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第十二章:認められし者
192.魔導戦闘最終戦 後編
しおりを挟む「さてと、手強い相手ではあるが苦戦する相手でも無いな。問題はどうやって粉砕するか……」
盾を顕現させたことで、奴は戦闘タイプを変更し始めるようだ。
氷魔法は相殺されはしたが、思いきりやれば何らかのダメージを与えられる。
――はずだが、例えばそれを火属性攻撃でやった場合、想定されるのは一帯全てを燃やし尽くしてしまうことだ。
そうなると、距離を取ったミルシェたちにも被害が及ぶ。
さらにはゲート前で待機している獣人たちにも、ただごとではない事態が生じてしまう。
奴の魔法相殺は、周りに与える影響がありすぎる。
そういう意味で最後の魔導兵には、魔法による攻撃はしないことにした。
ただエンチャント攻撃は、直に魔法を発動するわけでは無いのが幸いだ。
『……イデアベルク・イスティ認識……遠隔攻撃に移行――』
そうこうしていると、奴は形態変化をしようとしていた。
もちろん動物では無いので、細胞や骨格そのものを変化させられるわけじゃない。
さっきまでの物理攻撃だった義手から、遠隔攻撃向けの義体に変化させただけのようだ。
奴との距離はそこまで離れているわけでは無いが、どういう攻撃を仕掛けて来るつもりがあるのか。
「――! イスティさま、魔導兵の標的が彼女たちに向けられているなの!!」
「何っ!? だから遠隔攻撃に切り替わったのか! くそっ、ミルシェの防御魔法では厳しいか」
「わらわがもう一度突っ込むなの!! だから早く――えっ?」
フィーサの提案も考えたが、トドメで使うことを前提としている以上は、彼女をぶん投げるわけには行かない。
魔法をかき消す相手ということで一瞬悩みかけたが、奴の攻撃を防ぎ反撃に転じられるとすれば、彼女たちしかいないはずだ。
その時点で奴の形態変化と同時に、彼女たちを久しぶりに顕現させた。
これで恐らく間に合う。
◇◇
「くっ……アックさまが相手をしていたのに、こちらを狙い撃ちとは……」
「我の幻影も通じないだと!? お、おのれ……」
距離的にミルシェたちの状況を、直に確かめることは出来ない。
おれが分かるのは、フィーサによる気配変化だけだ。
「ウニャッ!? 機械人形が襲って来たのだ!? ア、アックはどこなのだ」
「どうしましょう、どうしましょう!? こ、拳で向かっても凍らされたら……あうぅ~」
――などと、魔導兵相手に攻撃を仕掛けることすら躊躇しているらしい。
そんな彼女たちに向けられたのは、避けるのも厳しい鋭利な剣の同時多撃だ。
『人間、獣人……イスティアライアンス……抹殺実行――』
「ひっひえええええ!? アック様、アック様~!!」
「ウ、ウニャニャニャ!?」
ミルシェの防御魔法は既にかき消され、守ることも出来ない。
だが、
『――』
『抹殺不可……抹殺ミス、ミス……不可、不可――迎撃不可』
どうやら間に合ったらしく、魔導兵は転進してこちらに再度向かって来るようだ。
彼女たちにはそのまま、ミルシェたちの所にいてもらうことにする。
◇◇
「――え? イスティさま、誰が小娘たちを守ったなの?」
「ラーナとシリュールだ。魔法でもない存在なら、魔導兵ではどうにも出来ない」
「さ、さすがなの!!」
「……そういうわけだ。フィーサは闇属性を潜在させておけ! 奴の動きを止めてから、斬るぞ」
「は、はいなの!」
転進して来た奴は、近接戦闘タイプに戻っていた。
もっとも増強させた魔力をフルで使用して、おれを完全に抹殺するようだが。
『抹殺、抹殺……イデアベルク・イスティ――』
『ベルクには悪いが、完全停止をしてもらう!』
『……反撃シフトに移行』
『それも無駄だ!』
奴も警戒を高めていたのか、接近して来ないままカウンター攻撃を狙っているようだ。
魔法にせよ、近接戦闘にせよ抹殺を実行する構えを見せている。
『マシーネ・シールを発動、シアン・サブマージョンを展開する!』
奴に対し、放った攻撃はスライムによる波状攻撃。これで動きを封じた。
泥人形であるゴーレムのままであったなら、スライムの粘液程度では通じなかっただろう。
しかし装甲を強固にして完全な機械人形とした魔導兵には、かなりの効果があった。
骨格に相当する関節可動域は、ゼリー状にまとわりつくスライムでショートを起こしている。
『――ガググ……反撃不能、攻撃不能……行動……不能――』
「フィーサ! 斬るぞ!!」
「はいなの!」
フィーサに潜在させていた、エンチャント闇属性。
神剣を手にしながら行動不能となった奴に、一撃必殺の強攻撃を上段から浴びせる。
『完全に消えろ、インスティンクション!』
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