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第十四章:鳴動の大陸

236.ドワーフ幻獣戦 ③

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 召喚ドワーフが放った幻獣が大口を開けて襲って来た。
 どうするべきかと身構えていたら、どうやらすでに奴の中に取り込まれ、喰われていたようだ。

「……暗闇か。いや、幻獣の異空間ってやつだな……」

 自分以外何も見えない真っ暗闇な空間の中に、放り込まれてしまったらしい。
 ダメージも無く何か異常を発しているでも無いが、少し油断が過ぎたようだ。
 
 右も左も暗闇で、声も響かない。
 恐らくこれがフォルネウスの技と思われるが、肝心のドワーフはコイツを制御出来ているのだろうか。
 召喚の時、迷っていた感じが見受けられた。

 召喚者が迷いを生じさせていたとなると、フォルネウスは自分の意思で喰ったことになる。

「さてと、どうやるかな」

 多少荒っぽくはなるが、爆発魔法で内部から破壊するのが手っ取り早いか。
 まずは炎属性ということで早速発動させようとすると、微かに何かの音が聞こえて来た。

「はへぇぇ……誰かいませんかあぁぁ~」

 助けを求めている声のようだが、この幻獣に喰われた者だろうか。
 そうだとすれば、何者にもかかわらず喰らう厄介な奴のようだ。

 何にせよまずは助けることにする。
 暗闇空間で反響も無いので、どこから聞こえているのかは正直分からないが。

 声の主は相当な声量で、ずっと声を張り上げている。
 そうなれば、光魔法で相手に知らせることを試みるしかない。

「……闇を照らせ! 『ルーメン』」

 光魔法に特別な力を持たせていないが、暗闇空間を照らすくらいは可能だ。
 後はこの光に気付き、声の主が姿を現わしてくれるかどうか。

「ああぁぁぁっ! ひ、光です~光が見えますです!!」

 意外と声が近いようで、すぐにでも会えそうだ。
 そう思いながら待っていると、腰の辺りに鈍い衝撃が走った。

「……んっ?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! 何も掴まる所が無かったもので~」
「あ、あぁ、いいよ。そのまま落ち着いて、おれの正面に立ってくれないか?」
「お言葉に甘えまして~……」
「――というより、その声……」

 どう考えても、思い当たるのような気がする。
 とにかく必死になって動き回っていたのか、おれの腰にべったりとくっつきながら、彼女は何とか正面に回って顔を見せた。

「おかげで命拾いしました。ありが――あれっ!? あ、あぁぁぁ……!?」
「悪い……ルティシア」
「さ、探しましたよぉぉぉ!! アック様の言うとおり水耐性が備わっていたので、何とかもがいていたんです。そして気付いたら、こんな真っ暗闇な所に落ちてて……寂しくて悲しくて、グスッ……」
「ご、ごめん」
「本当ですよ~!! どれくらいここに閉じ込められるのかと思って、悲しくて悲しくて……」
「分かった、分かったから」

 水耐性があることで放置していたら、まさかフォルネウスの中に落ちていたとは。
 どこかの海を彷徨っていなくて良かったが、もっと気を付けることにしよう。

「グスングスン……ア、アック様、もう大丈夫なんですよね?」
「も、もちろんだ」
「どうやって出られるんですかっ?」
「え~とだな……」

 当初の予定どおり、爆発魔法で空間ごと吹き飛ばすしか無いか。
 しかしそうなると、脱出した時にどうなってしまうのか気になる所だ。
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