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第十三章:新たな地
211.温泉と意外な遭遇
しおりを挟むしばらくして、シーニャの調子が戻った。
おれたちは道しるべを信じて、一本道を下り始める。
「ふわ~! すごい高い所に上がったのに、結局下りていくんですね~」
「間欠泉に気付かなければ、来られない場所のようだな。あるいは近付かせないためか」
「熱いのはイヤなのだ……」
「シーニャ、大丈夫ですか~?」
「……ドワーフだけがお気楽なのだ」
少し身体を冷ましたシーニャだが、間欠泉の村ということは温泉があるはず。
そうなると、シーニャにとってはあまり嬉しい場所では無い。
ルティに文句を言われそうだが、しばらくシーニャをおんぶしながら進むことにした。
「フニャ~……気持ちいいのだ」
「しばらくの辛抱だ」
「ムニャ……」
おんぶしてすぐに、シーニャは眠ってしまった。
これにはさすがのルティも怒ってしまう……そう思っていたが、様子が違う。
ルティは明らかに嬉しそうにしていて、さっきからそわそわしている。
「な、何だ? ルティ、落ち着かないようだが……?」
「この熱さはもしかしたら、もしかしますよ~? そう考えたら、気分が良くなっちゃいまして!」
何にしても、元気が余っているのはルティだけのようだ。
◇◇
迷うことのない道を下って行くと、あちこちで水蒸気が噴き上がる。
ルティの故郷とはまた別の熱さがあって、早くも汗が止まらない。
『おや、珍しい。間欠泉に気付いて来るなんて何年ぶりかな』
坂を進むとすぐに村の入り口があって、至る所にお湯が溜まっている窪みが見えている。
そこでは樽を持ってお湯を汲んでいる、村人の姿があった。
おれたちに気付いたのか、声を上げている。
見たところ他に村人の姿は無く、初老の彼だけがおれたちを出迎えてくれるようだ。
「ここが間欠泉の村で間違いないか?」
「その通り、ファレワル村だよ。……見たところ、旅の途中のようだが」
「村や町があると聞いてここまで来た。この先に町が?」
「あぁ、あるとも。目的はその町に行くことかい?」
「そうだ。そこに行きたい」
「……なるほど。力を試しに行く冒険者ということかな」
どうやら予想通り、力を持つ者がいる町が先の方にあるらしい。
そしてそこを目指すおれのことを、冒険者として認めたようだ。
カウム樹洞の道しるべで危険と書かれていたが、間欠泉だけのことでは無かった。
この感じでは案内してくれそうだが、シーニャとフィーサが眠っているのはどうするべきか。
『おおおお~! す、すごいっ! すごいですよ、これは!!』
さっきまで傍にいたルティが、いつの間にか樽の所に移動している。
樽に夢中なのか、興奮して騒いでいるようだ。
「すまない、おれのツレが……」
「赤毛のドワーフということは、ロキュンテからかな?」
「――! 火山渓谷の町を知っているのか?」
「ここにもドワーフがいてね」
まさかと思うが、そいつと戦えとかじゃないよな。
ここは態度を柔らかくして、下手に出て様子を見るか。
「そのドワーフを、紹介して頂いてもよろしいですか?」
「構わないよ。あぁ、ドワーフの他にも人間が一緒に来ているから、彼女に話しかけるといい」
「人間と行動を共に? それは珍しいですね」
「それでは村の中を案内しようか。あの町に行くのなら、我が村の温泉に浸かってもらわなければならないからね」
「は、はぁ……?」
何か含みを持たせている気がするが、この先の町に何かあるのだろうか。
疑問に思いつつ、興奮しまくりのルティに近づくと、未だ興奮冷めやらぬ状態のようだ。
「全く……、何をそんなに騒いでいるんだ?」
「樽ですよっ! しばらく触れてもいない樽! 高熱に耐えられる樽をここでも見られるなんて、感動です!!」
「そ、そうか」
樽一つでここまで喜んでいるとは、それで元気ならいいといえばいいのか。
仕方がないと思いながらルティを見守っていると、意外すぎる人から声がかかった。
『あらあら、ルティシアは相変わらずの樽好きなのね。元気そうにしてて安心だけど。そう思いますよね、アックさん?』
『――ル、ルシナさん!?』
『はえぇぇ!? お母さまがどうしてここに~!?』
ドワーフと一緒の人間はルシナさんだった。
――ということは、ルティの親父さんもここに来ているということか。
一体どうやってここまで来たのか、色々謎すぎる。
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