも最近、ルティに泣き癖をつけてしまっているような。
もっと優しくしないと駄目だな。
「はひぇ? ほ、本当ですかぁ?」
「本当だ。何で怒っているかと思った?」
「アック様がわたしをきちんと呼ぶ時って大体怒る時が多いので、だからそうなのかと……」
「あー……」
そう言えば無意識に区別して呼んでいたような。
「それで、お話とは何でしょうか?」
「あ、そうだった。幻の村に覚えは無いか?」
幻の村というとそんなに数は無いはずだ。ルティならそれだけで分かるのでは。
「はぇ? それって、シーニャと流された湖村のことです?」
そっちの方を思い出すのか。二人で流されたっていう記憶の方が強いんだな。
何を伝えれば分かってもらえるのか。
「うーん……あ! 思い出した。ルティちゃんだ!」
「ル、ルティちゃん!? そ、そそそ……その呼び方でも、わたしは受け入れられます!! これからは、ぜひぜひルティちゃんと!」
「――じゃなくて! ルティのことを「ちゃん付け」で呼ぶ人に覚えはあるか?」
「あぁ!! それでしたら、ネーヴェル村のリリーナさんですよ! 母さまのお姉さんです! リリーナさんに何か用があるんですか?」
幻霧の村ネーヴェルか。なるほど、そのことを言っていたんだな。
あの時は強さが足りないとかで、入ることも出来なかった。
でもあの声では認められたとか言っていたから、来てもいいというメッセージにも聞こえた。
そうなるとまずは、ネーヴェル村に行くのが先か。
ルティがいないと行けない場所らしいし、おれも場所はよく分からない。
「そのネーヴェル村に行きたいんだが、行き方は分かるか?」
「もちろんです! 支度をしてすぐにでも行きますっ!!」
やはりそうだったか。これでルティは、薬師のスキルも身につくことになりそうだ。
ルティだけを連れて行くというわけにもいかないし、みんなで行くか。
「あぁ、ルティ。ドワーフしか入れない村ってのは思い出したが、彼女たちも行っていいんだよな?」
「……駄目ですよ!! ルティじゃなくて、ルティちゃんじゃないですか!」
「――そのうち呼ぶから。とにかく、シーニャたちも行っていいってことで合ってるのか?」
「はい!」
イデアベルクからまた出かけることになるが、とりあえず幻霧の村だな。
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