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第十四章:鳴動の大陸

241.ルティのお願い 後編

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 ルティにお願いをされたおれは、ドワーフの子たちに説明してイデアベルクについて来てもらうことにした。

「ボ、ボク、頑張りますっ! いつか魔神フォルネウスを召喚出来るようになりたい!」
「サラも負けないです!!」
「ルピも!」
「「うんうん」」

 どうやらこの子たちの中では、イデアベルクに行くことは決定していたらしい。
 そうなるとまたミルシェに頼むことになってしまうが、少しの間だけでも何か手伝わねば。

 獣人とネコとエルフ、それにドワーフが加わるとは、何とも賑やかな国になりそうだ。

「アック様。あのぅ……もう一つお願い、いいですか~?」
「……ああ」
「えっと、その……ドワーフの子たちの面倒や世話を任させてもらっても、よろしいでしょうかっ!」
「ルティ一人でか?」
「は、はいっっ! もちろんすぐのことでは無いのですが、同じドワーフとして~……」
「ルティがそうしたいならいいぞ。反対はしない」
「やったぁ!! アック様っ、ありがとうございますですっ!!」

 意外でも何でもないことだが、ルティは世話好きらしい。
 国に戻ってからになるとはいえ、いい関係を築きそうだ。

 ルティは嬉しそうに、ドワーフの子たちの所へ走って行く。
 その様子が気になったのか、シーニャが声をかけて来た。

「アック、ドワーフが増えるのだ?」
「そうだな。シーニャは嫌か?」
「ルティみたいなドワーフならいらないのだ。でも、きっとそうじゃないはずなのだ! ウニャッ!」
「その辺りは心配しなくていいと思うぞ。シーニャも面倒を見るか?」
「シーニャ、アックだけでいいのだ!」

 さすがにそこは譲れないものがあるらしい。
 シーニャは誇り高いワータイガーだから、一人がいいのかも。

「しかし不安だな。行って素直に帰って来れるのかどうか……」
「イスティさま。グライスエンドの町にはもう、妙な気配、強い気配しか感じないよ? でもこの気配のせいで、転送魔法が言うことを聞いてくれるみたいなの」

 これまで不安定だった転送魔法だったが、フィーサの言葉通りならこの町の強い気配が、潜在的な魔法に影響を及ぼしているとかですぐに戻って来られるようだ。

 転送魔法は詠唱要らずではあるものの、ドワーフの子たちがいるのでここはあえて名前を発することにした。

 そうなると、みんなの中心に立って言わなければならない。
 人化のフィーサに中心に立ってもらおうとしたが、彼女一人だけでは不十分のようだ。

 そう思って彼女たちの中心に立ち、声を発した。

「転送魔法! 『イデアベルク』へ転送する!!」

 通常ならこれですぐに転送が開始されて、風景がイデアベルクに変わっているはずだった。
 しかし何か様子がおかしい。

 転送魔法はすでに発動したにもかかわらず、未だにグライスエンドの森が見えている。
 おかしいと思い、彼女たちから離れて様子を見ようとした、その時だ。

「――んっ? な、何っ!? ルティ、シーニャ! フィーサも!! ま、待て、置いて行くな!」
「あれれ? イスティさま!?」
「ウニャニャニャ!? アックが来ていないのだ!! アック、アックが~!」
「え、ええぇぇっ!? ア、アック様ぁぁぁぁ!!」
「嘘だろ……? 何だこれ、幻影魔法か? それとも転送の失敗……」

 ドワーフの子たちとルティたちを見送るかのように、見えない透明な壁に遮られおれだけが転送されずに取り残されてしまった。
 一体何事なのかと辺りを見回していると、どうやらまんまと敵に油断を与えていたらしい。

 振り向いた先には、ローブをまとった十数人くらいの者が立っている。
 その中の一人の男が、前へ出て話し始めた。 

「悪いけど、アック・イスティ。あなただけここに留まらせてもらったよ。転送魔法には、特別に遮断魔法をかけさせてもらった」
「遮断魔法……? ――ということは、おれだけが転送出来なかった。そういうことだな?」
「ご名答」
「それで、おれ一人だけであんたらと戦うつもりがあるとでも?」
「違うね。戦うのはこのオレだけで十分。ウルティモに敵うかどうか、面白くなるかそうでないかを確かめに来ただけ」

 ウルティモか。派手な男でしかも、妙な攻撃をして来た奴だったな。
 奴の手下ということでも無さそうだが、こいつと戦えばいいのか。

「ここでおれを倒す? それとも消し去るのか?」
「どれも違う。面白ければいいし、つまらなくても何かは得られる。オレがそうしたいだけ。あなたの仲間は邪魔だったから、転送しといて正解!」

 そういうことか。そういう意味では、ルティたちと別になったのは正しかったかもしれない。
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