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第十四章:鳴動の大陸
242.◇留守番ミルシェ、結託する?
しおりを挟む「……呆れたわね。もちろんあなたたちのせいでは無くて、アックさまの方ですわ!」
「はへぇぇぇ……ミルシェさんん~どうすればいいんですかぁぁ」
「どうって、アックさまだけが来られなかったというのであれば、向こうで何か起きているに決まっていますわ」
アックだけを残し、ルティたちは転送魔法で無事にイデアベルクに到着していた。
出迎えたミルシェは、見慣れぬドワーフたちに驚きつつ、主人だけいないパーティーに呆れかえっている。
「シーニャ、アック心配。早く戻りたいのだ! ウニャ」
「それは無理だよ、シーニャ。イスティさまがいないんだよ?」
「ウニャゥゥ……」
「あなた、人化出来る両手剣の……フィーサでしたかしら?」
「そうですよ~?」
「言葉遣いも違うけれど、人化するとますます幼いのか高齢なのか、見分けがつきませんわね……」
「イスティさまはそんなこと気にしてないもん!」
ミルシェは、旧森林ゲート付近でエルフたちと伐採作業をしていた。
そんな中、シーニャとフィーサたちの話に頭を悩ます。
「困りましたわね。ただ事ではない局面に直面しているのは、見て分かるのだけれど……」
騒ぐ小娘たちをどうするべきか悩んでいると、
「フン、アック・イスティめ。我の目が届かぬところで世話を焼かせる」
「……あら? あなた、サンフィア――」
「そうだ。名を覚えぬとは、舐められたものだな!」
エルフをまとめ、アックの自称妻でもあるサンフィアが姿を見せた。
イデアベルクの再建には、彼女たちエルフの力が不可欠。
ミルシェは、一通りの指示を与えた後はそれぞれで分担していた。
それだけにサンフィアと関わることは少なく、顔を合わせることも多くなかった。
「呼ぶ余裕が無かっただけですわ。それで、あたしに何か用が?」
「転送とやらが出来ず、そこの虎が騒いでいるのだろう? それならば、今一度そこに向かえばいいだけのことだ。本来イデアベルクは、他国への移動に優れた国でもあったのだからな!」
「へぇ……? それは初耳ですわね。アックさまも知らないことをエルフのあなたが……ね」
「当然だ。アックよりも長く住んでいたのだ。それより、どうするつもりだ?」
転送魔法に往復する力を付与していたならば、すぐに戻ってもおかしくない。
しかしミルシェが感じ取った魔力には、一方的な魔力の流れがあった。
アックが戻って来ていない以上、少なくとも転送魔法は使えない。
そこに来て初耳なことを言うサンフィアの言葉に、ミルシェは何かを思いついたようだ。
「――それでしたら、サンフィアさん。あなたがこの小娘たちを引き連れて、向かえばよろしいのではなくて?」
「……フン。貴様に言われずとも、我が知る道で向かうつもりだった!」
「確かアックさまの誘いを断ったのでは?」
「一度はそうだった。だが、我は草むしりよりも、アックへの協力をする方がよほど動きやすいと判断した。亜人の貴様がここを動けないのであれば、我が導く他無いだろう!」
「物は言いようですわね……まぁ、いいですわ」
サンフィアの言葉に同調したミルシェは、ロクシュに指示を預け、シーニャたちを休ませてから動き出すことに決めた。
「ふぅ、そこの虎娘と人化娘! ルティの所に行きますわよ?」
「ウニャ~? 何だ何だ、どこへ行くのだ?」
「わたし、フィーサ!!」
「では我は、装備と支度を整えておく。貴様、ミルシェは虎たちによく話しておくことだな!」
「言われるまでもありませんわ!」
「……フ、生意気な女め」
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