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第十三章:新たな地
223.グライスエンド・リアンの庭 ③
しおりを挟むどうやらリアンは、おれをルティたちと分断させることが目的だったようだ。
単なる草原の中の泉に、彼女たちが心を奪われることも想定されていたのだろう。
そしてはぐれたルティたちのいる所では、すでに戦いが始まろうとしている。
◇◇
「お前、何なのだ……? アックを返すのだ!」
「ぼくはリアン。自然が大好きなんだ。きみたちも、ここが気に入ったよね?」
「気に入るも何もないのだ!! シーニャ、もっと深い森で暮らしていた。草と泉だけでいい気になるななのだ!!」
「そうだよねぇ。虎人族って森の住人のはずなのに、イスティなんかと一緒にいるんだもん。がっかりしちゃったよ」
「ウガウゥッ! 動くな! なのだ!!」
「ぼくは動かないよ。でも、イスティが来る前に養分を頂いておこうかな? 厄介な赤毛もいることだし」
少女としてまだ色香も漂わせていなかったリアンだったが、シーニャたちに見せていたその姿は、急に成熟した身体つきの大人へと変化する。
『お、お前……! 何者なのだ!?』
先ほどまでと打って変わったリアンの姿に、シーニャが声を張り上げた。
シーニャの言葉に、リアンは目立った動きを見せることなく笑みを浮かべる。
「自然を忘れた虎人族は、ぼくの姿を見ても思い出せない? それとも虎人族のいた森では、ぼくの友だちはいなかったのかな」
「お前に似たヤツ、見たことも無いのだ」
「……それは悲しいね。それじゃあ、まずは赤毛を沈黙させてあげないとね」
リアンは身動き一つ取っていない……そう思われていたが、リアンの足元からは黒茶色い根が至る所に伸びまくっていた。
『フンぐぅぅぅぅ……!! 何なんですかぁぁぁ~!! この根はぁぁぁ』
『何をやっているのだ、ドワーフ! 今すぐそこから動くのだ!!』
『はぇっ!? あぁっ――!?』
シーニャの注意が間に合わず、ルティは自分の身に迫る気配に気付くのが遅れてしまう。
そして足元に伸びて来た根に動きを封じられ、さらに全身を縛るようにつるがルティの体に巻きつく。
『はへぇぇぇ……う、動けな……いぃ……』
『――ウガウゥ! 全く、トロくさすぎるのだ!! 自分で何とかして欲しいのだ』
『うぎぎぎ……た~す~け~てぇぇぇ!! シ、シーニャ~!!』
『そこで待っているのだ! 今すぐ――』
油断しすぎていたのか、泉の近くに立っていたルティは、まんまと敵の攻撃に捕まってしまった。
リアンに対峙していたシーニャが、ルティをしぶしぶ助けに行こうとするが……。
『そうはさせないよ? 自然を忘れた虎人族のきみは、そこで立ち尽くしていてね』
『ウゥッ……!? う、動けないのだ……!』
シーニャの足元は、幾重にも重なった根があり彼女の足に絡みついている。
「まだ分からないのかな? 虎人族の――」
「シーニャは、シーニャなのだ!!」
「そっか、それもイスティのせいだね。虎人族としてじゃなくて、名前のある娘に成り下がってしまったんだ。残念だなぁ……」
リアンは首を左右に振りながら、シーニャの動きを封じ続ける。
つるに巻き付けたルティを眺めながら、徐々にその姿を変化させようとしているようだ。
『ふぎいぃぃ……力がぁぁ~何か何かないのぉぉ~!?』
「――アハハッ! ドワーフのくせに、随分と余裕があるんだなぁ。それなら、ドワーフの養分をどこまで吸えるのか試さないとね?」
「……ウニャウウ!! オマエ、許さないのだ……! 森を荒らした樹人族!!」
「野生に戻りつつあるのか、思い出したかな? あのイスティのことも忘れるまで、怒らせてあげるよ」
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