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第十四章:鳴動の大陸

248.グライスエンドからの条件

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 前を歩くサンフィアたちに追いつき森を抜けると、そこからは平坦な道が続く。
 道の両側には一切建物や小屋が無く、戦いに備えるかのような荒地が広がっているだけだ。

「アック! ここが末裔の町だというのか?」
「ああ、そうだ。途中から来たから分からないと思うが、途中までは宿もあったぞ」
「しかしどう見ても、何も無いではないか」

 殺風景な光景に、サンフィアは信じられないといった表情で何度も首を左右に動かしている。
 ドワーフの子たちや戦闘魔導士ザルクと戦った森までは、人が少なくとも町らしく思えた。

 恐らくこの先に待つのは、戦闘だけを繰り広げる為だけの場所。
 末裔の多くが、隠れ家のような所で過ごしていると思われる。

「アック様っ! 誰か……というより、沢山の人が見えます!!」
「アック、人間沢山いるのだ! ウゥ!」

 一緒に歩いていた内のルティとシーニャが、真っ先に前方の状況に気付く。
 何も無い道とはいえ、肉眼ではまだこの先に何がいるのかを確かめることが出来ない。

 そういう意味では、やはり二人とも目がいいのだろう。
 そこから数百メートルほど歩いたところで、ようやく連中の姿を確認出来た。

 二人が言った通り、数十人以上の連中が待ち構えている。
 早くも戦闘が始まるかと身構えていると、おれたちの前にあの男が姿を見せた。

「……ふむ。どうやら無事に合流出来たようで何よりだ。それに新たな客もな」

 何のことかとも思ったが、ルティたちのことを言っているようだ。
 それにサンフィアのことも気付いている。

 ウルティモなる男の後ろに整列している連中は、全て戦闘魔導士なのだろうか。
 連中の数人から感じられる気配は、結構出来そうな感じがある。

 見たところ魔法戦闘を得意としていそうだが、近接戦闘系も混じっているようだ。
 
「それはどうも。それで、おれたちを出迎えてどうするつもりだ?」
「どうするかは、アック・イスティ。君に答えてもらおう」
「……どういうことだ?」
「君がここにたどり着くまで、一度も町の様子がおかしいと感じなかったかな?」

 答えるまでも無く、入る前からおかしなことばかりだ。
 ドラゴンに守らせて侵入者を阻み、町に近づいたと思えば攻撃を仕掛けて来る。

 戦闘好きの末裔が自分の力を試すような、そんな戦い方だった。
 末裔じゃないのもいたが、町の人たちとは一切関わっていないように思えた。

 そうだとすれば、グライスエンドの町は恐らく。

「……町では無く、元々は森だったんじゃないのか?」
「ほぅ……、気付いていたか。さすがイデアベルクを救っただけのことはあるようだな。その通りだと言いたいが、正確には竜の縄張りだった所だと言っておこう」
「竜の? ――ということは、町の手前にいたドラゴン族は……」
「そうだ。町を守るためでは無く、縄張りを守るためにいたドラゴンだったというわけだ!」
「最後のドラゴンだったということか?」
「それを答えるには、君の答えを求めねばならない。われらにとっても、重要な決断にもなり得るのだからな」

 この男の話が本当だとすれば、竜を追い出してここに住み着いた人間ということになる。
 最初の樹人族がいた所に違和感を覚えていたが、そういうことなら合点がいく。

「答えと言うのなら簡単だ。おれたちは、グライスエンドの先を目指している。ここで戦いを繰り広げるために来たわけじゃない。それを聞きもせずに、仕掛けて来たのはお前たちの方だ!」

 侵略が目的で来たならそうだと言えるが、そうじゃないことをどうやったら理解してくれるのか。
 この男以外の連中は、今にも魔法をぶっ放して来そうな気配がある。

「――好き好んで戦いを望まない。それが君の答えかな?」
「そうだと言っている! 分かったなら、この先へ通してもらいたい」
「ではわれらから条件を出そう。それを呑むのであれば、君に従うとしよう!」
「条件? 何だそれは?」

 何ともキナ臭い話になって来た。
 条件というのは口先だけで、どのみち戦いは避けられないはず。

 少なくともおれとウルティモ以外は、すぐに動けるように戦闘態勢に入っている。
 それが何よりの証だ。

「アック・イスティが先を行くには、われらを全て屈することだ。だがこれ以上の歩みを止めてイデアベルクへ戻るのであれば、われらからの干渉は一切やめる。どうするつもりがあるのか聞こうか!」

 グライスエンドを通り過ぎることを嫌っている時点で、何かあると言っているようなもの。
 無理やり戦うのもどうかと思うが、ここまで来てそれは無いだろう。

「……仕方ないな」
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